【相談募集中】生徒に嫌われたくなくて生活指導ができない……方向転換するならいつ?
初任者の先生から生活指導の方針転換に関する相談が「みん教相談室」に寄せられました。これに回答したのは元北海道公立中学校校長・森万喜子先生。方針転換も大切ですが、生活指導には「なぜ?」という感覚を持つことも大事だと、ご自身の体験から教えてくれました。
目次
Q.生活指導の方針を転換したい。ベストなタイミングはいつ?
初任者です。生活指導に関する相談です。生活指導の方針を転換するのはいつが良いのでしょうか? 今私が勤務している学校は、校則はあるものの校則違反を先生方が黙認しがちです。例えば、服装についての校則で、第2ボタンを留めなくてはならないところを黙認することが多いです。
私も、4月に赴任してからの3か月間、そういった校則違反を見逃してしまうことが正直多々ありました。学校の雰囲気に甘え、指導により生徒に嫌われたくないという、ひとえに甘い考えです。やはり、学校の教員として一貫性を持たすべく、校則違反は注意や指導をしていくべきだと思い、行動に移していきたいと考えています。
ただ、急に指導方針を転換した場合、これまで黙認してきたこともあり、指導の一貫性の無さから、生徒の私に対する不信感を煽ってしまうのではないかと不安です。今は7月で1学期が終わり、学校生活も一区切りつく時期です。夏休み中に部活動はあるものの、方針の転換を2学期から変えるべきか、この1年は現状維持で来年の4月から変えるべきか、それとも別の方法があるのか悩んでいます。ご回答いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。(しお先生・30代女性)
A.指導方針を変える以上に、その方針が適切であるかどうか考えることが大切
しおさん、こんにちは。初任者のしおさんにとって、学校での毎日は充実感や楽しさもあるけれど、お悩みも多いことと存じます。
さて、生活指導の方針転換の時期についてのご相談ですね。しおさんご自身で、今まで自分も、自分以外の教職員も黙認しがちだった校則について、一貫性を持たすべく注意指導をしていくべきだと考えられ、行動を変えようと決意した。そして、ご自身の行動をいつから変えていくかお悩み中ってことですよね。緊急かつ重要なものは即座に着手! ですが、学校全体で緊急かつ重要と考えられていないようですね。
しおさんは生徒との関係性の悪化を懸念して黙認しがちだったということですが、学校全体として「第2ボタンを留める」というのはどのくらいの重要度で正当性のある校則でしょうか。
教育現場って、知識やスキルだけではなく「価値観」を学ぶところとも言われます。そして、その価値観は時代とともに変化するものもあります。
私が現職の教員だった時、体操着のTシャツや制服のシャツの裾は「必ずスカートやズボンの中に入れる」が鉄則でした。ところが、温暖化の影響で夏場の気温上昇による熱中症の予防のためには、『上衣の裾は外に出したほうが体感気温が下がる』という結果から、必ずしも中にいれなくてもよくなり、ポロシャツなど、裾を出して着てもよいものに変わりました。
生徒さんが第2ボタンを空けているのは、なぜ?
学校が第2ボタンを留める校則を定めているのは、なぜ?
先生方は、校内ではラフな格好をしていて、たとえばお客様が来る時は上着を着る、出張に出る時はスーツを着るなど場面に応じた服装をしていますが、生徒はどうでしょう。もしかして、学校にいる時はすべて「正しい」「フォーマルな」服装で過ごすことを求められているのでしょうか。ちゃんとするべき時に正すのは不可なのですかね。なぜでしょう。
という具合に、「なぜ」ということを考えてみることも必要です。
勤務先の学校の最上位目標(学校の教育目標)を実現するためにあるはずのさまざまな教育活動。しかし、納得感の薄いものを「徹底させよう」と「毅然とした態度で指導」すると、最上位目標から離れていくことになりかねないのでは、と感じます。
たぶん急に指導方針を転換したら、しおさんも書かれている通り、生徒さんたちは「急に変わった。なぜだろう」と思うでしょうね。その時、しおさんが理由をきちんと話せる、その理由に納得感があるのなら、理解してくれるかもしれません。
同僚の先生方と、このあたりの生活指導の疑問を話題にして、忌憚なく話すことはできますか? 私個人としては、場面に応じて適切な服装や態度を自分で考えてできればよいと考えますので、服装等の生徒指導にエネルギーを使うよりは、個々の生徒の内に心を寄せたいと考えます。
以前、朝、登校してきた生徒に、服装指導を毎日毎日……。そのうち、怒って去っていく子の背中を見ながら「私があの子にかけたかった言葉はこんなんじゃない。今の不安とか家庭の様子とか、それを案じる言葉だったはず……」と後悔したことがあります。
『いつから指導方針を変えるか』よりは『その指導方針は適切なのか』を、職員で考えることができたらいいですね。その時に、子どもの立場や気持ちに寄り添って考えられる大人がたくさんいればいいなと思います。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。