教頭のおしごと歳時記 1学期編─「校内巡視」

連載
GKC(がんばれ教頭クラブ)

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

校内巡視は、教頭職の大きな仕事の一つです。教職員からの報告を得るだけでなく、自ら情報をゲットする最大の仕事です。巡視を行う時間帯は4つありますが、その詳細についてや、巡視の際に便利なグッズ紹介、巡視から生まれるいろいろな効果などをご紹介します。ぜひ皆さんも、「攻めの管理」を目指して、前向きにいきましょう!

【連載】がんばれ教頭クラブ

1 巡視時間帯

① 出勤時・始業前

学校から一番遠い場所に住む児童が自宅を出発するくらいの時刻に、教頭は出勤していることが基本です。登校時に何らかのアクシデントが起こり、連絡を受けることがあるからです。
そして、そんな早めの時間帯に、最初の校内巡視を行います。目的は、施設管理です。特に月曜日の朝は念入りに行います。

 ガラスなどの施設設備に破損がないか
 施錠したところに異常がないか
 校内で飼育している魚類などの生物に異常がないか
 休日や夜間に体育施設を外部に貸与した場合、その施設に異常がないか
 水道の凍結など、季節的な弊害が出ていないか

などを点検していきます。
さらにシャッターや玄関、体育館の扉など、各出入り口の解錠をし、夜間のセキュリティシステムから日中のセキュリティシステムへとモードを変更します。窓を開けての換気もやりましょう。
場合によっては依頼した職員と連携します。
投石のいたずらでガラスが割れていたり、プールにゴミが投げ入れられていたりするなど、夜間に校舎が何らかの障害を受けていることは珍しくありません。安全面からも情緒面からも、こういったものを最初に児童が発見するというのはあってはならないことです。始業前の巡視は必須の仕事です。

② 中間(業間)休みまたは授業中(毎日同時刻ではなく、選択して…)

毎日同じ時間帯でなくていいのですが、中間(業間)休みや授業中にも巡視をします。これは教室訪問といった感じですね。

休み時間の巡視では、

 一人ぼっちの児童はいないか(自分から望んでいる場合はいいが、仲間はずれではないかに注意)
 どんな遊びをしているか
 誰と誰が仲がいいのか
 授業時以外の教職員と児童の関係はどうか
 休み終了後、授業開始までに帰ってきているか

また、授業中の巡視は、

 教育課程が適切に実施されているか
 授業者が適切な言動をしているか
 適切な方法で授業が運営されているか
 体育や理科などで危険なことはされてないか
 ペア学習・グループ学習で、孤立している児童はいないか

などのポイントで巡視します。

これらの時間帯では、日常の学校生活がうまく回っているか、つまり児童個々人の様子や児童対児童の関係性、児童と担任の関わり合い方などの人間関係と、学校の教育課程が適切に行われているかを見ていきます。

③ 給食中または清掃中、下校時(毎日変えて)

給食や清掃の当番活動中の児童の様子を見ます。つまり毎日同じ時刻ではなく、今日は給食、明日は掃除…と少しずつ時間を変えて、児童のいろいろな姿を見ていきましょう。

 給食配膳がうまくいっているか
 清掃をさぼらずに行っているか
 教職員が当番活動をうまく指導しているか
 児童が安全に活動をしているか
 放課後児童クラブ(学童クラブ、放課後デイサービス)などへの引き継ぎはうまくできているか

などのポイントで各学級をみていき、児童たちのいい姿を見付ければほめていきます。ちょっとした会話やふれ合いで、児童は教頭せんせいを身近に感じていきます。こうした細かな交流の積み重ねで、児童理解は一層深まることでしょう。

④ 日直巡視後、退勤前

巡視を依頼している教職員がすべて職員室に戻り、自分が退勤する前までに最終点検を行います。

 児童の座席や椅子が乱雑になっていないか
 掲示物は適切に貼られているか
 プリントが落ちていたり、ゴミが残ったりしてはいないか
 道具は然るべき保管場所に整理されているか
 施錠は確実か、入れっぱなしの電源スイッチはないか

などのポイントで進めていきます。
児童が帰った後の教室の状況から、その学級の荒れや担任の学級経営の練度を感じることができ、学級担任へのアドバイスのヒントを得ることができます。
どんなに忙しくても、どんなに時間が押していても、少なくとも1階の施錠確認だけは最低限の仕事としてしっかり実施していきたいです。

この4つの校内巡視は教頭(副校長)職として最低限の仕事です。歩数計やスマートウォッチなどを装着しながら、毎日1万歩歩く…などとサブの目標を立てると、巡視に張り合いが出ますよ。

2 巡視グッズ

以前勤務したときの校長せんせいから「教頭による巡視」のステキなアドバイスをいただきました。

毎日、巡視テーマを一つ決めるのだそうです。こんな感じです。

1 掲示物点検活動… 画鋲や画鋲はがしを持って <画鋲のはがれを直す>
 プチ清掃活動1… ぬらしたぞうきんを1枚持って <手が入っていないところを拭く>
3 プチ清掃活動2… 小ぼうき、荒神ぼうきを持って <窓サッシのゴミをとる>
4 釘打ち活動… 金槌を持って <木造の設備・施設の場合、浮いた釘を打って危険を排除する>
5 撮影活動… デジカメを持って <気づいた修繕箇所や問題点を撮影する>

わたしも巡視するときは、これらのことをアレンジして行っていました。ただし、多忙期はなかなかできないですが…。

そして必需品と言えば、もちろん懐中電灯ですね。特に冬の日没後の巡視では活躍しました。わたしは強いLED光で光が遠くまで届くものと、広い範囲を明るくできるワイドレンズがついているもの、2つ使用していました。オススメです。ぜひ良いものを買いましょう!
地方によっては塀がなかったり、塀が低かったりする学校もあり、校地に部外者が入ってきたりとか、たばこの吸い殻や空き缶、お菓子の袋などのゴミが落ちていたりすることもあります。
炭ばさみ(火ばさみ)とビニール袋を持参してそれらを拾っていきます。
校舎内外の美化にも努めたいです!

3 巡視の効用

巡視は、校舎内外の異常や変化を早めに発見し、あるいは施設や備品の利用状況から今後の故障などを予測して、危機の予防に努める重要な仕事です。手を抜くことなく確実に実行していくことが、学校をスムーズに回していく一番の近道です!
教頭(副校長)として、異常や変化を見抜く目を鍛えていきたいですね。
さらにゆとりができたら、学区内の巡視も行いたいです。
わたしは雪国在住なので、降雪時には車の中から児童の通学路の点検を実施したり、台風の朝や大雨の朝などに巡視したりしました。校区に居住する方々とお話をしながら情報をいただいたこともあります。
自然災害だけでなく、工事や交通規制など、校舎の外の環境は変わることが多く、それが児童へのリスクに転じてしまうことも珍しくありません。巡視で気がつけば、必要に応じて教職員に、自分の担当する児童の居住地区に寄ってから出勤してほしいと依頼することもできるわけです。
授業中の巡視中に、デジタルカメラで、児童のいい表情やすばらしい活動、モデルとしたい指導、すてきな掲示物などを撮影することもできます。教職員に画像を見せながらあとでメッセージを伝えることもできます。

勤務校で、体育館が雪害でかなりの被害を被りました。1年以上使えませんでした。こうなる前に、様々な異常があったのかもしれません。至らなかった点を振り返ったとき、もっと「五感」で巡視する必要性を感じました。「目で見る」だけでなく、「音を聞く」「においを嗅ぐ」「指でさわる」などをして変化を見ます。教頭(副校長)はそういった、リスク感知のセンスを問われます。
また、以前勤務した学校の校長は、学校の門のところで、児童たちと「おはよう」のあいさつを交わしたあと、「○○さん、元気がなかった」「○○さんは顔色が悪かったよ」「○○さんは来ていないなあ」と情報を伝えてくれました。その後の指導に生かすことができました。
児童の小さな変化にも気づけるセンスも、鍛えていきたいですね。
あらゆるところで、積極的に情報を収集していきましょう。

イラスト/坂齊諒一


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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