授業中の離席を減らすには?【伸びる教師 伸びない教師 第33回】

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栃木県公立小学校校長

平塚昭仁

豊富な経験によって培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載。今回のテーマは、「授業中の離席を減らすには?」です。子供たちの動きたいという欲求を先に満たしたり、活動を入れたりして、目の前の子供たちの実態に合わせて工夫するお話です。

執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県公立小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を務める。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は柔軟に指導スタイルを変え、伸びない教師はひとつの指導スタイルにこだわる

動きたいという欲求を満たす

以前、2年生を担任したときのことです。となりの学級の体育も担当することになりました。その学級には、授業中に離席をしてしまう子供が何人かいて学級全体が落ち着かず、担任の教師も苦労していました。

それは体育でも同じでした。

校庭で鬼ごっこをすると、終わりの合図で笛を吹いても誰も戻ってきません。鬼ごっこを続ける子、砂場で遊ぶ子、登り棒に登る子など、みんな好き勝手なことをしています。全員をはじめの場所に戻すのに20分以上かかってしまいました。

次の時間からは、体育館で行うことにしました。しかし、授業の初めに整列し、礼をするまでの間、列から飛び出し走り出してしまう子が何人かいて、なかなか授業を始めることができませんでした。

そこで、体育館に入ったらすぐに太鼓の音に合わせてスキップ、ギャロップ、横走りなど、体育館の中を自由に走り回らせました。続けて犬走り、くも歩きなど、動物になりきって歩かせました。その後、「動物歩きで、こっちにおいで」というと、前の時間、走り回っていた子供もすんなり集合することができました。

教室で離席してしまう子供の多くは、動きたいという欲求を抑えきれずそのような行動に走ってしまうことがあります。初めに活動をさせ、その欲求を満たしてあげると落ち着いて指示を聞けることがあります。

礼の後に活動を入れる

これは教室の授業でも同じです。

礼をしてすぐに活動を入れることで欲求を満たすことができる場合があります。活動は、リレー音読、漢字の空がき、九九の暗唱、フラッシュカードなど、子供が集中できる活動であればなんでもよいのです。

また、活動とは、体を動かすことだけでなく頭を動かすことも入ります。

国語では全員で音読した後、「教科書には、『真っ赤な顔で言いました』って書いてあるけど、声の大きさは大きかった? 小さかった? 周りの人と話し合ってみて」と、登場人物の気持ちに迫る発問をすることもあります。

もちろん、授業の初めだけでなく、集中が途切れてきたなと思ったら「自由に席を立って友達と意見を交換していいですよ」など、体を動かせる活動を取り入れることで子供たちの欲求がリセットされることがあります。

指示をひとつに絞る

体育の話に戻ります。

動物歩きで集合した後、「全員きちんと座って黙って先生のほうを見ます」という指示をしました。当時の私は、教師が話をする場面で全員が話をやめ、良い姿勢で教師を見るまでは話をしませんでした。それを徹底させることで話が聞ける学級を作ろうと思っていました。

しかし、この学級では、きちんと座っていない子を注意していると違う子がおしゃべりをしはじめ、その子を注意しているとまた違う子が……と、いたちごっこになってしまいました。

「〇〇をしなさい」と言う指示が増えれば増えるほど、離席をしてしまう子供たちにとっては指示に従うことが難しくなります。また、徹底しようとすればするほどその子供たちを注意する回数が増えていきます。結果、そうした子供たちがさらに落ち着かなくなり、その影響が学級全体に広がってしまいます。

そこで、まずは、教師の話を静かに聞かせることが先決と思い、指示を減らしてみました。

具体的には、「教師が話をするときは静かに聞く」だけに絞り、「きちんと座る」「教師を見る」についてまで求めないようにしました。また、子供たちが静かになったらすぐに話しはじめるようにし、空白の時間がないようにしました。

それでも、私が話しているときに話の内容に反応してしまいおしゃべりを始める子供がいました。そんなときは、「〇〇さんはそう考えるんだね」と受け流したり「今はその話をするときじゃないよ」と軽く注意をしたりしながら話を続けました。また、ときには「〇〇さんがこんなこと言っているけどみんなどう思う」と取り上げたり冗談で返したりすることもありました。

学級全体の子供たちがある程度静かに話を聞けるようになった段階で、「姿勢を良くしよう」「先生の方を見よう」とひとつずつできることを増やしていくようにしました。

子供の実態に合わせて少しだけ変えてみる

教師には、これまでの経験から「こうあるべき」と言う自分の信念に基づいた指導スタイルがあることと思います。

しかし、学級によって課題は様々あり、これまでの自分の指導スタイルでは通用しない場面も出てきます。そんなとき、子供の実態によって順番や方法を変えたり指示を減らしたりするなど、これまでの自分がやってきたことをちょっとだけ変えてみることが大切だと考えます。

ただ、これは自分の信念を変えるということではありません。最終的に自分の思うところに辿り着けばよいのだと考えましょう。そこまでの道筋は学級の数だけあるのかもしれません。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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