「人づきあいのコツ」が身につく簡単なトレーニング方法とは【ソーシャルスキル早わかり12】
ソーシャルスキル学習とは、スムーズな対人関係を構築するために必要な知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」を知るためのトレーニング。今回は、朝の会や帰りの会などの短い時間で行う「ショートスキル学習」の指導について解説します。
執筆/荒木秀一
目次
ソーシャルスキル学習とは?
ソーシャルスキルとは、対人関係をスムーズにするための知識と具体的な技術=「人づきあいのコツ」です。
かつては家庭や地域社会での集団の遊びなどの中で自然と身についたソーシャルスキルですが、現代では少子化や地域の教育力の低下といったさまざまな要因によって身につけることが難しくなりました。そこで近年では、集団生活を基本とする学校での学級単位のソーシャルスキル教育の重要性が強調されています。
ソーシャルスキル学習は、「インストラクション」「モデリング」「リハーサル」「フィードバック」「定着化」の5段階で展開されます。詳しくは下記のリンクからご確認ください。
ソーシャルスキル早わかり(1)基礎知識その1
ソーシャルスキル早わかり(2)基礎知識その2
ショートスキル学習のしかた
ソーシャルスキル学習の授業の後、朝の会や帰りの会を使って一つの場面に絞ったショートのソーシャルスキル学習を行うと、定着化がより早く、確実になります。ショートスキル学習の時間は、10〜15分ぐらいが適当です。ここでは、「あたたかい言葉かけ」を例にあげます。
学習活動
【インストラクション】
1 場面設定をする
今日は『あたたかい言葉のかけ方』です。持久走大会で1等になった友達に…の場面をやってみましょう。
・場面設定例から一つの場面をとり上げて板書する
【モデリング】
2 代表の子どものロールプレイを見て、発表する
では、この場面をやってみたい人はいませんか。
ほかの人はどんなところがよかったのかを見ていましょう。
・希望者がいない場合は、教師が指名する
・子どもたちから出てきたことからポイントをまとめる
【リハーサル・フィードバック】
3 組やグループ、役割決めをする
○○○とグループになります。
二人でジャンケンをして、勝った人が先に『あたたかい言葉かけ』をする人、負けた人が『あたたかい言葉かけ』をされる人です。
・発達段階やスキルに応じたグループにする(生活班、席の前後など)
4 ロールプレイをする
①
では、今からあたたかい言葉のかけ方について、となりの人とやっていきます。
②
言葉をかける人はポイントを考えながら、見ている人は、どんなところがよかったのか伝えてあげましょう。
③
先生の『用意、始め』で始めましょう。終わったら『ありがとうございました』と言いましょう。
④
終わりです。見ていた人は、どんなところが上手だったのか、伝えてあげてください。
※③④をくり返す
・上手な組やグループがあれば、活動を止めて、ほかの子どもに見せる
・組やグループを交代しながらくり返し行わせる
5 希望する子どもがロールプレイをする
終わりです。最初のところにもどってください。
やってみたい人は、いませんか。
・時間に応じて行う
6 ほめて、まとめをする
・日常生活にも生かせるように声かけをする
ショートスキル学習年間指導計画例
ソーシャルスキル学習は、学級活動の時間、総合的な学習の時間、性教育の指導などでも計画的に実施されています。ここでは、総合的な学習の時間と学級活動での年間計画、ならびに朝の活動などを使って実施するショートのソーシャルスキル学習の活動計画例を紹介します。
総合的な学習の時間・学級活動を中心にした計画案
1学年
【共通スキル】
「あたたかい言葉かけ」1
「上手な聞き方」1
「自己紹介」1
/計3時間
【学年スキル】
学級活動の時間3時間
2学年
【共通スキル】
「あたたかい言葉かけ」1
「上手な聞き方」1
「質問のしかた」1
/計3時間
【学年スキル】
学級活動の時間3時間
3学年
【共通スキル】
「あたたかい言葉かけ」3
「上手な聞き方」1
「自己紹介」1
「質問のしかた」1
/計6時間
【学年スキル】
学年の実態から4時間
4学年
【共通スキル】
「あたたかい言葉かけ」2
「上手な聞き方」1
「自己紹介」1
「質問のしかた」1
/計5時間
【学年スキル】
学年の実態から5時間
5学年
【共通スキル】
「あたたかい言葉かけ」1
「上手な聞き方」1
「自己紹介」1
「質問のしかた」1
/計4時間
【学年スキル】
学年の実態から6時間
6学年
【共通スキル】
「あたたかい言葉かけ」1
「上手な聞き方」1
「自己紹介」1
「質問のしかた」1
/計4時間
【学年スキル】
学年の実態から6時間
共通スキル
▶低学年で経験すべきスキルについては中高学年においても共通スキルとして指導。
学年スキル
▶学年の実態に応じ、教師評定・自己評定の分析・話合いを通じてターゲットスキルを選定。10時間中、共通スキルを除いた時間を学年スキルとして配分。
学級活動を中心にした計画案
学級活動では2~3時間くらいを年間指導計画として位置づけ、ほかは総合的な学習の時間に設定します。
スキル学習の進め方は基本は全て同じなので、インストラクションやモデリングの役割や演技、内容を変えます。スキルのポイントは、子どもの発言や実態に応じたり、低学年と高学年で変えてもいいでしょう。
全学年 朝の活動(20 分)
4月 あいさつ
5月 上手な聞き方
6月・12 月 あたたかい言葉かけ
7月・2月 各学年のテーマ
10 月 あいさつ
1学年
10 月「仲間の誘い方」
11 月「上手な聞き方」
2学年
7月「上手な聞き方」
11 月「仲間への入り方」
3学年
6月「あたたかい言葉かけ」
9月「名前で呼ぼう」
12 月「励まし合う」
4学年
10 月「あたたかい言葉かけ」
2月「上手な断り方」
5学年
7月「ふれあいを深めよう」
11 月「心のこもった言葉」
6学年
7月「いたわりのある言葉」
2月「上手な断り方」
・朝の活動(学級ふれあいの時間)を使って、全学年ショートのソーシャルスキル学習に取り組む。
・年間を通して2~3時間、どの学年も学級活動の時間を使ってソーシャルスキル学習に取り組む。
イラスト/宮地明子 横井智美
「COMPACT64 ソーシャルスキル 早わかり」より