個人面談で保護者と信頼関係を築く5つの秘訣

東京都公立小学校教諭

松原夢人

小学校や中学校において、個人面談は、教員と保護者が子供の学習の理解度や強み、課題などの情報交換をし、信頼関係を築く機会として重要です。しかし、個人面談は10分から15分という短い時間で行われることから、一歩間違えれば信頼関係を築けない、もしくは関係が悪化してしまう懸念もあるのではないでしょうか。そこで、経験の浅い若手教師もすぐに実践できる心がけを、5点に絞ってお伝えします。

イラストAC

執筆/東京都公立小学校教諭・松原夢人

個人面談はベテランでも緊張する

個人面談は、若手教員に限らずベテラン教員でさえも非常に緊張するものです。決して慣れることはありません。しかし、保護者との距離を近付けて信頼関係を築くコツはあります。この記事では、私自身の経験から5つ紹介したいと思います。

1 教員が保護者を教室のドア(出入口)で出迎え、見送る

保護者を教室のドア(出入口)で出迎えることで、教室へ温かく招待された印象を与えます。

このような歓迎のジェスチャーは、保護者をリラックスさせ、オープンな気持ちで面談に臨むための基盤をつくります。

また、教員が時間を割いて保護者を個別に迎えることは、保護者の時間と参加を尊重し、価値あるものとみなす姿勢を示すことにもなります。

これは、保護者との信頼関係を築く上で重要なことです。

保護者を出迎える際は「お忙しい中、学校にお越しいただきありがとうございます」「本日はお足元の悪い中ご来校いただきまして、誠に恐れ入ります」などの言葉を掛けると、さらに印象が良くなるでしょう。

面談が終わった後も、同様です。

次の保護者が待っている場合が多いでしょう。次の面談の時刻に遅れないように焦る気持ちがあるのは分かりますが、最後まで気を抜いてはいけません。

「本日はありがとうございました」とお辞儀とお礼をして席を立ち、保護者と一緒に教室のドア(出入口)まで行きます。

お別れの際に、「また何かありましたら、いつでもご相談ください。ありがとうございました」と頭を下げ、お礼を言って笑顔で見送りましょう。

個人面談の終わりに心地よい別れを提供することで、面談全体に対する肯定的な印象を残すことができます。

2 保護者の話を優先的に聴く

教員としては、個人面談を通して保護者に話したいことがたくさんあるかもしれません。しかし、保護者も同様に「困ったことを相談したい」「学校に不安があるので子供のことを話したい」という強い思いをもっている可能性があります。

個人面談の時間は短いですから、保護者の話を優先的に聴くようにしましょう。

教員が聴く姿勢を取ることで、保護者が自分の意見を自由に表現できると感じることができます。また、個人面談で保護者から提供される情報は、子供が家庭でどのような環境にいるか、どのようなサポートが必要かについて知ることができる貴重で有益なものです。

時には、学校や教員が気付いていない問題が、家庭で発生している事実を知ることができるかもしれません。保護者の声に耳を傾けることで、これらの問題を早期に特定して対処することができるようになります。

3 自分(教員側)が話すタイミングを見極める

保護者が「話したいことや相談したいことは特にありません」「うちの子の学校での様子を教えてください」と言ってきた時が、教員が話をするタイミングです。

「それでは、お子様の学校でのご様子についてお伝えします」と言って話し始めると、今度は保護者が聴く姿勢になってくれます。

大切なのは、保護者の話を途中で遮って自分(教員)の話を始めないことです。

保護者が「まだ話の続きがあるのに」「最後まで話を聞いてくれない」と不満に思ってしまうかもしれません。

限られた時間の中でも、まずは保護者の話したいことをできるだけ話してもらうことで、保護者にとって満足のいく個人面談を実現することができるのです。

自分(教員)が話した後は、保護者に質問がないか、または追加で知りたい情報があるかなどを尋ねると良いでしょう。

4 質問に工夫して保護者から子供の情報を聞き出す

個人面談では、教員の目では見ることができない家庭での子供の姿を知りたいものです。

「ご家庭でのお子さんの様子はどうですか?」という保護者に質問を投げかけても、「元気に過ごしていますよ」とだけ返事がくることがあるので、話を広げることが難しくなります。

そこで、保護者から子供の情報を引き出す言葉を紹介します。

  1. お子さんが家で学校のことについて話すとき、どのような話をよくしますか?
  2. お子さんが特に興味を持っている学習や活動はありますか?
  3. 私たちがお子さんの学習や発達をサポートする上で、特に重視してほしい点はありますか?

以上の3つです。

特にの言葉は、保護者が困っている家庭での子供の姿を引き出すことができます。学校での様子を報告するきっかけをつくることができるとともに、チーム学校として取り組む姿勢を伝えられるため、非常に有効です。

5 感じのよいタイムキープをする

個人面談の際は、教師と保護者の間にタイマーを置いておきます。時計をチラ見しながら面談を行いますが、保護者の話が止まらないケースがありますよね。

そこで、私が実践しているのは以下の6つです。

①面談のスタート時に終了時刻を伝える

あらかじめ「◯時◯分までよろしくお願いします」と伝えておくと、保護者が終了時刻を意識して話をしてくれるようになります。

②相槌の回数を減らす

相槌の回数を減らすと、保護者の話が徐々にトーンダウンしてきます。それでも止まらない場合は③を行います。

③時計を見る

「先生が時間を気にしているかも!?」と保護者に気付いてもらえます。しかし、気付いてもらえない場合は④を行います。

④「申し訳ありませんが、面談の時間があと3分になります」と残りの時間を伝える

ほとんどの保護者が話を止めてくれます。しかし、それでも話が止まらない、または自分から話さなければならない内容がある場合は⑤を行います。

⑤「そうだ! 実は面談で話さなければならないことがありまして! 少しよろしいですか?」というフレーズを言う

今、思い出したかのようなアクションをとって伝えると、保護者が話を止めてくれやすくなります。

⑥面談を通して「話が止まらないのなら、続きは電話で話そう」という心構えで聴く

できることなら面談で話を完結させたいですが、それがどうしても無理な場合は電話(ZoomやMeetなどのテレビ電話)を使えばいいのです。そのくらいの気持ちでいると余裕が生まれます。


今後のサポートが必要な場合や追加の情報が欲しい場合には、いつでも連絡を取れることを保護者に伝えることで、継続的なサポートと協力の姿勢を示すことができます。

保護者に安心感を抱いて帰ってもらえるように心掛けましょう。

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