小4算数「倍の見方」指導アイデア《基準量を求める計算》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/横浜市立山下みどり台小学校教諭・青木真璃奈
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、島根県立大学教授・齊藤一弥

単元の展開

第1時 何倍かを求める計算

第2時 比較量を求める計算

第3時(本時)基準量を求める計算

第4時 差による比較と割合を使った比較

第5時 まとめ・たしかめ

本時のねらい

数量の関係に着目し、的確に演算決定をするとともに、その根拠について図を用いて説明することができる。

評価規準

問題場面について、数量関係に着目して捉え、図を使って説明している。

本時の展開


親のヒョウの体重は、子供のヒョウの体重の6倍で72㎏です。子供のヒョウの体重は何㎏ですか。

子供のヒョウの体重は何㎏か求められそうですか。

求められます。

すごいですね。何㎏ですか。

まだ計算できてないけれど、式は言えます。

そうですね。まずは式を教えてください。

72÷6です。

え、72×6でしょ。

あれ?どっちだろう。

意見が分かれましたね。

6倍と書いてあるから、かけ算じゃないのかな。

昨日とは問題が違う気がするよ。

うん。そもそも、親の体重より子供の体重のほうが軽いはずだから、わり算じゃないとおかしいよ。

なるほど。確かにそうかも。うーん。

では、子供のほうが親より体重が軽いはずだから、わり算なんですね。

それは、理由にならない気がします。だって、親より子供のほうが身長が高くなることもあるから、体重も子供のほうが重くなることがあり得ます。

確かに、絶対とは言い切れないかも。

もっと考えれば、何算なのか分かるはずだから時間が欲しい。

では、どんな計算になるのか、みんなで考えてみましょう。


どんな計算になるのか考え、理由を説明しよう。

見通し

三年生のわり算の学習で、□×2=6という式のときに、わり算を使って□を求めたな。(方法の見通し)

前回の学習のときに、数直線に数をあてはめて考えたよ。(方法の見通し)

親のヒョウの体重は、子供のヒョウの体重の6倍となっているから、親の体重のほうが重いはずだ。(結果の見通し)

自力解決の様子

A つまずいている子
問題の意味が捉えられず、□を使った式に表すことができずに困っている。


B 素朴に解いている子
□を使った式に表して、計算をしている。


C ねらい通り解いている子
式で表したことを図でも表し、数量の関係に着目して、わり算の式で表すことができる根拠を考えている。

学び合いの計画

問題文に「倍」と書いてあるからかけ算、答えが増えたらおかしいからわり算というように、感覚的に演算決定するのではなく、根拠をもって的確に演算決定する力を養いましょう。

演算決定をするためには、問題における数量の関係を的確に捉えることが必要であります。

そこで本時では、基準量、比較量、割合の3項の関係が捉えやすい図を用いて考察していくことを大切にしていきます。

また、第一用法のわり算と第三用法のわり算を比較することで、商の意味を割合の視点から捉え直します。

この問題場面の数量関係を図に表して構造的に捉える経験や、商の意味を割合の視点から捉え直す経験は、第5学年の小数のかけ算・わり算、単位量当たりの大きさ、割合の学習でも生かされていきます。

学び合いのなかで、式と図のつながり、図と言葉のつながりに目が向いている子や、わり算の商の意味に気付いている子を価値付け、2量の関係に着目することへ関心を高めていけるようにしていきましょう。

ノート例

A つまずいている子

B 素朴に解いている子

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

※C1、C2のそれぞれが発表をする。

C1
子供のヒョウの体重を□㎏とすると、親のヒョウの体重はその6倍だから、□×6になる。親の体重が72㎏だから、□×6=72
三年生のときも□×2=6の□を求めるときに、6÷2をして求めたから、今回も同じように、72÷6をする。
72÷6=12だから、子供のヒョウの体重は12㎏になる。


C2
前回のように、図を使って考える。

72÷6=12 12㎏


今回は何算ということがわかりましたか。

わり算です。

そうですね! みんなは、どうやってわり算と判断しましたか。

□を使った式で考えました。

図を使って数をあてはめて、その数の間に矢印をかいて考えました。

矢印は何を表しているのですか。

どんな関係かを表しています。

みんなは、□を使った式や図を使って、数の関係に着目して何算か考えたんですね。C1とC2の考え方に同じところはありますか。

三年生の学習や昨日まで使っていた学習を使っています。

どちらも□を使って考えています。

なるほど。やっぱり、今までの学習を使って考えることは大切なのですね。

□×6=72を使っているのが同じです。

あ、本当だ。

どういうことですか。C2の考え方には、□×6=72の式は書いてないですよ。

図の中にあるんです。

図の中にあるのですか。□×6=72は、C2の図のどこにありますか。

C2の矢印の部分(赤線の囲み部分)に、□×6=72の式が見えます。

すごいですね。C1の考え方もC2の図で説明できるんですね。

図をかけば、全部分かるね。

うん。図は便利だね。

では、今日のような図になったら、わり算ということですね。

前にクジラの親子でやったわり算は、違う図だったよ。同じわり算なのに図が違うのかな。

クジラの親子のときは、今日と同じ図になりませんでしたか。

なんか違った気がします。

※第一用法の図を提示する。

クジラの親子のときのわり算と、今回のヒョウの親子のときのわり算は同じですか。違いますか。

□の位置が違います。

求めている場所が違います。

では、どちらかが本当はわり算ではないということですか。

いえ。でもどちらもわり算になることは間違いないです。

うん。図の数の関係もおかしくないし、出てきた答えもおかしくない。

確かに、数の関係を見ても、間違っていないからわり算ですね。

わり算になる図は2種類あるのね。

この2つのわり算の違いは何でしょう。

求めている場所が違います。

うん。□の位置が違うもんね。

いいところに気付きましたね。クジラのときは、何を求めていたのでしょうか。

クジラの親子のほうは、15が何倍かを求めています。

もう少しくわしく言えますか。

クジラの親子のほうは、3mを1と見たとき、15mが何にあたるかを求めています。

前の授業でやった気がするけど、よく分からない。

難しいですよね。少し整理します。3mを1と見たときとは、この図で言うとどういうことですか。

3を1と見たときというのは、ここ(赤線の囲み部分)のことです。

1と見るって、なんだっけ。

「もとにする」ということだよ。

そうですね。では、15が何にあたるかというのも図を使って説明できますか。

図で言うとここ(青線の囲み部分)のことです。

そういうことか。

分かったのですか。

はい。クジラのほうは3mを1と見たとき、15mが何にあたるかを求めていたんだね。

だから、15が何倍かを求めていると言っていたのか。

そうですね。それでは、今回のヒョウの親子も、クジラの親子のときのように言葉で説明できますか。

できます。□を1と見たとき、72㎏は6にあたります。

72㎏を6と見たとき、1にあたるのは何かとも言えます。

すごいですね。ちなみに、今回1にあたるのは何でしたか。

12㎏です。

□にあてはめて言うと、どうなりますか。

72㎏を6と見たとき、1にあたるのは12㎏。図でも言えます。

いいですね。図で言うと、どこのことですか。

「72㎏を6と見たとき」は、ここのこと(青線の囲み部分)です。

1にあたるのは何かというのは、ここ(緑線の囲み部分)です。

クジラのときは、15が何にあたるかを求めていて、今回は1が何かを求めているんだね。

わり算は、もとを求めるときと、何倍かを求めるときに使うんだね。

では、ここまでの学びをふり返ってみましょう。どんな計算になるか判断がつかないときには、どんな考え方を使うと便利でしたか。

□を使った式で表したり、図を使って数の関係を見たりすると、すぐに判断できました。

 □の式が分からなくても、図をかいたら式がわかりました。

あと、図にしたら、1を求めるときと何倍かを求めるときは、わり算を使うということも分かりました。

そうですね。何算かで迷うことは、もうなさそうですか。

はい。できそうです。

では、ほかの場面でもやってみましょう。


・図を使って表し、数の関係に着目すれば、式を判断することができました。
・図を比べてみたら、1を求めるときと何倍かを求めるときに、わり算を使っていることがわかりました。

評価問題

①〜③の式をはんだんしましょう。

①赤のテープの長さは2mです。緑のテープの長さは、赤のテープの長さの3倍です。緑のテープの長さは何mですか。

②青のテープの長さが24m、赤のテープの長さが8mあります。青のテープの長さは、赤のテープの長さの何倍ですか。

③黄色のテープの長さは24mで、これは赤のテープの長さの4倍です。赤のテープの長さは何mですか。

子供に期待する解答の具体例

①2×3=6  6m

②24÷8=3  3m

③24÷4=6  6m

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿

問題を捉え、それぞれを図に表し、的確に演算決定をすることができている。また、その理由を友達に説明している。

感想

  • 式がわからなくても、図に表して、「かける」や「わる」の関係を見付けると、式を判断することができることがわかりました。
  • 今までやってきた問題は違うけれど、図にすると□になっている部分が違うだけで、あとは同じであることに驚きました。
  • 1を求めるときや、何倍かを求めるときに、わり算を使うということがわかりました。場面が変わっても、図に表して、その数の関係がどうなっているか見てみたいです。

ワークシート(ダウンロード可)

ダウンロードはこちら>>

板書例

イラスト/横井智美

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました