読書指導のアイデア ⑯読書郵便を書こう
16回目のテーマは「読書郵便を書こう」です。友達や大人に対して、その人が好きなことを考えながら本をすすめ、簡単な文章を付けるという活動です。学年末の時期に、その人のことを考えて本を選ぶという活動は思い出深いものになるはず。この活動をきっかけに本を選ぶ視点を広げようという提案です。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
読書郵便を友達に送る
「読書郵便」は、学級の友達を対象に自分のおすすめの本を、郵便という形を通して伝えるという活動です。対象を誰にするかは、お隣同士、くじ引きで決めるなど、いろいろな方法が考えられます。目の前の学級に合わせて工夫してください。
読書郵便といっても、実際に郵便を出すわけではなく、学級で交換することになります。そのため、次のようなB5判の用紙を1枚利用してはいかがでしょうか。
読書郵便例
読書郵便のつくり方の手順
1 名前と好きなものを書く
中面には「なまえ」と「すきなもの」を書く欄があります。
第1段階として、自分の名前と自分の好きなものを書き込みます。
2 好きなものに合わせて本を選ぶ
手紙を交換したあと、1で記載した好きなものを参考に、本をおすすめする友達に合わせて選んだ本について下半分に書き込みます。その際、表紙を持った写真を入れると分かりやすいでしょう。また、本は学校図書館のなかから選ぶと読む活動にもつながります。
3 封書風に描く
読書郵便の中面が書けたら、上下半分に折って、表面に封書に見えるように絵を描きます。
4 友達に読書郵便を手渡す
読書郵便ができたら、おすすめする友達に読書郵便を手渡します。その後、掲示板に掲示して、学級で共有してはいかがでしょう。
5 さらに発展的に広げる
掲示された読書郵便を見て、その返事を書いたり、別のお友達へおすすめ本を紹介したりなど、掲示をきっかけにもっと広まる活動になるようにしましょう。
読書郵便を大人に送る
グループ活動では、学級の友達ではなくて、グループで1冊の本を選び、先生(大人)に送るようにしてはいかがでしょうか。読書郵便には、先生宛てのメッセージとおすすめの本を書き込みます。送る先生は、担任の先生や校長先生、教頭先生、専科の先生など、いろいろな先生にわたるようにできるとよいと思います。学年末に思い出深い活動となるでしょう。
読書郵便例
おすすめする本の例
もし、松岡司書がだれかに本をすすめるとすると……。
〇子供にも大人にも
『メシが食える大人になる! よのなかルールブック』
高濱正伸/監修 林 ユミ/絵
日本図書センター/刊
今のうちに子供たちに伝えたいことが紹介されています。きびしい社会を生きる子供たちに本気で届ける50の言葉は、子供たちの心に響くでしょう。子供向けに書かれていますが、大人の心に響く言葉も見付かるかもしれません。
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〇大人にも読んでほしい
『大ピンチずかん2』
鈴木のりたけ/作
小学館/刊
ベストセラー絵本『大ピンチずかん』の第2弾。子供が出あう世の中の様々な大ピンチが紹介されています。「のりたけワールド」炸裂で、鋭くもあたたかい観察眼と、思わずふき出すユーモアあふれる内容です。
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〇生きものや鳥類が好きな人へ
『にんじゃ シジュウカラのすけ』
大塚健太 /文 出口かずみ/絵 鈴木俊貴/監修
世界文化社/刊
小鳥博士・動物言語学者の鈴木俊貴氏が監修。仲間たちと協力して大きな敵に立ち向かう、ことりにんじゃたちの話。「ヂヂヂヂ」「ヒヒヒ ヒヒヒ」など、小鳥たちの実際の鳴き声(シジュウカラ語)が登場します。物語絵本ですが、鳥の生態が背景にきちんとある、科学的な絵本でもあります。
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〇宇宙や地球に興味がある人へ
『かせいじんのおねがい』
いとうひろし/作
童心社/刊
ぼくはおじさんに声をかけられました。おじさんは火星人だと言います。人をまるまる信じてうそをつけない火星人と、だましたり争ったりしてばかりの地球人の、ちょっぴり不思議な心あたたまる物語。
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『深く、深く掘りすすめ!<ちきゅう>
世界にほこる地球深部探査船の秘密』
山本省三/著 友永たろ/絵
くもん出版/刊
挑むのは、10000メートル先の地底です。世界トップレベルの調査を可能にしたのが、地球深部探査船“ちきゅう”。海底まで降ろしたパイプで海底下を掘り進み、岩盤や地層を掘りぬいた「コア」を船上に引き上げます。
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〇歴史に関心がある人へ
『なんで信長はお城を建てたの?』
畑中英二/著 にしざかひろみ/画
新泉社/刊
なんとなく中学生活を送る中学1年生のホタカ。お父さんにすすめられて、夏休みに1人でお城を巡る小旅行に出かけます。そして、安土城の発掘体験を経て、どんどんお城の沼に。13歳からの考古学。「お城」のはじまりを探す旅です。
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〇ゲームが好きな人へ
小学館版 学習まんがスペシャル
『ポケモンをつくった男 田尻智』
宮本 茂/解説 田中 顕/まんが 菊田洋之/構成
小学館/刊
ポケットモンスターをつくったゲームクリエイター田尻智氏の生い立ちから、ポケモンを生み出すまでを、学習まんがで紹介します。ゲーム開発に没頭した仲間との交流や、ポケモン誕生に際して背中を押してくれた関係者とのエピソードが満載。
松岡みどり司書からのメッセージ
学級活動ではありますが、可能なら学校の図書館に協力してもらって、手紙と併せて、本が展示できると子供の興味がより広がります。何をすすめたらよいか、悩んでしまったり困ってしまったりする子供もいるかもしれません。そのときに相手の好きなものから選んだり、自分のすすめたい本をすすめたりするのもよいということを伝えることで、子供は本を選びやすくなるでしょう。好きなものを書く際に、生きものや宇宙、スポーツなど、先生が例を提示してもよいと思います。
この活動を1つのきっかけにしてみてください。「相手のことを考える」という視点など、いろいろな視点で本を見付けられるようになるとよいと思います。1つの好きから、いろいろなものに広がったり深まったりすることを楽しんでください。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子 撮影/長嶋正光
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。