「教員特殊業務手当」とは?【知っておきたい教育用語】
2023年6月に閣議決定された「教育振興基本計画」では、専門職である教職の特殊性を踏まえ、深刻さを増している教員不足の解消、厳しい職務環境の中でもがんばっている教員が報われるような給与体系など、教員の処遇を抜本的に見直す方針が示されました。大きな制度改革の流れの中で、教員の処遇改善にも光が当たり、大きく動き出しています。一方、現在も教員の職務内容に応じた処遇の工夫が行われており、「教員特殊業務手当」はその一つです。その背景や趣旨について見ていきましょう。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

目次
教員の職務の特殊性とその処遇
教員の職務は、教科などの授業や生徒指導をはじめ、学校行事に関わるものや学校事務など、学校で行われる教育活動全般にわたっており多様です。例えば、児童生徒が下校した後であっても、本人や保護者から学校生活に関わる相談の電話が入れば、勤務時間外でも対応することも一般的には職務として行われています。時間で区切りにくい職務であることが教職の特徴の一つと言えます。
このような職務の特殊性を踏まえて、正規の職務時間を超えて仕事をした場合には、当然その対価が給与に加えて支払われなければなりません。一般的に「残業手当」といったものです。しかし、先の例のようにそれが職務であるかどうかを判断し、そこに費やした時間を管理することは容易ではないので、「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」によって、残業代や休日手当を支払わない代わりに一定の割合(4%)で給与にプラスした手当が「教職調整額」として支払われることになっています。
特殊業務の規定とその対価の保証
また、勤務時間外に行われるもので、職務の目的やかかる時間が明確で、その内容が教員の心身に負担をかけると判断される次の職務に対しては「教員特殊業務手当」が支払われることになっています。地方公務員法や自治体の条例によって支給基準と金額が定められています。例えば東京都では、「学校職員の特殊勤務手当に関する条例」で「教員特殊業務手当」について次のように定めています。
第十五条 教員特殊業務手当は、都立又は公立の学校に勤務する教育職員、実習助手又は寄宿舎指導員が、学校の管理下において行う非常災害時等の緊急業務、修学旅行等若しくは対外運動競技等の引率指導業務又は学校の管理下において行われる部活動の指導業務に従事した場合で、当該業務が心身に著しい負担を与える程度のもの(人事委員会の承認を得て教育委員会規則で定める程度のものに限る。)であるときに支給する。
東京都「学校職員の特殊勤務手当に関する条例」
つまり、「教員特殊業務手当」支給の対象となる職務は次の4つです。
・非常災害時等の緊急的な業務
・修学旅行等の指導業務
・対外運動競技等の引率指導業務
・学校の管理下で行われる部活動の指導業務
これらの職務について一定の手当が支払われるとしても、時間管理の問題や平日の部活動や休日の対外試合引率による教員の負担の問題は容易に解決しないというのが現状です。