全国学力・学習状況調査 【わかる!教育ニュース#37】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第37回のテーマは「全国学力・学習状況調査」です。
目次
全国学力・学習状況調査において、石川県の小中学校の36.7%が事前対策
禁止されたことを「しろ」とは言われない。「するな」とも言われない。でも、結果が悪いと責められる。こっそりやっている人もいる。そんな状況だと「禁じられているけど、する」を選ぶ人もいるのでしょう。
今年4月の全国学力・学習状況調査(学テ)を巡る石川県教職員組合の調査で、4月の授業時間や朝の学習などに、過去の問題を解かせるなどの「事前対策」をした小中学校が、36.7%あることが分かりました。
調査は特別支援学校を除く計272校の組合員に実施。小学校122校、中学校36校の計158校から回答が集まりました。対策をしたのは、小学校49校、中学校が9校。小学校だと40.2%に上ります。
指示を受けたのかと思いきや、管理職からの働きかけは「ない」が59.9%。ただ、4月中の対策をしないよう指示があったかも尋ねると、32.0%にとどまりました。
自由記述欄には「教育委員会が絶対やらないでと強く言わないため、『対策しない』を守ったところが損をする」「過去問に取り組まざるをえない。児童に慣れさせる、時間配分の経験をさせるためだ」「教委はテスト結果を学校の指導成果と見る。平均を保つか、上回るあたりにいないと、指導が入る」と、率直な声がつづられていました。
好成績の常連で知られる石川県。今年も平均正答率は小中いずれも各教科上位です。それが日々の地道な積み重ねではなく、学テに特化した対策の賜物だとしたら、見え方が変わってきます。
学テは教育をもっと良くするための「調査」になっているのか
文部科学省はかねて、行きすぎた対策をしないよう促してきました。2016年4月にも「4月前後に集中的に過去問題を練習させ、本来行うべき学習が十分できないとの声がある」「数値データの上昇のみを目的にしているととられかねない、行きすぎた取り扱いは、調査の趣旨・目的を損なう」などと問題視し、各教委などに通知しました。
2007年度に始まった学テは当初、序列化や過度な競争を防ぐため、市町村教委が学校ごとの成績を公表するのは禁じられていました。ところが、各地で学校別の成績を公表する動きがあり、文科省も14年度から規定を変更。結果を分析して改善策も示すのを条件に、解禁しました。
そもそも、学テは何のために行っているのでしょうか。本年度の実施要領には「義務教育の機会均等と水準の維持向上のため、全国的な学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、改善を図る。学校は児童生徒への指導の充実や学習状況の改善に役立てる。その取組を通じ、継続的な検証改善サイクルを確立する」と目的をうたっています。
でも、学テは教育をもっと良くするための「調査」になっているのでしょうか。事前対策が依然続く事実は、きれいごとでは済まない現場の実状を示すとともに、そんな疑念も突き付けています。
【わかる! 教育ニュース】次回は、12月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子