研修や公開研究会を活かして理科の指導力向上を目指そう 【進め!理科道〜よい理科指導のために〜】#38

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
進め! 理科道(ロード)
〜よい理科指導のために〜

理科は学年によって学習内容が全く異なるため、担任する学年が変わるごとに新しい教材研究をする必要があります。また実験も多いため、その準備や実験が成功するかどうか不安に感じつつ授業をすることになり、授業の負担感や苦手意識が働く教科といわれています。また、理科は専科制が多くなってきており、指導力の継承がうまくいかなくなっていることも現実に起きています。
このように理科の指導力向上は、自分自身で求めていかなければならない時代になったといえるでしょう。今回は、そのような理科の指導力向上について、これからの時代の求め方について考えていきたいと思います。

執筆/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1.地元の研修会に所属していますか?

学校や自治体の教科の研修会は定期的にあります。学校の研修は、教科を絞っていたり、様々な教科をバランスよくしたりすることもありバラバラです。市区町村レベルの研修会は、教科別に毎月行っていることが多いようですが、どの教科の研修に参加するかは、その年度に何の教科担当になっているとか、自分自身でやりたい教科が決まっているとか、学校内の立ち位置によって決まってくるようです。1つ教科が決まって、それがずっと続いていれば、〇〇先生は△△教科の先生だから…と、毎年同じ教科部会に所属することが多いようです。

理科の研修会は専科制度が進んでいることもあり、比較的人を選んでしまうようですが、私としては少しでも多く、理科部会に所属して研修会に参加していただけるとありがたいと思っています。

2.提案の授業者として立候補しよう

自治体の研修会の多くは、年間数回「模擬授業」を実施していると思います。こちらの模擬授業にぜひ立候補してみてください。特に理科が不安な人ほど、お勧めです。私が教員をやっていた頃は、今ほど若い人が多くありませんでした。理科の研究部会ともなると、希望者の数自体も少なかったので、若い人が授業者になることが多く、私も結構な頻度で授業を行っていました。そして、このような機会があったからこそ、授業について深く考え、授業後の協議会で指摘を受けることで、これまで気づかなかった指導の視点や改善案に気づくことができたのだと思います。

みなさんは子どもたちに対して「協働的な学び」を大切にして指導しますよね。それは、子ども一人一人の能力だけでは限界があるため、他者と協働することで、新たな知見を得ることを目的としています。教師の指導力も同様です。一人で独自の授業をしているだけでは、よほど意識しない限り授業力の向上は見込めません。他の先生の助言を受けながら授業計画を作り、授業をし、その後の反省点についても他の先生の助言を受けることで大きく成長ができます。

このように、提案の授業者として立候補すれば、参観者より何倍も勉強になりますし、指導力の向上が期待できるわけです。

3.普段行かない研究会に行って、理科の授業を観てみよう

研修の多くは市区町村主催のものが多いと思いますが、附属小学校や全国小学校理科教育研究会(全小理)のような研究会主催の研究大会に参加することもよいでしょう。大きな大会は学校から出張できます。
皆さん、日頃の授業や業務で大変だと思いますが、いろいろな地域で行われている研究発表会を調べ、興味のあるものをピックアップして、管理職の先生に相談してみてはいかがでしょう。
附属小学校の研究会や学校の公開研究会などは、それぞれテーマがあります。深掘りすることで、授業力の向上につなげられます。
また、附属小などの研究会は、市町村の研修会と違って全国から多くの先生が参観に来ます。そのため、授業づくりも時間をかけて検討していることが多いですし、多くの先生方に日頃から指摘を受けているため、授業も洗練されていることが多いです。
さらに、全国から参加される先生の中には、各地方で理科に精通している方も多くいらっしゃるため、授業後の協議会でも日頃聞くことがない視点を得ることができるでしょう。

このように、普段行かない研究会や公開研究会に参加すると、全国の一般的な考え方や新しい考え方を多く得ることができ、指導力の向上が期待できるわけです。

研究会や公開研究会に参加する先生

4.他の自治体の先生仲間をつくり、情報交換をしよう

先程も述べたように授業力の向上は一人の力ではなかなかできません。他者の授業を観たり、指摘を受けたりすることで、新たな視点を得て、大きく成長するわけです。
そのため、市区町村の研修会などを通して、他の学校の先生方と積極的に交流していただきたいと思います。
繋がりが深まってくれば、本音ベースで授業の話をしてもらえると思います。
他人の授業にコメントをするのは少し遠慮が働くもので、鋭い指摘はなかなか言いづらいですが、仲間になれば、その遠慮も減るわけです。

私としては、他の自治体に所属する先生仲間を増やしてほしいと思います。自治体研修会に出ている他の先生たちの中には、外部の様々な自治体の先生方と関わり合いのある人が必ずいます。
そのような人は、積極的に様々な先生たちと意見交換をしており、より多くの情報と視点を持って理科の授業をされています。おすすめの公開研究会や先生を紹介してもらい、最終的には自分でも(人の力を借りないで)ほかの自治体の先生と話ができるようになってほしいです。

全国レベルの研究会に参加されている先生は、よく名刺交換をします。自分はまだまだ未熟だから、自己紹介するほどでもない…などと思われている方も多いですが、人と関わることで相談できる人が増えますし、何より同じ目標を目指す仲間が増えることで、教科指導を研鑽する楽しみがさらに増えると思っています。

このように、ほかの自治体の先生仲間をつくり、情報交換をすれば、これまでより様々な視点で相談できる人が増え、指導力の向上が期待できるわけです。

イラスト/難波孝

「進め!理科道」は、隔週金曜日に更新いたします。

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<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

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