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小3国語科「すいせんのラッパ」全時間の板書&指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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大塚健太郎

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「すいせんのラッパ」(東京書籍)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小三 国語科 教材名:すいせんのラッパ(東京書籍・新しい国語 三上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、語句のまとまりや意味を理解しながら音読することを通して、登場人物の行動や気持ちについて叙述を基に捉えていることをねらいとしています。

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

(1)言語活動と指導事項との関連

本単元では、音読を言語活動として設定します。本単元において重視する指導事項は、「C 読むこと」の(1)イ「登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述を基に捉えること」という資質・能力です。その力を身に付けるためには、語句の意味を正確に理解し、語句のまとまりを意識しつつ、登場人物の行動や気持ちに目を向けていくことが重要です。そうした学習活動を引き出す言語活動として音読を行うのです。

音読を取り上げる場合、ともすると淀みなくスラスラと読むことができているかどうかや、豊かに表現できているかどうか、といった点に教師も子供も目を向けてしまいます。
しかしながら今回は、人物の行動や気持ちを捉えるための音読ですから、流暢さや表現の豊かさは二の次となります。繰り返しますが、本単元における音読は、登場人物の行動や気持ちを捉えるための手段です。音読によって語句のまとまりを意識し、文章中の言葉の意味を正しく理解し、その過程が登場人物の様子を捉えていくことに繋がるという構造を意識していきましょう。

具体的には、「ありたちは、葉っぱの上で、ゆらゆらゆれて、じっとまっています。」という叙述での登場人物の様子を捉える際には、「ありたちは、/葉っぱの上で、/ゆらゆら/ゆれて、/じっと/まっています。」と語句のまとまりを捉えることで、ありがかえるたちの起床を今か今かと待っている様子を捉えることができるわけです。
しかし、「ありたちは、/葉っぱの上で、/ゆらゆら/ゆれて、/じっ/とまっています。」では、登場人物の様子を想像することが難しくなります。ですから、正しい語句のまとまりを意識することで、意味を正確に理解し、登場人物の様子を捉えることに繋がるということです。その語句のまとまりを意識するためには、声に出して読んでみること、つまり音読が非常に効果的であることが分かります。

そのため本単元では、〔知識及び技能〕については(1)「言葉の特徴や使い方に関する事項」の「オ」を、また〔思考力、判断力、表現力等〕については「C 読むこと」(1)イを中心に指導していくことにしました。

本単元において、指導者はもう一つ留意しなくてはいけないことがあります。それは、指導事項の水準の違いです。2年生までは低学年の指導事項の実現を目指して学習をしてきました。しかし、3年生になると中学年の指導事項の実現を目指すことになります。両者の違いを「C 読むこと」(1)イに注目して確認してみましょう。

小学校学習指導要領には、第1学年及び第2学年の指導事項「C読むこと」イ(構造と内容の把握)として「場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉えること。」が示されています。
それが、第3学年及び第4学年になると、「登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述を基に捉えること。」に変わります。低学年では場面の様子や登場人物の行動などの内容を大まかに捉えればよかったのに対して、中学年では、登場人物の行動に加えて、気持ちについても捉えていかなければなりません。それも、文章中に書かれている行動や会話などの「叙述」にしっかりと目を向けて、そこから気持ちを捉えていくことが求められています。この違いも意識しておきましょう。

音読は、描かれている登場人物の行動や会話、地の文に意識を向け、そこに織り込まれている登場人物の気持ちを浮かび上がらせるための仕掛けになるというわけです。そのため、「登場人物はどのような気持ちなのだろう。」「どの叙述から読み取ることができるのだろう。」という意識で音読をしていくことが重要です。

実際の授業では、4月に行ったこともあり、中学年になったということで、今までとは一味違う姿を保護者に見てもらうことを目標に音読を行うことにしました。

(2)教材の特性

本単元で活用する「すいせんのラッパ」(東京書籍3上)は、4月に行う国語学習にふさわしい春の物語です。扉絵に目を向けると、「今日は、すいせんが、今年はじめてラッパをふく日です。」とあり、3年生になって初めて物語を読む児童自身となんだか状況も重なっています。

すいせんは、春になったことを知らせようと、金色のラッパを吹いて、かえるたちを起こそうとします。グローブみたいなかえる、緑色のリボンのようなかえる、豆つぶのようなかえると、様々なかえるがすいせんのラッパによって目覚めていき、その様子をありが見ています。
登場人物が目覚めた際の行動が個性的で、それぞれの様子が豊かに表現されているため、言葉の意味を理解しながらそれぞれの登場人物の行動や気持ちを捉える学習に適した教材です。

また、本教材ではオノマトペが頻繁に使用されています。そのため、児童はリズムを楽しみながら音読することを通して、登場人物の行動や気持ちをより想像しやすくなっています。

4. 指導のアイデア

本教材には様々なオノマトペが使われています。例えば、かえるの跳ね方をとっても、「どっすん・ぽこ。どっすん・ぽこ。」や「ひらり・ぴょん。ひらり・ぴょん。」など、登場人物ごとに用いられているオノマトペが違います。

児童は、こうしたオノマトペを楽しみながら音読することでしょう。
しかし、例えば、「どっすん・ぽこ。」を声に出し、単に言葉の響きのおもしろさを感じているだけでは、きっと大柄であろうかえるの動きを十分に捉えたとは言えないでしょう。
主体的な学びを生み出すためには、「どっすん・ぽこ。」という音や周りの地の文を何度も声に出しながら、そのオノマトペが表そうとしているかえるの様子を思い描いていくこと、かえるの行動や気持ちについて児童自ら思考できるようにすることが重要です。

その際に取り入れたいのが動作化です。「どっすん・ぽこ」が一体どのような様子や行動であるのか、声に出してみるとともに、実際に動いてもみる。音声と動作という二つの切り口から、「こんな感じかな」「あんな感じかな」といろいろ試行錯誤して、登場人物の行動や気持ちを捉えていくように促していきましょう。

実際の授業では、「どっすん・ぽこ。」では体を重そうに動かし、「ひらり・ぴょん。」では軽やかに動きながら音読している様子が見られました。
また、「○○さんは『どっすん・ぽこ』を四股のような動きをつけて読んでいるけど、重たいという感じが出ているね。ゆっくり動いている様子なのかな。」と友達が音読に付した動作から言葉が表しているものを踏み込んで捉え、登場人物の様相を捉えてもいました。
さらに、「この言葉の意味って軽いって意味だよね。」と友達と意味を確認する姿も見られました。

留意しなければならないのは、音読して終わりにするのではなく、必ず「グローブみたいなかえるは、どんな気持ちだと思いますか。」「緑色のリボンのようなかえるは、グローブみたいなかえるとどのような違いがありましたか。」などと発問し、語句のまとまりを意識しながら音読をしたことを通して、どのような登場人物の行動や気持ちが浮かび上がってきたかを考えるように誘うことです。

写真:動作化しながら音読している児童
動作化しながら音読している児童

音読をしていく過程の中で、児童は「どのような語句のまとまりかな。どのような意味かな。」と、自分自身に問いかけることが予想されます。「どのような意味かな。」という問い対して、「こういう意味か。じゃあ登場人物の様子は……かな。」というものを音読をしながら捉えていきます。

繰り返しますが、大切なのは音読の仕方や音読の巧拙ではありません。音読はあくまで児童が叙述から登場人物の様子を捉えるための手立ての一つです。大切なのは、児童がどのような登場人物の様子を捉えられたかを言語化できるようにすることです。
そのために、音読をしている児童の様子を見取り、読み終えたタイミングで「どうして、『どっすん・ぽこ』をゆっくり読もうと思ったのですか。」などと、どのような様子を想像して音読したのかを問うようにします。
実際の授業では「グローブみたいなかえるは“かえるのおすもうさん”だとありが話しているということは、体が大きくて重いという意味だから、ゆっくり動く様子を想像しながら音読した。」と、登場人物の様子をより具体的に捉えている様子が見られました。つまり、音読をすることで語句のまとまりや意味を考え、それにあった音読を考えていく営みの中で、登場人物の様子を捉えているということです。

対話的な学びが有効に機能するために、個の読みだけに留めるのではなく、友達同士で音読を聞き合いながらどうしてそのような読み方をしたのかを聞き合ったり、全体で登場人物の様子を捉えた理由を共有したりする時間を設定します。
実際の授業では、
「『気どった声で言いました。』という言葉の意味は、“すました様子“という意味があると分かったので、『目ざましラッパ、サンキューサンキュー』は、爽やかな声で読んだ方がいいと思いました。」
などという発言が出ました。
それを聞いた児童が、
「すましているんだから、ツンケンして突き放すような強い声で読んだ方がいいんじゃないの?」
「確かにそうだなあ。『気どった声』って、そんな感じがするね。ちょっと試してみるよ」
と音読を繰り返していく中で、
「クールな雰囲気で目覚めた様子が想像できるね。」
「その後『くるんとちゅうがえりして』って書いてあるから、身軽なかえるの様子が想像できるね。」などと反応しており、自分の考えを広げたり深めたりしている姿が見られました。

音読発表会では、これまで決められた場面ごとの音読だったものを、自分の選んだ場面で音読していき、友達と聞き合ようにします。
このときに重要なのは、音読を発表して「上手に読めていたか否か」で聞き合うのではなく、これまでの学習で捉えてきた登場人物の様子に合った語句のまとまりを意識できているかを聞き合うようにします。そのため、発表前には自分がどの言葉をどのように理解し、何を想像して音読するのかを伝えてから音読するようにします。
聞く児童は、発表者が想像した行動や気持ちが伝わるものになっているのか、またなぜ伝わったのかを発表者に伝えるようにします。このように友達の音読を聞いたり自分の考えを話したりすることで、登場人物の様子をより広く捉えることに繋がります。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)QRコードを活用した学習の見通し

教科書の改訂により、新たにQRコードが記載されるようになりました
本単元では、2年生までの学習の振り返りと「しりょう室」という教材に関わる情報が記載されています。学習の導入では、端末を使ってQRコードを読み取り、2年生で学習した「風のゆうびんやさん」を振り返り、どのような学習課題のもとでどのような力を身に付けてきたかを確認していくようにします。また、「しりょう室」を確認し、本単元で学習する内容や新出漢字などを確認することで、見通しをもてるようにします。

(2)音読の録画

本単元では、物語を読んで考えるという行為と音読によって表すという行為を何度も行き来しながら、登場人物の行動や気持ちを捉えていきます。ただ、その過程で、自分がどのように音読しているのかを自覚するのはなかなか大変です。

そこで、録画(あるいは録音)機能を活用し、自分が音読している様子を記録していくようにします。自分の音読を録画し、それを視聴することで、語句のまとまりを客観的に理解することができ、登場人物の行動や気持ちを捉えることができるようになります。
実際の授業では、「自分の音読を聞きながら、豆つぶのようなかえるは、不思議さと春の気持ちよさを感じていることが想像できた。」と発言しており、自分の音読を視聴し直すことで、登場人物の行動や気持ちをより具体的に想像できている様子が見られました。

写真:音読を録画している児童
音読を録画している児童。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: 場面を思い浮かべて物語を音読しよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① これまでの学習を振り返り、単元の見通しを立てる。〈 端末活用(1)〉

・第二次(2時3時4時5時6時
② 音読をしながら、物語で活用されている語句の意味を考える。
③~⑥ すいせんのラッパの音や、登場人物の行動や気持ちを想像する。〈 端末活用(1)(2)〉
⑦ 登場人物の行動や気持ちを想像して音読発表会をする。〈 端末活用(2)〉

・第三次(7時8時
⑧ 単元を振り返る。〈 端末活用(1)(2)〉

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/横井智美

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