総合的な学習の時間【わかる!教育ニュース#42】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第42回のテーマは「総合的な学習の時間」です。
目次
東京都渋谷区が区立小中学校で、「総合学習」を年155コマ
関心をもったことについて、もっと知りたい、技術を身に付けたい。そんな思いに駆られ、自分から動いて学び取ったものは、財産になります。では、学校でそういう授業がどこまでできるのでしょうか。興味深い取組が始まります。
東京都渋谷区が2024年4月から、子供が主体的に学ぶ「探究学習」の充実を掲げ、全ての区立小中学校で「総合的な学習の時間」を大幅に増やすことを決めました。興味や関心をもったことを調べ、課題を見付け、解決する力を養うのがねらいです。
科目名は「シブヤ未来科」(参照データ)。午前は国語や算数・数学など通常の教科学習が中心、午後は「シブヤ未来科」にし、地域や企業での体験活動、テーマに沿った調査や分析、意見発表などをします。
でも、どこから時間をひねり出すのでしょうか。区は、文部科学省の「授業時数特例校制度」という特別な仕組みを活用し、通常教科の授業を減らす代わりに総合学習の時間に上乗せし、減らした授業の学習内容を組み込みます。全体の授業コマ数は同じですが、総合学習はこれまでの倍以上の年155コマになる見込みです。
教科学習で培う考え方やスキルは、社会の事象を考察する場面で生かさなくては、本当の学力として身に付かない。区はそう説き、この取組で「生きて働く、本物の学力」を目指しています。評価はばらつきが出ないよう担当教員がチームで行い、数値を使わず、学習への姿勢や成果を所見で伝えます。
授業時数特例校は2023年4月時点で77校
22年度に始まった授業時数特例校は、国が定めた各教科の授業時数を最大1割減らすことができ、その分を他の教科に上乗せできる制度。それまで、各教科の標準授業数を減らすことは、認められていませんでした。その壁をなくすことで、学校が充実させたい学習に重点を置き、教科横断の学習や個性のある学びを打ち出せるようにしました。社会で起きていることを扱う学習にも向いていて、主権者教育や消費者教育、環境教育、食育などでの活用も見込まれています。23年4月時点で77校が指定されています。
授業が減る教科の学習に影響はないのでしょうか。文科省は特例校に指定する要件に、学習指導要領で示した内容を適切に教えることを挙げています。教えるべき最低限の内容を教え、思考力の土台になる基礎をおろそかにしないことが条件なのです。授業内容を公表し、保護者などの理解を得る必要性にも触れています。 時間割の組み立て、地域や企業との連携と調整、授業の準備…。渋谷区の取組は様々な負担も伴い、たやすくできるものではありません。それでも乗りだすのは、大人が設定した「正解」への道筋を、一律に受け身で学んでいても、対応できない時代だからです。激しい変化の波をとらえ、周りと協力しながら乗り越える力を育むことが、これからの学校に期待されている役割なのかもしれません。
【わかる! 教育ニュース】次回は、3月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子