保護者からの「いじめ」相談。どう対応する?

1学期の終盤によく学校に来る、「保護者からの相談」。それは児童間で起こったトラブルが、後を引いている場合が多いように思います。一旦解決したかに見えた問題に対して、保護者のもやもやが消えなかった場合。あるいは、ケンカだと子どもが主張する事例が、実はいじめだった…ということも多いように思います。今回は、いじめに関わる相談と、その対応について考えてみたいと思います。
【連載】タバティのLet’sスマイル(レッツスマイル) 学校づくり #05

目次
はじめに
こんにちは タバティです。いかがお過ごしですか。
7月の中旬。終業式に向けての授業のまとめや面談、通知表作成のためのデータ整理と、業務は多忙を極め、折からの暑さも手伝って職員室にはピリピリ感が漂ってきているのではないでしょうか。こんな時こそ、「笑顔」で、教職員を労ってください。あなたの笑顔がエネルギーとなり、みんなの元気に変わっていきます。
さて、この時期は、1学期の教育活動に関して、保護者、地域の方から相談事や、お叱りなんかも増えるころです。皆さんの学校はいかがですか?
「いじめ防止対策推進法」は、令和5年6月で、施行から10年目を迎えます。トラブルが起きた際、対策を練るときの法的根拠として、私はこの法律を最も活用してきました。皆さんはいかがですか?
保護者から「校長と話がしたい」
学校は集団生活の場です。様々な価値観で育った子どもたちが教室の中にいます。価値観と価値観が、時にぶつかり合うのは当たり前です。それがけんかであり、いじめであったりします。学校では丁寧に対応したつもりでも、実は腑に落ちていない子どもや、保護者がいるものです。言葉とは、時に共感を生み、時に誤解を生むものなのです。だから、人間関係というのは難しいのです。
「そんなつもりはなかったのに……」が多いのはそのためです。
1学期のトラブル対応で、「もやもや」が解消されていない保護者が学校に来るのが、ちょうどこの終業式前後から夏休み前半にかけてです。気分をスッキリさせて夏休みを過ごしたい。または、夏休みになると先生たちは、少し時間的な余裕ができるだろう、と思うからです。
保護者が、「校長と話がしたい」と電話があった場合、あなたは、どうしますか?
*次の事例は、事実に基づくフィクションです。
「学校には任せられないなぁ」
5年生女子、Aさんが欠席をします。そして、保護者から面談を希望する電話がありました。
「いいですよ。今すぐどうぞ、お待ちしていますと伝えてください」
と返すと、10分ほどして、保護者がご夫婦で来られました。
お父さん「今朝、娘が学校に行きたくないと言いました。クラスの男子2人からいじめられていると訴えています。その2人から事情を聴きたいので、会わせてください。すぐ呼んできてください」
あまりにも無謀な発言にびっくりしましたが、冷静を装いつつ、
私「いじめですか……分かりました。すぐ対応します。まず、事情を確認しますので、お時間をください」
お父さん「任せられないなあ。ニュースで見ていても、今の学校は頼りにならないよ。自分でやるから」
私「私が学校の責任者です。私が管理する学校では、私が主導権をもって進めます。まず、事情を確認します。そこからです。お待ちください」
お父さん「分かった。校長に任せる。上手くいかなかったら、その時は俺がやるからな」
最初は大変に強気なお父さんでしたが、四方山話をする中、次第に気持ちが落ち着いてきたのか、笑顔が出始めます。
そして、神妙な面持ちで会話の行く末を見守っていたお母さんの口から、
お母さん「主人が一人で行くというので、私は心配になって、ついてきました。主人はカッとなりやすい人なのです……」
との言葉が。
すぐに対処することを約束し、ご両親に引き取ってもらうと、早速動きました。
複数人で迅速に対応
- 当日の昼休みと放課後を活用して、担任と教務主任のペアで、2名の男子それぞれを個別に、事情を確認。
本来なら、まず最初に被害を訴えているAさん本人から事実関係を確認したいところですが、Aさんは欠席だったので、男子たちの確認を先にしました。
対応を終えた教務主任が即座に報告。これを、担任、教務主任、教頭、私の4名で共有します。 - 聞き取り当初、本人たちの主張は「いじめていない」。あくまでけんかだ、とのことでした。
しかし、教務主任が詳しく確認を進めたところ、しつこくからかいを続ける、明らかないじめ行為であったことが判明。これを教務主任から説諭され、男子は2名とも理解。自分たちから「謝罪します」と言ってくれました。 - 教頭が、Aさんの家庭を訪問し、経緯を説明。また、同時にAさん本人からも事情を確認しました。男子2名の気持ちを知ることで、Aさんは安堵を覚えたようです。明日から学校に行く、とのこと。
- 担任が、男子たちの2人の保護者に電話し、本件の経緯を説明しました。
- 一方の男子の保護者Bさんは、相手の家庭に謝罪します、とすんなりと受け入れてくれました。
- しかし、もう一方の男子の保護者Cさんは、
「子ども同士の謝罪でいいのではないか。保護者が出るまでではないだろう」
と受け入れる様子がありません。 - そこで、電話口の応対者を担任から教頭に交代。教頭は再度丁寧に説明したうえで、冷静になってもう一度よく考え直してほしいと、一旦電話を切りました。
- 保護者Bさんは、その日の夕方までに、被害者の家まで行って丁寧に謝罪しました。
- Aさんのお父さんから学校に入電。
「保護者Bさんからは謝罪があったのに、保護者Cさんからないのは、自分は悪くないと思っているせいではないのか。いじめが続くかも知れないので、娘は学校に出せないなあ。こちらからCさんの家に行こうか?」
と感情的になっている。 - 私から保護者Cさんに電話。Aさんのお父さんが感情的に昂ぶっていること。そして、謝罪を要求をしていることを伝え、
「本件は明らかないじめです。子ども同士の話合いだけで済むような軽い話ではありません。丁寧な対応をお願いします」
と、私から対応を説諭しました。 - 保護者Cさんはそれを漸く受け入れ、電話でA さんのお父さんに謝罪しました。
- 翌日男子2名が、登校してきたAさん本人に謝罪して、お互いの気持ちを伝え合い、仲直りができました。
しかし、子どもたちは丸く収まっても、保護者の方は、そうはいかなかったのです。