宿題よりも「自学」を~担任のコメント力で、学び好きな児童に!~

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マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

昨今「個別最適な学び」が提起され、一律に出す「宿題」よりも「自学」を奨励する指導がより強く推し進められています。ただ、自学は児童本人の「やる気」に大きく左右される学びとも言えますから、担任がいかにサポートして、やる気を維持させてあげるかが大事だと言えるでしょう。その最善の方法は、「自学」ノートへのコメントです。どんなコメントを残せばいいのでしょうか。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 「自学」の考え方

『自学』は、教員が学校で授業として行っている『教授行為』から切り離された、児童たち各人による自主的な学習である、と位置付けられます。
学習指導要領に基づいた学力の育成とは直接結びつかないかもしれませんが、学びにおいて最も大切な動機付けや学びに向かう意欲を育てるのには最適な方法とも言えます。
自学では、学ぶ対象も内容も自由なので、各児童のメンタルのあり方によって、その質や量は左右されます。
そこで、教員が児童の興味や関心を把握し、長い目で、学びの手法を教えてあげたり、その都度意欲を向上させたりする工夫が大切だと言えます。これは、担任でなければできない支援とも言えます。
ぜひ皆さんも、児童が提出してきた自学ノートに、それぞれの学びの気持ちを伸ばすような支援をしてあげてください。

2 コメントを書く際の留意点とは

児童が「自学」ノートを提出するたびに、ちょっとでもコメントを書くことで、児童は自分の学習を認めてもらえていると実感でき、より学習意欲が高まります。
ただ、コメントの文章量が毎回多いと、児童がプレッシャーを感じてしまう可能性があるため、普段は一言、二言でよいでしょう。
適切なコメントを書くには、以下のことを意識し、支援していく必要があります。

①児童の興味や関心を把握し、それに基づいた学習課題についてアドバイスをすること
②児童が自ら自学計画を立て、実行できるようにアドバイスすること
③児童が自学の途中で困難や課題に直面した際に、適切なアドバイスをすること

「自学」コメントは、間接的な学習指導の方法です。コメントを書くことが楽しみになるものにしたいです。「自学」は、決して「宿題」の代替物ではなく、児童の基本的な「学びに向かう姿勢」を育てるものです。そのことを肝に銘じてしっかりと個別計画を立てて指導していきたいです。

3 児童の「自学」力を伸ばす具体例

では、具体的に「自学」ノートに指導者(担任)がどんなコメントを書くのがよいのでしょうか。
学びの進度や意欲の見取られ方によって、だいたい次の3点をポイントとして考えるとよいでしょう。

①児童の努力や取組を認める

これは特に、ドリル系の「自学」で気を付けたいポイントです。評価印や花丸でもいいのですが、たまにコメントを入れてあげると、非常に効果的です。温かい担任からのコメント、メッセージは、保護者にも伝わり、家庭で学習意欲向上に繋がっていきます。
こんな「自学」コメントを書いてみます。

「よくがんばったね!」
「ていねいにまとめられていて、分かりやすいよ!」
「自分で考えて工夫したところがいいね!」
「新しいことにチャレンジしたことをほめてあげたい!」
「いつも一生懸命取り組んでいて、見ていてうれしい!」
「正しく確実にできましたね!」
「ゆっくり書くと、とてもていねいな字になりますね。すごい!」
「この調子! 続けてがんばりましょうね!」
「すごいなあ。たくさん練習したね!」
(自分で丸付けをした児童に対して)「今週は100点でよかったね。来週もこのちょうしでがんばってね!」
「美しいノートです。〇〇のまとめが上手です!」
「さすが お見事!!」
「今度、英語を聞かせてね!」
「やる気が伝わってくるね!」

②児童の学習内容や方法をメタ認知できるように

児童が学習した内容や方法を肯定するコメントは、児童の自信を高め、学習への意欲を向上させる効果があります。そのためには、じっくり時間をかけて読み込み、この児童をどんな方向に伸ばしていくべきかというプランを立てる必要があります。いろいろな改善点を述べてもなかなかその通りにはいかないものです。いい点を見付けてコメントを書き、改善すべきところは、クラスメートのノートを見せて参考にさせるといいでしょう。
こんな「自学」コメントを書いてみます。

「〇〇の考えはすごくよく分かるよ!」
「△△の図は分かりやすくて参考になるなあ!」
「□□の説明がとてもていねいだね!」
「■■■という視点から考えたことは、とても新鮮!」
「◆◆◆という方法は、とても効率的だよ!」
「定規を使って線を引いているのがいいね!」
「実際に行って見てきたことは説得力があります!」
「大切なテーマに時間をかけて向き合っているね!」
「画像を付けて説明しているので、〇〇のことがよく分かる!」
「イラストも文字もデザインも、すべてがていねいに仕上げられていて、脱帽だ!」
「イラストと写真をうまく使っているし、色の使い方もいいね!」
「中央のタイトルが光るね。構成、デザインがいい!」
「ワクワクする構成になっています!」
「色のぬり方が印象的な作品だね!」
「タイトルの字体がグッド!」

このように具体的にほめていくコメントを残したいものです。中学年の児童は、ドリル系の学習から一歩踏み出して、疑問に思ったことや調べてみたいことを書くことが多くなってきます。その際に、どんどんほめて励ましていくと、より一層調べて書いてみたいと思うようになります。
すなわち、教師によってほめられることで、自分の学びを「メタ認知」できるようになり、ノート作成時に「他人に見せるもの」という視点が入ってくるわけです。
学年はじめは無機的なノートだったのが、見た目も内容もどんどん工夫されて、彩りあるものになっていきます。そうなると、より担任からほめられる上に、後で自分で見返しても楽しいものとなり、よいサイクルが作られていくことになります。

学習をさらに深めるためのアドバイスやヒントを示す

児童の学習をさらに進めるためのアドバイスやヒントを示すコメントは、児童の学習をより深め、学習意欲を向上させる効果があります。

「〇〇について、もっとくわしく調べてみたら、さらに理解が深まるよ!」
「△△の考えをもっと深めるために、〇〇という視点から考えてみたらどうかな?」
「□□の図をもっと分かりやすくするために、△△という工夫をしてみたらどうかな?」
「■■■という方法は、***という場面でも使えるよ!」
「◆◆◆という考え方を取り入れることで、もっと深く学べるよ!」
「タイトルは自学の『顔』、いろいろと工夫してみて!」
「よくこれだけまとめたなあ。図書室に参考になる本があったよ。今度行ってみて!」

このように、より学びの質を高め、完成度を上げるために、違う見方をしてみてはどうか、ここを工夫してみてはどうかと提案してみるのもいいです。
また、学びの対象を変えずに続編を期待したり、連作を促したりすることも効果的です。児童が大好きなマンガは、何巻にも連なることが多いですよね。


ところでわたしは、自学指導をする時は、児童にノートを2冊使わせています。1冊だけだと、その日のうちに返さなくてはならないので、2冊のノートを交互に提出してもらい、コメントを書いたあと返却していました。放課後などにじっくり児童のノートを読み、心に余裕をもってコメントを書くようにしていました。

イラスト/フジコ

【参考図書】
小学生の究極の自学ノート図鑑 森川正樹/小学館
自学力を鍛える基本テーマ事例集 (自学能力を鍛える)  岩下修/明治図書出版
「自学」で子どもが変わる―知と情を育てるシステムづくり (自学能力を鍛える)  岩下修/明治図書出版
自学のシステムづくり (自学能力を鍛える) 岩下修/明治図書出版


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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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