小6社会「町人の文化と新しい学問」指導アイデア
執筆/埼玉県・川口市教育委員会指導主事・堀祥子
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
国士舘大学教授・秋田博昭
目次
年間指導計画
・日本国憲法とわたしたちの生活
・政治の働き・社会保障
・むらからくにへ
・天皇中心の国づくり
・日本風の文化
・源頼朝と鎌倉幕府
・今に伝わる室町文化
・織田・豊臣の天下統一
・江戸幕府と政治の安定
・町人の文化と新しい学問
・明治維新と新しい国づくり
・世界に歩みだした日本
・長く続いた戦争と人々のくらし
・戦後の新しい日本
・つながりの深い国々(国際交流)
・世界の課題と日本の役割
目標
歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学について、世の中の様子、人物の働きや代表的な文化遺産などに着目して、遺跡や文化財、地図や年表などの資料で調べ、まとめ、我が国の歴史上の主な事象を捉え、我が国の歴史の展開を考えるとともに、歴史を学ぶ意味を考え、表現することを通して、町人の文化が栄え、新しい学問が興ったことを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度を養う。
評価規準
知識・技能
①世の中の様子、人物の働きや代表的な文化遺産などについて、遺跡や文化財、地図や年表などの資料で調べて、必要な情報を集め、読み取り、歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学について理解している。
②調べたことを年表や文などにまとめ、町人の文化が栄え、新しい学問が興ったことを理解している。
思考・判断・表現
①世の中の様子、人物の働きや代表的な文化遺産などに着目して問いを見いだし、歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学について考え、表現している。
②歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学を関連付けたり総合したりして、この頃の世の中の様子の変化を考え、適切に表現している。
主体的な学習に取り組む態度
①歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学について、予想や学習計画を立てたり、学習を振り返ったりして、学習問題を追究し、解決しようとしている。
学習の流れ(6時間扱い)
問題をつくる 2時間
- 資料「熈(き)代(だい)勝(しょう)覧(らん)」を読み取り、江戸のまちや生活する人々様子について話し合う。
- 芝居小屋の様子や人体解剖図などの資料を読み取り、疑問に思ったことを話し合う。
(学習問題)
江戸幕府が政治を行ったころには、どのような文化や学問が生まれたのだろう。
追究する 3時間
- 歌舞伎や浮世絵などの新しく生まれた江戸の文化について調べる。
- 杉田玄白、伊能忠敬の業績を調べ、新しい学問である蘭学が社会へ与えた影響を考える。
- 本居宣長の業績を調べ、国学が与えた社会への影響を考える。
まとめる 1時間
- 調べて分かったことを表にまとめ、この時代の文化の特色を考える。
問題をつくる
資料から江戸のまちや人々が生活する姿を読み取り、当時の生活の様子がどのように変化しているか話し合う。(1、2/6時間)
導入のくふう
「熈代勝覧」等の資料は、1人1台端末に画像データを入れておくことで、細かいところや児童が気になったところを自由に拡大したりスクロールしたりして、資料を読み取ることができるようにする。
1時間目
資料「熈代勝覧」を読み取り、江戸のまちや生活する人々様子について話し合う。
※「熈代勝覧」…1805年の江戸(日本橋近く)の様子を描いた絵巻。絵巻には、全長12mにわたり、江戸の町や人々の様子が描かれている。
この資料を見て、江戸のまちには、どのような人たちがいるか探してみましょう。
刀を差している人がいます。これは武士ですね。
八百屋さん、すし屋さん、薬屋さんなどの店があり、商人が働いていますね。
お坊さんや旅をしているような人もいます。武士でない人のほうが多いかな。
実は、この資料は絵巻物の一部なんです。タブレットで全体を見ることができるので、江戸のまちを観察して、どのような様子か話し合ってみましょう。
大きなお店が並んでいて、商店街のようです。江戸のまちはとてもにぎわっていますね。
江戸のまちにはいろいろな立場の人たちがいて、様々なお店も栄えていることから、平和で活気のあるまちだったのだと思います。買い物をする人は武士だけではないのですね。
本当ですね。武士を中心にした身分制ができたと学習しましたが、資料には武士でない人が多く登場しています。江戸には武士だけが住んでいたわけではないんですね。
2時間目
芝居小屋の様子や人体解剖図などの資料を読み取り、疑問に思ったことを話し合う。
これらの資料を見て、気が付いたことや疑問に思ったことを話し合ってみましょう。
芝居小屋は満員ですごい人気ですね。観客席が2階や3階にもあるなんて、今の劇場と同じです。そんなに人気のあるお芝居とは、どんな内容だったのかな。
芝居小屋に来ている人たちの中には女性もいるようです。こういう文化を楽しむことができるのは武士だけかと思っていましたが、町人も見に来ていますね。
今までは、町人が描かれていることはあまりなかったと思うので、この頃は、町人も文化の担い手になっていたのではないかな。
人体解剖図は、とても詳しく書かれています。この頃は、もう今の医学と同じように、手術などが行われていたということかな。
でも、顔をよく見てみると、日本人っぽい顔ではないね。髪型は外国人のように見えます。この解剖図は、外国のものを日本人が写したものかもしれませんね。
江戸幕府は、鎖国をして外国との貿易を独占していたから、幕府以外に外国の文化や情報は入ってこなかったはずなのに、どうしてだろう。
江戸幕府が政治を行ったころには、どのような文化や学問が生まれたのだろう。
※1・2時間目では、江戸幕府が政治を行った頃に生まれた新しい文化や学問の様子から、児童が主体的に追究できるようにすることが大切です。本実践では、身分制の中心にいた武士ではなく、町人が文化の担い手になっていることや、鎖国によって入ってこなかった外国の文化・情報が入ってくるようになったことを資料から読み取り、学習問題を設定するようにしています。
追究する
歌舞伎や浮世絵、国学や蘭学について調べ、社会への影響について考える。(3、4、5/6時間)
調べる活動のくふう
複数の資料を関連付けて読み取ることで、当時の文化や新しい学問の特色を捉えることができるようにする。
3時間目
歌舞伎や浮世絵などの新しく生まれた江戸の文化について調べる。
浮世絵のことを調べて、どのようなことが分かりましたか。
浮世絵には、人物画や風景画があります。町人が多く登場しています。
浮世絵の中には、町人が見に行っていた歌舞伎の役者絵もあります。今の私たちがアイドルの写真を買うのと似ていると思いました。
浮世絵のつくり方は、私たちが図工で制作した版画のつくり方と似ていました。
浮世絵が版画だったとはびっくりしました。でも、同じ絵を何枚も摺ることができるから、大量につくることができて、町人も買えるくらいの値段で売ることができたんだね。
五街道の資料からは、道が整備されていたことが分かります。参勤交代が制度化されたことを学習したけれど、この頃には、町人も旅をするようになっていました。
人々や物が移動するようになると、文化も全国へ広がっていきますね。
※同様に、歌舞伎についても調べることで、町人に大変な人気があったことや現在にもほぼ同じ形で受け継がれていることなどを捉えるようにします。
4時間目
杉田玄白、伊能忠敬の業績を調べ、新しい学問である蘭学が社会へ与えた影響を考える。
イラスト/栗原清、横井智美