「 中央教育審議会 」とは?【知っておきたい教育用語】
教育界でしばしば耳にする言葉が「中教審答申」です。中教審は正式には「中央教育審議会」のことで、日本の教育の基本方針がここで話し合われます。中央教育審議会の答申に沿った教育改革が行われることになるので、その内容や方向性は学校現場にも大きな影響を与えます。中教審とはいかなる組織なのかを解説します。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛
目次
中央教育審議会とは
中央教育審議会は、1952年に文部大臣(当時)の諮問機関として文部省に設置されました。その後、何度かの改編を経て、2001年に中央省庁改革の一環として、従来の生涯学習審議会、理科教育及び産業教育審議会、教育課程審議会、教育職員養成審議会、大学審議会、保健体育審議会の機能が整理・統合され、現在の4つの分科会(教育制度分科会、生涯学習分科会、初等中等分科会、大学分科会)からなる審議会として設置されています。
中央教育審議会は教育・学術・文化に関する施策について文部科学大臣の諮問に基づいて調査・審議し、文部科学大臣に報告・意見という形で答申を行います。答申には法的拘束力はありませんが、中央教育審議会の答申に沿った教育改革や学習指導要領の改訂が行われるため、教育界に大きな影響力をもつことになります。民意を日本の教育のあり方に反映させるという意義がある一方で、その時々の政府の意向の影響を受けやすいとの指摘もあります。
所掌事務
中央教育審議会は次の事務を行うものと定められています。
- 文部科学大臣の諮問に応じて教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項を調査審議し、文部科学大臣に意見を述べること。
- 文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議し、文部科学大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。
- 法令の規定に基づき審議会の権限に属させられた事項を処理すること。
中央教育審議会の構成
委員30人以内で任期2年、再任可とされています。これに加えて、特別の事項や専門的な事項を調査・審議する必要があるときには臨時委員や専門委員を設置することができます。各委員は学識経験のある者のうちから、文部科学大臣が任命します。中央教育審議会の会議は原則公開とされ、議事録も公開されます。
中央教育審議会は以下の4つの分科会から構成されますが、必要に応じて審議会や各分科会は部会を設置することができます。最近設置された特別部会としては「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」「質の高い教師の確保特別部会」などがあります。
近年の提言や答申
最近の提言や答申には以下のようなものがあります。
- 「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」(2023年8月28日)
- 「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」(2021年4月22日)
- 「認証評価機関の認証について(答申)」(2021年4月28日)
- 「大学院設置基準等の一部改正について(答申)」(2021年12月15日)
このうち2023年8月28日に示された「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」を受けて、文部科学省は同年9月8日に提言内容への取り組みの徹底を依頼する通知を都道府県知事、教育庁に発出しました。通知では以下の3つの柱について学校や地域、教職員や児童生徒等の実情を踏まえつつ、対応することが求められました。
- 学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進について
- 学校における働き方改革の実効性の向上等
- 持続可能な勤務環境整備等の支援の充実
▼参考資料
文部科学省(ウェブサイト)「中央教育審議会について」
文部科学省(PDF)「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」(令和5年9月8日)