考えを広げて整理できる「メモ」のとり方とは【ノート指導12】
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上手にメモをとるコツをつかめれば、いろいろなシーンで役立てることができます。今回は、「メモ」を使った学習のアイデアについて解説します。
執筆/北岡隆行
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目次
メモをとるときは観点をしぼって
観点をしぼったうえで、大事な言葉を抜き出す
「メモをとりなさい」と言ったことがあると思いますが、メモをとる内容と方法について、指導したことがありますか。
「ありの行列」(光村3年上)の2時間目のことです。教科書に書いてある課題を書かせました。
だれが、どのようにして、その考えを見つけたのでしょう。
課題を読み、答えをノートに書かせました。あてられた子のほとんどが、
「ウィルソンという学者がありのことを観察していて、それで答えがわかりました。」
と書きました。
ここがメモ指導のポイントと考え、これをそのまま板書して、あらためて問いかけました。
・「だれが」
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・「どのように」
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・「もっと短くしてごらん。どのように。」
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・「もっと短く。どのように。」

と板書をチョークの二重線で消しながら短くしました。

メモをとるときに大切なことは、○○を考えるうえで大事な言葉はどれか? 観点をしぼることです。問いに対応した部分だけを抜き出させることがポイントなのです。
有効なメモと、その生かし方
授業では比べるためにメモをする
ある学校の2年生の授業のことです。「おてがみ」(光村2年下)の授業で、よく育てられているな、と感心したことがありました。
授業は中盤、ノートに書かれたことを発表する場面です。
がまくんは家でふさぎこんでいる。手紙をもらったことがないのが、その理由だ。それを知ったかえるくんはよいことを思いつく。そして、こう言う。
「ぼく、もう家へ帰らなくちゃ、がまくん。しなくちゃいけないことが、あるんだ。」
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この「ぼく、もう家へ帰らなくちゃ、がまくん。」の部分をどんなふうに読めばいいのか、というのが問題でした。
話しているほうを見てうなずいていた一人の女の子が、うなずくのをやめて何か書いています。しばらくすると、また話している子のほうを見て、うなずき始めました。

何をしていたのだろうと思い、授業が終わってから、その子のノートを見せてもらい、びっくりしました。
その子は、自分と違う意見の子の考えをメモしていたのです。自分が気づかなかった考えもメモしていました。
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
日常の中にメモする場を位置づける
メモをとる機会を多くすることが第一歩です。たとえば、
①全校朝会の日は、教室にもどってから校長先生の話をメモする。
②現地学習では、施設の人の話をメモしたり、質問の答えをメモしたりする。
③総合的な学習で、ボランティアの人の話をメモする。
④お礼の言葉に、ボランティアの人の言葉を入れてあいさつする。
などが具体的にあげられます。

そして、メモしたものをいくつかとりあげて比べ、より内容のよいものを示します。
朝の会で「1分間スピーチ」に取り組んでいるクラスも多いと思いますが、これもメモをもとにスピーチさせてはいかがでしょう。3年生に「くせ」という題で、1分間スピーチをさせました。
スピーチした子のメモ

メモをもとにしたスピーチの文章
私のお母さんのくせは、言葉の後に「ごらん」とつくことです。 薬を飲むときも「薬を飲んでごらん。」、歯をみがくときも「歯をみがいてごらん。」、おふろに入るときも「おふろに入ってごらん。」といつも言っています。
お母さんのもう一つのくせは、同じことを何度も言うことです。漢字が終わったときは「漢字、やった?」、宿題が終わったときは「宿題、やった?」、勉強道具をそろえたときは「勉強道具そろえた?」と言います。「なんで、こんなことを言うの?」と聞いてみたら、「なぜか、言ってしまうの。」と言いました。
このくせは、いつまで続くのでしょうか。
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上の④(お礼の言葉に、ボランティアの人の言葉を入れてあいさつする)は、ある商店会会長さんの話をきいて知りました。
「一昨年の11 月に、私は地元の小学校の5・6年生の子どもたちに話をしました。そこで、私は愕然としたんです。いまの子どもの能力がこれほど高いと思わなかったです。司会者の男の子と女の子がいて、私のプロフィールをリレートークしました。30分私が話をして、10分間質疑応答、10分間の感想発表。そして最後に、女の子が前に出てお礼の言葉を、私にするんですね。このお礼の言葉のなかに、私が話した文言を入れてくるんです。アドリブですよ。びっくりしましたね。」

このエピソードも、メモがいきた例です。メモをとる場があり、生かす場が日常化されていれば、メモが上手になるはずです。
読書感想文をコンパクトなメモにする
「朝の読書に取り組んでいる。しかし、読書感想文まで書かせるのは……」という先生も多いと思います。書かせるのも、みるのも時間がかかるからというのが理由でしょう。それなら、わりきって読書感想文をメモしたらどうでしょう。時間をかけないで日常的にするのです。
たとえば、
①今日読んだ部分に、タイトルをつけてごらん。
②全部読み終わったあと、別の題をつけてごらん。
③「この本をぜひ読んで」と伝えるためのキャッチコピーを考えてごらん。
④いくつの話だったの? 「4つ」あったら(4コママンガのように)4つの文で書いてごらん。
例・桃太郎の話
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という具合に、短時間で書くことを続けていくのです。この方法なら、毎日取り組めそうではありませんか?
イラスト/相澤るつ子
「COMPACT64 ノート指導 早わかり」より