小3 国語科「たから島のぼうけん」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「たから島のぼうけん」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小三 国語科 教材名:たから島のぼうけん(光村図書・国語 三下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田元
執筆/東京都練馬区立大泉学園小学校・内川 航

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、既習事項をいかし、「はじまり」「出来事(事件)が起こる」「出来事(事件)が解決する」「むすび」という構成に沿って物語を創作することを学びます。
その際、場面の様子や人物の気持ちの描写に用いる言葉を工夫する力や、書く内容の中心を明確にしてまとまりのある文章を書く力、自分の文章のよいところを見つける力を育成することを目指します。

物語を創作するにあたっては、「誰に読んでもらうのか」「なんのために読んでもらうのか」といった相手意識・目的意識を明確にもたせることが大切です。今回の単元では「読み手が元気になる物語を作る」という思いを学級内で共有しながら、書き手が楽しく学習を進めていくことが重要です。

2. 単元の評価規準

評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元における言語活動は、1枚の絵地図を基に物語を考えて書くものです。
絵地図にある情報から「想像」することと、作品として「創造」していくことの両輪が児童の活動を支えています。これまでの読書経験や既習事項を大切にしながら進めていきます。

ここでは、読んだ人が元気になるという目的を意識し、冒険の物語の中心となる「たから物」や「解決方法」などを意識しながら、物語を「はじまり」「出来事(事件)が起こる」「出来事(事件)が解決する」「むすび」といった組み立てに沿って書いていきます。
段落相互の関係を意識しながら物語を組み立てられるように、構成を練る時間を十分に保障する必要があります。また“ぼうけん”をキーワードに、どんな出来事が起こるのかを想像したり、登場人物の性格を考えたりしていきます。
さらに、読み手を引きつけるために会話を考えたり、場面の様子を豊かに表現したりするなど、自由な発想を大切にしていきます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 単元のゴールイメージの共有と相手意識・目的意識の設定

児童は、この学習の直前に、「組み立てをとらえて、民話をしょうかいしよう」という「読むこと」の単元で、『三年とうげ』の物語を通して「①始まり」「②出来事(事件)が起こる」「③出来事(事件)が解決する」「④むすび」という民話や昔話に多く当てはまる組み立てについて学習してきています。
そして、「民話をしょうかいしよう」という活動を通して、「民話のおもしろさ」を見つけて友達に伝えることも経験しています。ここで学んだ力を活用して、本単元でオリジナルの物語を書くことに取り組みます。

昨今、学校の中でも社会的にも他者と直接的に触れ合うことや対面する交流活動に様々な制限が加えられている状況があります。そこで、「読んだ人を元気にするために、組み立てにそってぼうけんの物語を書こう」という課題を設定し、書くための目的意識の明確化を図ります。
「ぼうけん」というキーワードから、漫画やアニメ、ゲームなど、ジャンルに問わず、自分の好きな物語について出し合い、前単元での学習をいかし、改めて好きな物語の「おもしろさ」について確認していきます。冒険ならではの心が元気になる“ドキドキわくわく”を考えることで、書くことへの意識を高めていきます。

また、このときに、「学年で読み合う」「学校図書館に置いてもらって、校内の児童に読んでもらう」「1年生に読んでもらう」「学区のお年寄りの方々に読んでもらう」など、読み手を想定して確認すると、より相手意識が明確になります。(本稿では、1年生に読んでもらうことを想定して進めます。)

〈対話的な学び〉 交流することで想像を広げる場の設定 

物語の内容については、「たから島の地図」をヒントにグループで交流しながら想像をふくらませていきます。これまでの読書体験などを想起させながら、地図を見て発見したものを付箋に書き出し、グループで互いに話し合い、物語を書く材料の取材を行います。
「トラ」「恐竜の骨」「難破船」などについて一つずつ確認し、言語化することで、物語の中で使える材料を増やしていきます。グループで交流しながら取材を行うことで、児童が一人では気付かなかった材料やイメージに気付き、これから書く物語の構想を広げていくことができます。
また、ビジュアルとしての地図の存在は、東西南北などの方位やキロメートル、キログラム、トンなどの他教科で学習した用語を活用する機会としても活かすことができます。

書いた作品は、互いに読み合って、感想を伝え合います。このとき、グループを作り、同じ児童の作品を複数の児童で読み合い、感想を伝えるようにします。
1人1台端末を活用して、児童の作品を画像として共有することで、1度に複数の児童が同じ児童の作品を読むことができます。書き手の児童は、自身が工夫したことを、読み手の児童は、作品を読んで感じたことを伝え合い、取組の達成感を味わうことができるようにしていきます。

〈深い学び〉 自分の文章のよいところを見つけ、次の学びへとつなげる

「読んだ人を元気にする」という目的を単元の冒頭で意識させたことにより、単元の途中でも「読んだ人を元気にさせる物語となっているか」という大きな観点から、作成している文章を見直すことができます。具体的には物語のはじめと終わりで変化した人やこと、その変化をもたらしたもの・ことが明確になるように物語が組み立てられているかどうかを確かめます。

また、前単元での学習を活かし、「出来事とその解決などの、物語の組み立て」だけでなく、「登場人物や様子の表し方、また、その変化」「言葉の使い方や文の調子」などの観点も、記述や推敲の段階で活用を図ります。

「同じ学習課題」「同じ地図から発想を広げて」書いた物語であっても、言葉の選び方や物語の組み立ては一人一人違います。互いに読み合うことで「読んだ人を元気にするための工夫」を発見、共有することを通して、友達の文章だけでなく、自分の文章のよさも見つけていきます。

今回の学習を通して、物語を書くという新たな経験を通して、場面の様子が伝わるように言葉を選ぶことや、出来事の順序を考えて文章を組み立てることなどを学び、児童の書く活動が広がっていくことを目指します。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1) 授業で集めた材料を共有し、活用できるようにする

2時間目では、「たからの地図」について想像を広げる場を設けます。
その際、友達との交流やクラスでの全体共有の際に出た考えを板書にまとめていくこととなります。
考えを集約した板書を写真で撮り、その写真をタブレットで配布することで、その後の構成を考えるときや実際の文章を書く際にいつでも活用できるようにしていきます。

(2)効果的な交流のために

9時間目に完成した物語を友達同士で読み合います。その際に、タブレットの学習支援ソフトの課題提出の機能を使い、自分の物語を写真に撮り、それを共有するようにします。そうすることで、一人一人が自分のタブレット端末で、自分の読みたい友達の作品を読むことができます。
紙の場合だと、なかなか一人の作品を同時に複数人が読むことはできません。しかし、タブレット端末を活用することで、好きなタイミングで読みたい人の作品を読むことができます。このメリットを活用して、今回はグループで同時に同じ作品を読み、感想を伝え合います。グループ全員が同じ物語を読んでいることにより、話題が統一され、感想の伝え合いが活発になります。

また、友達の物語を読んで、よかったところやおもしろかったところを学級で伝え合う際にも効果的です。1人1台端末と電子黒板などの拡大提示装置を活用することで、その作品のどんなところがよいのかを具体的に紹介することができます。

6. 単元の展開(10時間扱い)

 単元名: 読んだ人が元気になるぼうけんの物語を、組み立てにそって書こう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 学習の見通しをもち、学習計画を知る。
・これまでの学習を振り返り、活用への意欲をもつ。
・好きな冒険物語(まんがやアニメでもよい)や登場人物について話し合い、「冒険」についてのイメージを共有する。
・教科書にある「たから島の地図」を見て、物語を作ることへの見通しをもち、学習計画を知る。 

・第二次(2時3時4時5時6時7時8時
② 地図から想像を広げ、物語のおおまかな内容を考える。〈 端末活用(1)〉
・教科書の地図を見て、グループごとに描かれている内容の言語化を図る。

③④ おおまかな内容を基にして、書きたいことの中心を意識して構成を考える。
・「たから物」の内容や登場人物の性格について考えることで、物語の中心について意識する。
・地図のどのルートを通るかや出来事(事件)の解決方法など、想像したことをメモする。
・集めた材料を基に、構成メモに組み立てを整理する。

⑤⑥ 組み立てに沿って物語の下書きをする。
・「言葉のたから箱」を参考にしながら、場面の様子や登場人物の行動、気持ちが伝わるように下書きを書く。
・「読んだ人が元気になるぼうけん物語」となっているか、確認する。

⑦⑧ 下書きを読み返し、物語を完成させる。
・分かりやすい表現になっているか、主述は合っているか、文字の間違いはないかを読み返す。

・第三次(9時10時
⑨ 完成した物語を読み合って互いに感想を伝える。
・グループでそれぞれの物語を読み合い、感想を伝え合う。

⑩ 単元の学習を振り返り、自分の文章のよいところを見つける。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

・学習の見通しをもち、学習計画を知る時間です。
・本単元では、既習事項を活用しながら自分のオリジナルの物語を作成していきます。そのため1時間目では、前単元である『三年とうげ』の学習を振り返るとともに、物語を作成していくことに対する意欲を高めることが大切です。

「主体的な学び」のために

・まず『三年とうげ』で学習した物語の組み立てについて確認していきます。「①始まり」「②出来事(事件)が起こる」「③出来事(事件)が解決する」「④むすび」について、児童たちと確認し、それを活かして自分オリジナルの物語を書いていく活動に見通しをもたせます。
また、物語を読んだときにどんな気持ちになるか考えさせ、学習課題を「読んだ人が元気になるぼうけん物語を、組み立てにそって書こう。」と設定していきます。そうすることで、「読んだ人が元気になる」という目的意識をもたせます。
・ここで、「ぼうけん」について取り上げ、「ぼうけん」というキーワードから、まんがやアニメ、ゲームなど、ジャンルを問わず、自分の好きな物語を何人かの児童を指名して語ってもらいます。これから作る作品に対する期待感を高め、児童の冒険に対する書く意欲を高めていきます。
・相手意識については、児童の実態に応じて設定していきます。1年生やお家の人、お年寄りなど、児童が自分の物語を「読んでほしい」、自分の物語で「元気になってほしい」という対象を決めていくとよいでしょう。稿では、1年生に読んでもらうことを想定して進めていきます。
・児童とやり取りしながら、学習計画を示し、学習の見通しをもたせて、終えます。

『三年とうげ』で物語の組み立てを学習しましたね。どのような組み立てだったでしょうか。

「①始まり」「②出来事(事件)が起こる」「③出来事(事件)が解決する」「④むすび」でした。

よく覚えていましたね。物語の組み立てを学習したところで、今回はこの「たからの地図」を使って自分たちでオリジナルの物語を書いていきましょう。
みなさんは物語を読んだとき、どんな気持ちになりますか。

元気になります。

楽しいです。

ワクワクします。

感動することもあります。

みなさんの物語を読んだ人にもそんな気持ちになってもらえるといいですね。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

イラスト/横井智美

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