子供の発見や問いをつないだ授業づくりを大切にする 【授業づくり&学級づくり「若いころに学んだこと・得たこと」第34回】

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授業づくり&学級づくり「若いころに学んだこと・得たこと」

前回は、美里先生が良き先輩に出会い、算数を中心に授業づくりに取り組んでいった経緯を紹介しました。今回は、さらに現任校で主幹教諭という立場になり、若手の先生方と関わりながら感じたことや考えたこと、伝えていきたいと思ってきたことなどを紹介していきます。

美里将寿主幹教諭

先生は子供たちの問いや発見をつないでいくファシリテーター役を担う

私は前任校で担任を外れてTTで授業改善に取り組み、現任校でも主幹として若い先生たちと関わりながら、授業づくりを共有していく立場にあります。その立場から、この何年か思っているのは、現行学習指導要領になって目標が資質・能力の育成になったことを考えると、「この時間で理解させなければ」と慌てるよりも、子供の発見や問いをつないで授業をつくっていくことをさらに大切にしなければならないということです。なぜなら学習指導要領には、「単元や題材などの時間のまとまりを見通して」主体的・対話的で深い学びの実現を図り、資質・能力を育むように示されているのですから。

以前、取材に伺った日の授業の様子。この日はTTではなく一人での授業だったが、管理職や複数の同僚が授業を見に来ていた。

どうしても経験が少ないと、「45分でしっかりまとめよう」と考えてしまいがちですが、単元全体を見通しながら、ときにはしっかり試行錯誤させることも大切です。その時間内には、納得する解法や答えが出しきれなくても、一人一人の子供が彼らなりに一生懸命考える時間を取ることで、後に誰かの解法を聞いて「ああ、そうか」と納得できるものですし、それが先生の説明だったとしてもしっかり理解できることでしょう。だからこそ、子供たちに課題解決、問題解決を委ねてあげて、先生は子供たちの問いや発見をつないでいくファシリテーター役を担うことが大切だと思います。そうやって一歩引いて見てみると、もっと授業づくりが楽になると思いますし、若い先生たちには柔軟性がありますから、もっともっとすばらしい授業づくりの発想が生まれるのではないでしょうか。

学習過程全体を通して資質・能力を育むためには(あるいは、より確かな概念的理解を図るには)、直接に答えに結び付く考え方だけでなく、その周辺の多様な問いをもっている子、気付きをもっている子の考えを拾い上げることが大切ですし、そうすることで授業づくりがさらに楽しくなると思います。もちろん、算数が苦手だった子供たちも自分の声が拾い上げられると乗ってくるし、その教科の授業が好きになるのではないでしょうか。「分かった人!」と投げかけて、その子たちの考えを拾い上げて授業を進めるのではなく、手を挙げていない子、分からない子たちに目を向けて、「どこが分からないの?」と聞いてみると、その子たちが問いとなる鍵をもっていたりします。その子たちの困り感や分からなさをみんなで共有し解決していくことで、多くの子供たちがより確かな理解(概念的理解)ができるはずです。ですから、自分の授業プランに合致する子供たちだけをつないで授業をつくるのではなく、困り感のある子、分からない子の考えを、先生も子供たちも大事にしていければ、もっと授業は楽しくなるのではないでしょうか。

まだそんな授業づくりをしたことがない先生は、まず分かっている子が説明しているときに、その子ではなく、その子の話を聞いている周囲の子供たちに目を向けてみてください。分かっている子が説明していても、「何を言っているんだろう?」「分からない」という顔をしている子供が必ずいるはずです。そういう子供たちの反応を見ること自体も楽しいし、どこが分かりにくいのかなと考えるとさらに楽しくなるはずです。そのように子供の見とりを大事にしていくと、きっともっともっと授業づくりの可能性が広がるし、楽しくなるだろうと思います。

授業中に意図をもって立ち位置を変えていくことも大切

先のような「子供の思考の流れに沿った授業づくり」の大切さを同僚や後輩に伝えると、「どうやったら子供の思考が分かるのですか」と問われることがあります。私は現在は、机間を回りながら経験上の感覚で、「何種類くらいの解法があるぞ」「何人くらい困っている子がいるぞ」と捉えています。しかし、その問いを受けて改めて考えてみると、若い頃には指を折って数えたり、補助簿を付けたりして、「何種類の解法がある」「何人がこんな考え」「何人がここで困っている」「何人がこの点の誤理解をしている」と、確認しながら机間を見て回っていました。そのように、意図して徹底的に記録を取りながら子供の見とりの訓練をしてみると、自分のスキルを見直す上で良いきっかけになるのではないでしょうか。

経験を積み重ねて自然に行っている見とりも、「ときには記録を取りながら確認し直してみることも大事」と話す美里先生。

また、授業中に意図をもって立ち位置を変えていくことも大切だと思います。特にコロナ禍になって以降、子供の表情や声が伝わりづらくなった機会に、改めて子供たちの間に入っていく機会を増やすことで、子供の見とりをしようともしてきました。そのように、立ち位置を変えるだけで見えるものが変わっていくと思いますから、「今日はこういうねらいで、こんなふうに立ち位置を変えてみよう」と考えてみるのもよいと思います。

あるいは間も大事です。先生が何か問いかけて反応がないと、ついつい「これは実は…」と先生が説明をしてしまったり、「グループで話し合ってください」と言ってみたりすることもあるのではないでしょうか。しかし、少し間を取って子供たちの顔を眺めてみると、分からないのではなく考えている場合もあって、少しの間を経て、複数の手が挙がることも少なくないはずです。

そのような、見とりの技法や立ち位置や間の取り方などは、ちょっとした技術にすぎませんが、やはり授業力を高めていく上では必要なことです。ですから、前任校以降、私はTTで一緒に授業づくりをしながら伝えたり、私が授業するときに後輩が見に来ていたら、そういうことを意図的にやって見せるようにしたりしています。そういう視点をもって、自分の授業を見直し、変えてみると、きっと子供の見とり方が変わり、次第に授業づくりの考え方も変わってくるのではないでしょうか。

学習場面に応じ、ときには子供の側に立って聞き役に回るなど、立ち位置の変更や間の取り方も意図的に行っているという美里先生。

最後に、これは繰り返しになってしまいますが、若い先生方には、「子供たちの分からなさや問い」をぜひ大事にしてほしいと思います。これは私が教師を志した思いとも重なるのですが、子供たちの少しの成長でも見付けられるのが先生という仕事だと思います。例えば算数の授業の中で、解法にたどり着けなかった子供であっても、「こんなおもしろい考え方ができるんだね」「こう変わったよ」「こう成長したよ」と小さな可能性や小さな変化でも伝えられると、子供たちの自己肯定感も高まりますし、先生との信頼関係も高まるでしょう。先生がそうした小さな成長を見付けて、日々子供たちに伝えられれば、きっとそれは大きな成長につながっていくと思うので、若い先生方には、いろんな形の物差しを持って多様な個性を見とり、認められる先生になってほしいと願っています。

【授業づくり&学級づくり「若いころに学んだこと・得たこと」】次回は、11月24日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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