理科授業で端末を使うタイミングをつかむ 【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

1人1台端末の活用が、日常化されつつあります。理科の授業でも「実験の様子を撮影する」「植物の成長の記録を保存する」など様々な場面で活用されています。ところで、理科の授業で、端末を使うタイミングにおいて気を付けることはどのようなことでしょう? また、「端末を使う」「使わない」を決めるのは誰なのでしょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/北海道公立小学校教諭・加藤久貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1.調べ方は人それぞれ

6年の「人の体のつくりと働きの学習」では、体のつくりと呼吸、消化、排出及び循環の働きに着目して生命を維持する働きを多面的に調べます。このとき、先生はよく調べる手段を特定のサイトに限定してしまいがちです。そのような指導だと調べた内容がほとんど同じになってしまい、その後、協働的にまとめる場面で深まりが見られなくなってしまいます。そこで、調べる手段について1つに限定せず、複数のサイトを活用してはいかがでしょうか。

たしかに、インターネット検索を活用すると小学校の学習指導要領を超えた内容が出てきてしまい、学習のねらいが達成されないこともあります。そこで、先生のほうで事前に、調べ学習に活用できるサイトを探してリストアップしておき、児童の求めに応じてサイト情報を提供する、などの工夫をしてみてはいかがでしょうか。また、端末を活用させることにこだわる必要はありません。学校図書館には有効活用できる図書がそろっていますので、蔵書の事前リサーチも、ぜひしておきましょう。このように、たくさんの情報の中から、自分の目的に合うものを選んで調べられるようにしてあげるとよいでしょう。そのようにすることで、互いの情報を持ち寄りながら、学びを深めることにつながります。

また、子どもが自分で選択した手段では、調べたい内容が十分に見つけられないこともあると思います。その際は、ぜひ適切な助言を与え、調べる手段の変更を認めてあげましょう。

2.活用するタイミングも人それぞれ

「それでは、机の中から端末を出しましょう」などと、毎回、端末を活用するタイミングをパターン化していないでしょうか。端末は、児童一人一人の考え方に合わせて活用できる機器のはずです。理科においては、インターネットによる検索はもちろん、観察・実験の結果を記録したり、過去の学びを確認したり、言葉では説明しにくいものを図や絵にして表したりと、たくさんの活用方法が考えられます。

私たちが仕事中に何か調べたいことがあったら、パソコンやスマートフォンで調べるのと同じです。調べたいことができるタイミングは子どもによっても違うはずです。端末を文房具の一つとして捉え、国語辞典などと同じように自由なタイミングで活用してもよいのではないでしょうか。

しかしながら、この方法には注意が必要です。結果的に放任になってしまう可能性があることです。児童に活用を委ねるとき、自分自身で学習を進めることが難しい児童への配慮を怠ってしまうと、その時間の学びが極端に少ないものとなってしまいます。

さらに、理科専科の先生においては、なかなか一人一人の子どもの実態を把握することは難しいかもしれません。そのような場合には、理科の学習における端末活用の原則的なルールを設定するのもよいかもしれません。

3.子どもたちから「端末を活用したい」という提案があることも

端末の活用が進んでくると、子どもたちから「それなら端末を活用したい」という声が上がってくるはずです。例えば、4年の「金属、水、空気と温度」の学習では、水を温めた時の温度を計測し、グラフに表します。子供たちがすでに、算数で折れ線グラフの作成方法を端末を使って学んでいた場合、子どもたちから「算数のように端末でグラフを作成したい」という声が上がることでしょう。

また、その逆もあります。「それなら端末よりもノートの方がいいです」という声も聞かれるようになるでしょう。端末の活用に習熟すればするほど、子どもは、端末活用のメリットやデメリットを自分で把握でき、より効果的に活用できるようになります。ですから、先生は、学習のねらいを軸に子どもの活用への意欲をサポートすることが大切です。

いかがでしたか。いずれの場合も、端末の活用が進むにつれて、活用のタイミングを主体的に選択できるようになります。先生は、学習の効果や子どもの実態を把握しながら、選択させてはいかがでしょうか。

イラスト/難波孝

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<執筆者プロフィール>
加藤久貴●かとう・ひさき 北海道公立学校教諭/北海道教育委員会の学力向上推進事業による授業改善推進チームとして、市内の全小学校を訪問し、ICT端末を活用した授業づくりを推進している。
共著に「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)、「これからはじめる“GIGA”全学年・全単元×1人1台端末×活用事例 小学校理科3・4年」(日本標準)等


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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