小4特別活動 学級活動編 「友達と仲よく」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小4特別活動の指導アイデアです。11月は、「友達と仲よく」学級活動(2)イの実践例を紹介します。
日頃から自分の使っている言葉を見つめなおし、友達とのよりよい人間関係のつくり方や広げ方について話し合います。学級で話し合ったことを生かして、これから自分が気を付けることを意思決定し、実践することで、よりよい人間関係を築くことの大切さを実感できる取組を紹介します。
執筆/琉球大学教育学部附属小学校教諭 宮城 翔
監修/文部科学省視学官・安部恭子
沖縄大学教授・黒木義成
目次
年間執筆計画
4月 学級活動全体 学級活動ってどんな時間なの?
学級活動(1) ア どうぞよろしくの会をしよう
5月 学級活動(1) ア 学級の合言葉をつくろう
6月 学級活動(1) イ 係を決めよう
7月 学級活動(3) イ ピカピカそうじ大作戦
9月 学級活動(1) ア 学級運動会をしよう
10月 学級活動(2) エ 健康によい食事のとり方
11月 学級活動(2) イ 友達と仲よく
12月 学級活動(1) ア 3年生との交流会をしよう
1月 学級活動(2) ウ SNSの安全な使い方
2月 学級活動(3) ア 5年生に向けて
3月 学級活動(1) ア 自分たちの成長を祝う会をしよう
1.題材のねらい
子供は友達と学校生活を送る中で、何気なく使っている言葉でも相手を嫌な気持ちにさせてはいけないということは知っていても、嫌な気持ちにさせてしまう言動や態度をとってしまうことがあります。日頃から自分の使っている言葉を見つめ直し、友達とのよりよい人間関係のつくり方や広げ方について話し合います。
同じ「ごめんね」という言葉でも、言い方によっては自分の気持ちが伝わらない場合があるということをロールプレイなどで考えるようにし、「自分にも似た経験はないか」と問うことで自分事として捉えることができるようにします。さらに、相手のことを考えた言葉遣いをしているつもりなのに、なかなか自分の思っている言葉が返ってこないときなどの想定外の場面をイメージさせ、どうすれば、相手を傷つけない行動や言動ができるかを深く考えさせていきます。
学級で話し合ったことを生かして、これから自分が気を付けることを意思決定し、実践することでよりよい人間関係を主体的に築くことのよさや大切さを実感できるようにします。
2.事前の指導
<子供の問題意識を高める事前指導>
①題材の提示と学級目標の確認
学級活動(2)では、事前に題材を提示することで問題意識を高めます。自分の行動や言動を振り返りながら、学級の現状も振り返ります。
学級目標に「人間関係」に関わる内容がある場合はそれを振り返り、「こんな学級生活にしたい」ということを確認するとより具体的にイメージできるようになります。
②事前アンケート
これまでの友達との関係を振り返り、自分が言われてうれしい気持ちになったり、言われて嫌な気持ちになったりした経験や、そうした気持ちになる言葉は何かについて、事前にアンケートを取ります。そうすることで、本時において具体的な場面を想起しながら子供が自分事として考えることができるようにします。
その際、ICT端末を活用してアンケートを取ることで、集計作業が短時間にでき、結果をグラフなどで可視化することが容易になります。
<指導の流れ>
①現在の生活上の課題を把握する
アンケートを実施し、子供の実態把握を行います。
②課題の確認と解決の見通し
指導内容や指導方法を考えます。その際、題材のねらいや子供の実態から子供に育成を目指す資質や能力を設定します。
また、発達の段階に応じた指導の重点をもとに指導計画を立てます。
③板書計画の作成
題材のねらい(意思決定させたいことや理解させたいこと)に合わせて効果的な資料や発問を検討し、板書計画を立てます。その際には、子供が題材をより自分事として捉え、具体的に考えることができるような工夫も考えます。例えば、アンケートの結果を集計し、本時の導入で確認したり、気付いたことを学級で話し合うことで、現状を学級全体で共有し、子供が課題を自分事として捉えたり、自身の生活上の課題に気付いたりできるようにします。そのために、話合いの場面でロールプレイなどを入れることも効果的です。
④道徳科や他教科との関連
学級活動において、子供が主体的に話し合うために、道徳科や他教科などとの関連を図り、題材に対する子供の意識を高められるようにしましょう。本単元の前に、関連する道徳科や教科などの振り返りや関連する内容が書かれている日記などを子供に提示することも大切です。
3.本時の指導
学級活動(2)「日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」は、子供一人一人が、現在の自分の生活上の課題を見つめ、自分に合った具体的な解決方法や目標を意思決定し、自発的、主体的に実行することができるように自己指導能力を育みます。
学級活動(2)の基本的な学習過程は、「つかむ(課題の把握)」「さぐる(原因の追求)」「見つける(解決方法等の話合い)」「決める(個人目標の意思決定)」の4つです。特に、子供に意識させたい点としては、「つかむ」段階です。
学級活動(2)は、年間指導計画の題材に位置付けられたものです。子供が題材を自分事として捉え、意思決定し実践につなげることができるかどうかは、事前アンケートなどで意識を高めるとともに、「つかむ」での課題提示の仕方にかかっています。ここでは、意外性のある事実や子供が気付かなかったことなどを提示することができるとより効果的です。
例えば、アンケート結果を見て、自分だけかと思っていたことが、他にも同じ思いや考えの人がいることに気付いたり、自分とは違う考えの人がいることを知ったりする場合もあります。題材によっては写真や映像を使うとより効果的になります。
① つかむ
事前アンケートの集計結果や、これまでの友達との関わりについて振り返り、「友達との言葉のやり取りで大切にしたいことを決めよう」という本時のめあてにつなげます。子供が題材を自分事として捉え、主体的に考え実践につなげるために、「ふわふわ言葉」や「ちくちく言葉」について事前アンケートを基に全体で確認します。
子供は、今までの経験から「ちくちく言葉」よりも「ふわふわ言葉」を使ったほうがよいことは分かっています。しかし、なかなか「ふわふわ言葉」を使うことができない場面があるという課題をつかませます。普段の学校生活でのトラブルなども想起させながら授業を進めることで、題材を自分事として捉えることができるようになります。また、ICT端末を活用してアンケートを行うと、集計作業やグラフ化などが効率的に行えます。
※本実践では、言われてうれしい言葉や相手を思いやる言葉を「ふわふわ言葉」、言われて嫌な気持ちになる言葉を「ちくちく言葉」としています。
≪教師の声かけ例≫
先日、友達を大切にする言葉についてのアンケートを取りましたね。結果を見て気付いたことはありますか?
友達に言われてうれしい気持ちになった人が多いね。ふわふわ言葉を使うと、相手もうれしくなるよね。
うれしい気持ちになったことがない人がいたのは意外でした。
友達に言われた言葉で嫌な気持ちになった人が24人もいてびっくりしました。きっと「ちくちく言葉」を言われたんだと思います。
嫌なことを言われたと答えている人がたくさんいるのに、言ったことがあると答えている人はすごく少ない!
「ふわふわ言葉」を使うとうれしくなって、「ちくちく言葉」を使うと嫌な気持ちになるというのは分かっているけど、難しいですね。
※事前アンケート結果を活用して、「嫌なことを言ったことがある人は少ないのに、言われたことがある人が多い」というギャップに気付くことができるようにします。また、子供の思いに寄り沿いつつ、「分かってはいるけど、取り組めないことがある」という課題に気付くことができるようにします。
② さぐる
「どうして、相手が嫌な気持ちになることをするのか?」と問い、今までの経験を振り返って原因に気付くことができるようにして、解決する必要性をもたせます。子供からは「イライラすると、分かっていても言ってしまう」「ついつい言ってしまう」などの発言が予想されます。
さらにここでは、「ちくちく言葉」を直接的には使っていないが、嫌な気持ちになるような場面を提示して、「なぜ嫌な気持ちになるのか」を尋ねることで、他の場面でも、言い方によっては相手を嫌な気持ちにさせることがあると気付くことができるようにします。言葉だけでなく言い方や態度によっても相手を嫌な気持ちにさせることがあるということに気付かせ、これまでの自分と重ねながら、言い方や態度によっては、気持ちが伝わらず相手を嫌な気持ちにさせてしまうということを学級全体で確認するようにします。
≪学校生活でトラブルになる例を子供に演技してもらう≫
場面設定(給食時間:友達とぶつかってスープをこぼした)
(ぶつかって)あ……。
ごめん ごめーん。
(ぶつかって)あ~あ。
ごめんって言っているのに!
嫌な気持ち。
どうして嫌な気持ちになったと思いますか?
言い方や態度が悪いからだと思います。
ごめんという気持ちが伝わらないからだと思います。
③見つける
「さぐる」段階で言い方や態度によって、気持ちが伝わらず、相手を嫌な気持ちにさせてしまうということを全体で確認し、その上で、「見つける」段階では、どんな場面でそのようなことが起きるかを考えるようにします。自分が考えた場面で、どんな言葉のやり取りが互いに気持ちよくなるかを子供一人一人が考えたり、ペアで話し合ったりして、具体的な場面をイメージできるようにします。
ロールプレイなどを通して言葉のやり取りだけでなく、言い方も考えさせながら、大切なことを学級全体での話合いを通して見つけていくことができるようにしていきます。
≪教師の声かけ例≫
今のやり取りは、なぜ嫌な気持ちにならないのかな?
※言い方にも目を向けられるようにします。
なぜ、その声かけをしたのでしょう?
※相手の気持ちを考えた発言を強調します。
なぜ、その言葉で返したのかな?
※相手の気持ちを考えた発言を大切にします。
※教師と子供との1対1のやり取りにならないように気を付け、学級での話合いを生かした意思決定につなげるようにしましょう。
④決める
「決める」段階では、「見つける」段階で出てきた考えを生かして、一人一人が自分の課題に合った実行可能な目標や内容を意思決定します。さらに、意思決定したことを問い返し、想定外な場面を意識させ、より実践の場面に即した行動を考えさせます。その際、2~3人の子供に意思決定したことや本時の振り返りを発表してもらい、めあての修正や実践の参考にできるようにし、これからの実践への意識を高めていきます。
≪意思決定の例≫
相手の気持ちを考えてから話すようにする。
少し時間をおいてからもう一度言ってみる。
相手の気持ちを考えて、言葉遣いに気を付ける。
いっしょにやろうなど前向きな声かけをする。
すぐに怒らないで、様子を見て話す。
4.事後の指導
ワークシートを活用して、自分の意思決定したことを1週間程度実践し、振り返るようにします。実践後のまとめとして、振り返ったことを学級全体で確認し、「振り返りシート」にまとめて掲示し、実践の継続化を図るようにします。
実践を通して意識した言葉や、自分も相手もうれしい気持ちになる言葉を見つけ、みんなから出てきた言葉を掲示したり、「ふわふわの木」として使った「ふわふわ言葉」を葉に書いて増やしていったりして可視化することで意識を高め、継続して実践できるようにしていくことも考えられます。
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
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