小6算数「比例と反比例」 指導アイデア《比例の式やグラフを用いて、問題解決の方法を考える》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/北九州市立高須小学校教諭・重藤拓也
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、福岡教育大学教授・清水紀宏

単元の展開

第1時 伴って変わる2つの数量の変わり方について考える。

第2時 紙の枚数と紙の重さとの関係を調べ、説明する。

第3時 針金の長さと重さの2つの数量が伴って変わることを調べ、比例の意味について考える。

第4時 比例の性質について考え、比例の関係は式で表すことができることを知る。

第5時 比例の性質を利用して、比例の関係を式で表す。

第6時 xとyの関係を式に表し、決まった数は何を表しているか考える。

第7時 比例の関係をグラフに表すことを考え、かき方と特徴を知る。

第8時 グラフを見て、比例しているかどうかを判断したり、数値を読んだりする。

第9時・10時(本時)比例の関係を表す式やグラフを用いて、問題解決の方法を考える。

第11時 反比例する2つの量の変わり方を調べ、反比例の特徴を考える。

第12時 反比例の性質を見付け、反比例を表す式やグラフについて考える。

第13時 反比例の性質を利用して、問題解決の方法を考える。

第14時・15時 適用問題を解く。

本時のねらい

伴って変わる数量の関係に着目し、道のりや二酸化炭素の排出量の差を考える活動を通して、比例の式を活用して問題を解決できるようにする。

評価規準

複数の比例のグラフから式を求め、その式を活用して、ある道のりにおける二酸化炭素の排出量の差を求めることができる。(思考・判断・表現)

本時の展開


自動車やバスを走らせると、はい気ガスとして二酸化炭素がはい出されます。そこで、さくらさんはそれぞれが走った道のりとはい出される二酸化炭素の量について調べてみました。「1人当たりのはい出量」を調べてグラフにしたところ、おおよそ次のようになりました。グラフからいろいろなことを読み取りましょう。

(問題場面を提示する)このグラフを見てください。

道のりと二酸化炭素の量についての問題だね。

SDGsの学習で、乗り物の排気ガスに二酸化炭素が含まれることを学習したよね。

グラフからどんなことが分かるのかな。

バスのほうが大きいから、バスのほうが二酸化炭素を多く出しそうだよね。

それではグラフを見てみましょう。(PowerPointを用いて、グラフの直線が伸びていく様子を見せる。)

え、自動車のほうが多く出しているよ。

バスのほうが多いと思ったよね。

バスのほうが大きいから、排出される二酸化炭素も多くないとおかしくないかな。

今回の問題は「1人当たり」になっていますね。1人当たりということは、人数が多ければ多いほど、排出される二酸化炭素の量は、どうなりますか。

人数が多くなるほど、1人当たりに排出される二酸化炭素の量は少なくなります。

そうか。バスのほうが一度に乗れる人数が多いから、1人当たりの二酸化炭素の量は少なくなるのか。

だから、1人当たりにすると一度に乗れる人数が少ない自動車のほうが多くなるのね。

このグラフは2本とも(0、0)を通る直線だから、どちらも走った道のりと二酸化炭素の量が比例しているね。

比例のグラフということは、「y=(決まった数)×x」で表せるよ。

今日は、この比例のグラフから分かることについて、いろいろ読み取ってみましょう。


2本のグラフから分かることを考えよう。


自動車とバスが5㎞走るとき、はい出される二酸化炭素の量の差は、何gですか。

自動車とバスがはい出した二酸化炭素が480gになったとき、それぞれが走った道のりの差は何㎞ですか。 

※問題①・②を提示する。

問題①は、どのように考えるとよいですか。

問題①は、それぞれが5㎞進んだときを考えたらいいので、グラフを縦に見て、自動車とバスのグラフがx=5のときのyの値の目盛りの差を読むと分かります。

x=5のときのyの値の目盛りの差は200なので、答えは200gです。(グラフに縦線①を描いて確認をする)

では、問題②はどうですか。自動車とバスが排出した二酸化炭素が480gになったとき、それぞれが走った道のりの差は何㎞ですか。

問題②は、今度はグラフを横に見て、y=480のときのyの値の目盛りの差を読むと分かります。

y=480になるのは、自動車が4㎞、バスが6㎞のときなので、6-4=2で2㎞です。(グラフに横線②を描いて確認をする)

では、問題③について考えていきましょう。


自動車とバス、それぞれの方法でA町からB町までの70㎞移動した場合、はい出される二酸化炭素の量の差は何gですか。

※問題③を提示する。

70㎞のときかぁ。今のグラフからだと分からないね。

いや、ここから先を伸ばせば分かるよ。

確かにグラフの先を書いても分かるけど、そんなに先まで書くよりも楽な方法があるんじゃないかな。

それに70㎞を求めようと思ったら、今の7倍もグラフを伸ばさないといけないから、今は無理だよ。

70㎞のときが知りたいのだから、5㎞のときや10㎞のときの値が使えそうだと思うよ。

式に表したら考えられそう。

見通し

・グラフから値を読み取る。

・「y=(決まった数)×x」を使って計算する。

第6学年では、比例の性質、2量の関係の式表現、比例のグラフについて学習してきています。本時の教材は、他教科(理科や総合的な学習の時間)の学習内容と関連していることもあり、子供にとって関心のあるものです。

導入で、問題場面とグラフを提示する際は、PowerPointを用いて、グラフの直線が徐々に伸びていく様子を見せることで、グラフの特徴から比例の関係であることを捉えられるようにします。

また、2量に着目させることで本時学習のめあてをつかむことができるようにします。

問題①・問題②については、グラフから値を正しく読み取ることが目的なので、クラス全体で確認していきます。それを受けて、③を解決していくようにします。

自力解決の様子

A つまずいている子
自動車やバスの式を求めることができず、70㎞移動した場合の二酸化炭素の量を求めることができない。


B 素朴に解いている子
10㎞のときのyの値から考える方法
バス    10㎞で  800g
          ↓
    70㎞で  5600g
自動車 10㎞で  1200g
          ↓
    70㎞で  8400g
8400-5600=2800 2800g


C ねらい通り解いている子
比例の式を使って考える方法
バス  y=80×x
    x=70のとき  80×70=5600
自動車 y=120×x
    x=70のとき  120×70=8400
8400―5600=2800 2800g


Aの子供に対しては、xとyの関係を式に表すためには、どのようなことを考えることが必要だったかを問いかけ、xとyの関係を式に表すことができるように支援します。

その後、70がxとyのどちらの変数か確かめることで、x=70として計算することができるようにします。

Bの子供に対しては、グラフから読み取った値を基に考えていることを称賛するとともに、どんな場合でも用いることができる方法かを問いかけます。例えば、道のりが37㎞や61㎞を例に出して、いつでも使える方法を考えさせていきます。

学び合いの計画

学び合いの場面では、まずBの考え方を提示し、グラフの数値から10㎞のときの差を読み、7倍していることを理解させます。

その際に、10㎞のときのyの値の差を7倍することで、70㎞のときの差が求められるのは、道のりと二酸化炭素の量排出量が比例関係になっているからであることを確認します。

次にCの考え方を提示し、グラフからバス・自動車がx=1のときのyの値を基に比例の関係式を求めて考えたことを確かめます。

その際に、どちらか一方の式の求め方を全体で確かめた後、もう一方の式の求め方をペアで伝え合う活動を設定することで、比例の関係式の求め方を一人一人が確認できるようにします。

そして、それぞれの式を用いてx=70に対応するyの値を求め、それらの差を求めることで答えを導き出したことを確認していきます。

ノート例

B 素朴に解いている子

C ねらい通りに解いている子

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

Bさんの考え方を見ていきましょう。

まずバスを考えます。10㎞のときのyの値を読み取ると、800gになっています。70㎞のときが知りたいから、10㎞のときのyの値を7倍したら、バスは5600gの二酸化炭素を排出することが分かります。

どうして7倍すると分かるのですか。

道のりと二酸化炭素の量は比例しているからです。

グラフからも比例と分かっています。

同じように自動車についても考えると、70㎞進んだときの二酸化炭素の量は8400gです。

だから、8400-5600=2800で答えは2800gです。

Cさんは、どのように考えましたか。

グラフから比例の式をつくって考えました。そのためには、バスがx=1のときy=80になっているので、式にするとy=80×xになります。

自動車も同じようにしたらy=120×xになります。

同じようにというと、どのように考えたらいいのでしょうか。隣の人と伝え合ってみましょう。

〈伝え合いの例〉
・自動車も同じように、まずは比例の式に表したらいいよね。
・そのためには、まずx=1のときのyの値を求めたらいいから、y=120か。
・じゃあ、式にするとy=120×xになるね。

それぞれを式にした後は、どのように考えたらよいですか。

x=70のときを求めたいから、バス:80×70=5600、自動車:120×70=8400となって、その差を求めると8400-5600=2800で2800gとなります。

バスが5600g、自動車が8400gになるから、8400-5600=2800で、答えは2800gです。

BさんとCさんのどちらも答えは同じになっていて、正しいです。

では、2つの考え方は、それぞれどんなよさがありますか。

Bさんの考え方は、グラフを見たら分かる値を使っているから計算が少し楽な気がします。

グラフから分かった値を7倍して、ひき算をしたらいいだけです。

Cさんの考え方に比べて楽に答えが分かるところがよいところかな。

でも、どんなときでも使えるかが問題です。

グラフから値が読み取りにくいときは難しいです。

読み取りにくいときとは、どのようなときですか。

グラフから分かる値が少ないときとかだと思います。

あと、どこかの値が分かっても、それを何倍しても答えにならないときがあるかもしれません。

この問題は10㎞のときの値を7倍すればよかったけど、それでは求められないときです。

確かに、そうかもしれない。

では、Cさんの考えはどうでしょうか。

Cさんの考え方は比例の式を使った計算で分かるから、どんな値のときでも使える考え方です。

比例の式を求めないといけないけど、確かに計算できたらどんな値のときでも分かると思います。

どちらの考え方にもよいところがありましたね。では、今回の学習で2本のグラフの違いを考えるためには、どんな方法がよいことが分かりましたか。

グラフを縦に見たり横に見たりして値を比べるとよかったです。

グラフにない部分は計算するとよかったです。

計算するときは「y=(決まった数)×x」で表して考えると、どんなときでも考えることができます。

学習のまとめ

2本のグラフの違いを考えるときは、グラフを縦や横に見て値を比べたり、「y=(決まった数)×x」から求めた値を使ったりして比べるとよい。

評価課題

鉄道を使ったときも同じように二酸化炭素がはい出されます。鉄道で移動した道のりとはい出される二酸化炭素の量についても「1人当たり」の関係を調べてグラフにしたところ、おおよそ次のようになりました。
A町からB町までの70㎞を鉄道で移動したとき、自動車やバスと比べて、何gの二酸化炭素を減らすことができるでしょうか。

子供に期待する解答の具体例

・「y=(決まった数)×x」を用いて求める考え
鉄道は、x=2のときy=50→x=1のときy=25
y=25×xになるから、x=70のとき25×70=1750
自動車 8400-1750=6650
 バス 5600-1750=3850 となる。
だから、鉄道で移動すれば、自動車のときより6650g、バスのときより3850gの二酸化炭素を減らすことができる。

感想

  • 比例のグラフを考えるときは、「y=(決まった数)×x」を使って考えるとグラフにない部分が考えられると分かりました。
  • 2本のグラフの差を考えて問題を考える方法は、これからも使えそうだと思いました。
  • 比例の関係を使って問題を解いたら、バスや鉄道を使うほうがより二酸化炭素を減らせると思いました。

板書例

イラスト/横井智美

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