「リスキリング」とは?【知っておきたい教育用語】
最近、「リスキリング」という言葉をよく耳にするようになりました。「Re-skilling」という語源からもわかるように、スキルをもう一度磨くという意味をもっています。今回は、なぜこの言葉をよく聞くようになったのか、また具体的にどのような内容を意味しているのかを解説します。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛

目次
「リスキリング」とは
経済産業省はリスキリングを以下のように定義しています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流-」
リスキリングは2018年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で取り上げられ、「リスキル改革」に関するセッションが開かれました。さらに2020年のダボス会議では「リスキリング革命」として、2030年までの10年間で10億人にリスキリングを行わせるとの目標が掲げられました。
こうした流れを受けて、岸田文雄首相は施政方針演説などでリスキリングについて言及するようになりました。2022年10月には政府の方針として今後5年間で1兆円をリスキリングの支援に投じる方針を打ち出しました。こうしてリスキリングは広く世間に知られるようになり、2022年には新語・流行語大賞にもノミネートされました。
リスキリングと類似した人材育成教育にOJT(On-the-Job Training)やリカレント教育があります。OJTは仕事を行いながら、そこで求められる仕事の内容やスキルを身につける教育方法(学び)です。
リカレント教育は自らの意志で大学に入り直したり、大学院で学んだりすることによって、現在の仕事や業務に関して、より高度な専門知識を身につけることを目的とします。リスキリングは、新たな仕事や新たに登場するであろう仕事に就くために必要なスキルや知識を身につけようとするもので、その性格を異にするものということができるでしょう。
リスキリングが求められる背景
ダボス会議でリスキリングの推進が提唱された背景には、OECD(経済協力開発機構)が2020年に今後10年間で11億の仕事がテクノロジーによって激変する可能性があることを示したことが挙げられます。2020年のダボス会議では第4次産業革命(AIなどを用いた技術革新)によって、様々な新しい仕事が生まれると同時に、7500万人の雇用が技術革新により奪われる可能性があるとの見解が示されました。
技術革新に即応するためにはデジタルやコンピュータに関する知識や技能を習得することが求められます。政府はデジタル社会の人間像について次のように述べています。
デジタル社会においては全ての国民が、役割に応じた相応のデジタル知識・能力を習得する必要がある。若年層は小・中・高等学校の情報教育を通じて一定レベルの知識を習得する。現役ビジネスパーソンの学び直し(=リスキリング)が重要
経済産業省「デジタル人材育成プラットフォームについて」
こうしたことからリスキリングの必要性は、おもにデジタルスキルの獲得(DX:デジタルトランスフォーメーションへの対応)がテーマとなっています。特に日本は少子高齢化が進み労働力人口が減少することが見込まれています。日本経済の国際競争力も年々低下してきており、労働力の不足への対応や生産性の向上にとってリスキリングがとりわけ重要であるとされるようになったのです。