小4特別活動 学級活動編 「学級活動(3)イ ピカピカそうじ大作戦~どうしてそうじをするのかな?~」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小4特別活動の指導アイデアです。7月は、「ピカピカそうじ大作戦~どうしてそうじをするのかな?~」学級活動(3)の実践例を紹介します。
「なぜ掃除をするのか?」について、深く考えずに掃除当番だから取り組んでいるといった実態が考えられます。そこで、本事例では掃除の意義について理解し、今の自分の掃除に対する意識や取り組み方などについて振り返り、「なりたい自分」に近付くためにはどのように掃除に取り組んだらよいかについて話し合います。そして、自分で意思決定したことを実践することを通して、掃除へのやりがいや、みんなのために働くことの大切さを実感できるようにします。
執筆/沖縄県公立小学校教諭・髙野 亮
監修/文部科学省視学官・安部恭子
沖縄大学教授・黒木義成
目次
年間執筆計画
4月 学級活動全体 学級活動ってどんな時間なの?
学級活動(1) ア どうぞよろしくの会をしよう
5月 学級活動(1) ア 学級の合言葉をつくろう
6月 学級活動(1) イ 係を決めよう
7月 学級活動(3) イ ピカピカそうじ大作戦
9月 学級活動(1) ア 運動会 がんばろう会をしよう
10月 学級活動(2) エ 健康によい食事のとり方
11月 学級活動(2) イ 友達と仲よく
12月 学級活動(1) ア 3年生との交流会をしよう
1月 学級活動(2) ウ SNSの安全な使い方
2月 学級活動(3) ア 5年生に向けて
3月 学級活動(1) ア 自分たちの成長を祝う会をしよう
学級活動(3)について
学級活動「(3)一人一人のキャリア形成と自己実現」は、これまでの自分の取組などを振り返り、自分のよさやがんばりに気付くとともに、「なりたい自分」に向けて、資料や話合いをもとに、自分のよいところをさらに伸ばしたり、課題を解決したりする方法を話し合います。そして、学級で話し合ったことを参考にして、これから自分が取り組む具体的な実践目標や実践方法を意思決定します。一人一人が自分の意思決定したことを一定期間実践し、振り返ることで、児童自身が自分のよさやがんばり、成長に気付くことができるようにします。「なりたい自分の姿」を具体的にイメージできるように、上学年の姿を想起したり、ビデオメッセージなどを視聴したりするとよいでしょう。
学級活動(3)の題材は、学級活動(1)の議題の選定とは異なり、年間の指導計画に沿って行うようにします。 したがって、各学年の年間指導計画において、題材が児童の実態や発達の段階に即して系統的に設定されていることも大切です。また、毎学期や学校行事の目標設定と振り返りを学級活動(3)アで扱うと、学級活動(3)の時間数が多くなりすぎてしまうので、十分留意しましょう。本校では年間に5時間程度、学級活動(3)の授業を設定し、実践しています。
※国立教育政策研究所のHPに掲載されている「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」(小学校特別活動)では、第4学年の学級活動の年間指導計画例が掲載されているので、参考にするのもよいでしょう。
本題材のねらい
児童はこれまでの学校生活で当番活動や係活動などに取り組み、自分の仕事に責任をもつことや協力することの大切さを知っています。しかし、掃除当番だから掃除を行うなど、なぜ掃除をするのか深く考えずに取り組んでいる実態もあります。そこで、これまでの掃除の時間の取組を振り返り、「役立つ自分」や「協力するよさ」について改めて確認し、以前と比べた自分の成長に気付くようにするとともに、「学級や学校のみんなが気持ちよく生活できるようにするために掃除を行う」など、掃除の意義について理解し、「なりたい自分」に近付くためにはどのように掃除に取り組んだらよいかなどについて話し合います。学級での話合いをもとに、これから自分ががんばることを具体的に意思決定し、実践することを通して、掃除のやりがいや、みんなのために働くことの大切さを実感できるようにします。
事前の指導
①事前アンケートによる実態把握
事前に題材に関する簡単なアンケートを取り、児童の実態を把握します。本題材では、これまでの掃除の取組を振り返り、3年生の時よりも上手にできるようになったことやがんばっていることなど、自己の成長に気付くとともに、学級や学校のみんなが気持ちよく過ごせるようにするために4年生としてもっとがんばれそうなこと、協力できそうなことなど、本時の話合いに向けての準備を行います。
また、関連する場面の写真や動画を撮り、本時の話合いに生かせるようにしたり、教科の学習や学校行事などと関連を図ったりすることで、具体的な意思決定につなげるようにします。
ピカピカそうじ大作戦アンケート(例)
★事前アンケートでは、題材に対して児童がイメージしていることやがんばっていること、これまでの取組や学校生活で成長してきたことなど、ありのままの実態を把握できるようにします。
学級や児童の実態に応じて、アンケートの回答を記述式ではなく選択式にしてもよいでしょう。
★これまでの掃除の取組を振り返ったり、現状を確認したりして、自分ががんばったことや成長に気付き、掃除を通して「なりたい自分」や「自分に期待されていること」について具体的に考えるヒントにします。
※ICT端末を活用してアンケートを取り、回収や集計の効率化を図ることも考えられます。
★アンケートの結果を集計し、本時の導入で確認したり、気付いたことを学級で話し合ったりすることで、児童が題材を自分事として捉えたり、自己の課題に気付いたりできるようにし、主体的な学びを促します。
学級活動(3)の話合いを児童が主体的に行うために、教師は「予定された題材だから」ではなく、児童が「話し合いたい」「話し合う必要がある」と思えるように留意する必要があります。道徳科や学校行事、他教科との関連を図り、題材に対する児童の意識を高められるようにしましょう。
②資料、ゲストティーチャーなどを検討し、板書計画を立てる
題材のねらい(意思決定させたいことや気付かせたいこと)に合わせ、効果的な資料やゲストティーチャー、助言内容などを検討し、板書計画を立てます。動画を撮る際やゲストティーチャーを招く際は、話していただく内容や質問事項と回答について事前に打合わせを行い、児童の実態や発達の段階に即して、専門的な立場を生かした話をしていただき、児童の意欲を高めたり、よりよい解決方法につながったりすることができるようにしましょう。
本時の指導
学級活動(3)は、「つかむ(実態や現状の把握)」「さぐる(可能性への気付き)」「見つける(解決方法等の話合い)」「決める(個人目標の意思決定)」などの一連の学習過程に沿って授業を進めることを基本としています。児童が1時間の学習の流れを見通せるように、それぞれの段階で考えることや話し合うこと、最終的にどんなことを意思決定すればよいのかを、あらかじめ板書で明確にしておくとよいでしょう。
①つかむ
事前アンケートの集計結果や、これまでの各自の掃除への取組み方について振り返り、「よりよい学校生活にするために、掃除の時間に自分ががんばることを決めよう」という本時のめあてにつなげます。児童が題材を自分事として捉え、「よりよくしたい」という気持ちを高めたり、「さぐる」の段階で可能性への気付きにつなげたりできるように、がんばっていることやできる(分かる)ようになったことに焦点を当てて現状を把握するようにします。
ICT端末を活用して、アンケートを取り、アンケート結果をグラフ化して視覚的に把握しやすくしたり、否定的な回答をした児童が特定できないようにしたりすることも大切です。特に動画を活用して自分たちの実態に気付くようにする場合、個人の批判につながらないよう、十分留意します。
《教師の声かけ例》
学校では毎日掃除をがんばっていますね。この前、掃除についてアンケートを取ったけれど、覚えていますか? 結果を見てみましょう。
掃除を好きな人が結構多いね。
僕は掃除を早く終わらせて、早く遊びたい。
②さぐる
「どうして掃除をするのか」を問い、本時の本題に入っていきます。児童からは、「きれいだと気持ちがいい」「物をなくしにくい」「健康にすごせる」「下級生のお手本になる」などの発言があるでしょう。本題材で大事なのは、掃除の技能面ばかりではなく、協力や達成感などに気付かせ、「よりよい学校生活にするために、掃除の時間に自分ががんばることを決める」ことです。
しかし、児童から協力や達成感など、よりよい学級に向けた発言が出てこない場合も想定されます。そこで、動画などの資料を活用して、世の中には仕事として掃除をするプロや、業務の効率化や接客のために掃除をしている職場があること、保護者による学校環境美化作業などがあることを確認し、その人たちのコメントや思いなどから掃除の意義やよさを実感できるようにします。そして、掃除のやりがいや、どんな思いで掃除に取り組んでいるのかを知ることで、これからの自分の掃除の取組み方に生かすことができるようにします。学校内では、上級生や学校用務員の方がどのようなことを意識して掃除をしているのか聞いてみるのもよいでしょう。
学校ではなぜ毎日掃除をするのでしょうか。
掃除の時間があるから。
きれいにすると気持ちがいいから。
ゴミが散らばっていると、なんだか嫌な気持ちになります。
掃除をがんばるとどんなよいことがあるかな。
きちんと整頓されていれば、物をなくしにくいんじゃないかな。
下級生のお手本になると思う。
掃除をしてきれいになると気持ちもすっきりします。
③見つける
「さぐる」で自分たちが考える「掃除をするよさ」を共有したら、いろいろな立場の人が掃除をしていることやその方法、意識していることについての資料を確認します。本題材は(3)の内容なので、掃除の技能面よりも、掃除の意義や学級や学校のみんなのためにがんばることの大切さ、下級生からの感謝など、新しい気付きから、「みんなが気持ちよく過ごすためにできること」や「役立つ自分を実感すること」につなげられるような展開にしていきたいところです。
高学年の児童や身近な大人へのインタビュー以外にも、写真や動画など様々な資料を活用するなどの方法が考えられます。
映像などの資料から気付いたことをもとに、学級や小グループで話し合います。その際、「決める」段階での意思決定のヒントになるように、自分たちが実際に取り組めそうなことを具体的な方法について話し合うようにします。
《教師の声かけ例》
では、プロの清掃員の方など、働く大人はどのようにしているのでしょうか。
⇒ 動画などの資料を示す
学校の業務主事さんは、学校のためにどのようなことを意識して掃除をしてくださっているのでしょうか。
⇒ 動画などの資料を示す
私たちが気付かないところで、いろいろなお仕事をしてくれていたんだ。
掃除の方法以外にも大切なことを言われていたようですが……。
使う人とのことを考えたり、使っている様子を見て使いやすいように工夫したりしていると言われていました。
私たちが安全で健康に過ごせるように、いつも考えてくださっていたんだなあ。
※「みんなのために協力すること」や「役立つ自分」のよさに気付くことができるようにします。
※動画の視聴や話合いを通して、「掃除当番だから掃除をする」のではなく、学級や学校のみんなが気持ちよく過ごせるようにするために掃除をする」という、掃除の意義に気付くことができるようにします。
よりよい学校生活にするために、そうじの時間に自分ががんばることを決めよう
※4年生としてどんなことに気を付けたらよいかや、具体的に取り組むことについて学級で話し合ったことをもとに意思決定します。
④決める
「見つける」の段階で出てきた考えを生かして、一人一人が自分に合った実現可能な目標や内容を意思決定します。意思決定の際には、「なりたい自分」や「期待されている自分」に近付けるように、「4年生の(いつ)までに」や「進級までの○か月間で」といった期間を設定したり、「どんなことをどの程度」「どのように」という視点を与えたりして、具体的な目標や方法を決めることができるようにします。
意思決定できずに困っている児童がいる場合は、教師が先に例を示すことも有効です。また、具体的な数字を入れて意思決定をすると、事後の実践を振り返りやすくなり、成長の実感や目標の修正をしやすくなります。さらに、互いが意思決定したことを継続しやすくするにはどうしたらよいか、実践継続が困難な場面や状況になったとき、どのような対処方法があるかについて話し合い、考えを深めさせることで、より実践化を促すことが期待できます。
《教師の声かけ例》
今日、話し合ったことをもとに、これからの掃除の時間に自分ががんばることを決めましょう。
業務主事さんがお話ししてくれたように、掃除が終わったら全体を見渡して、明日特にしっかり掃除するところを決めて取り組みたいです。
私は、今週廊下掃除担当なので、廊下を通る人が気持ちよく歩けるように、すみや角を丁寧に掃除します。
僕は3年生や2年生のお手本として、おしゃべりしないで取り組み、自分の担当場所が終わったら、進んで声をかけて手伝います。
みんな掃除の時間の目標を決められたようだけど、1人で目標を達成できるかな。
できそうだけど、ちょっと難しいときもあるかも。
掃除だから1人ががんばってもだめじゃないかな。
前に自分でめあてを決めたときに、友達に励ましてもらったら最後までがんばれたよ。
そうだね。みんなが責任をもって掃除することはもちろん大事だけれど、互いに励まし合ったり、声をかけ合ったりすると、もっとがんばれそうですね。
《本時のワークシート例》
ワークシートには、
①題材
②本時のめあて
③本時の学習で気付いたことや思ったこと
④意思決定した目標や内容
⑤実践の振り返り
など、題材に合わせて、実践に向けて重要だと思われる項目を設定します。必要に応じて③をカットするなど、記述する項目を精選し、話合いの時間を確保することで、話合いが深まり、新たな気付きやよりよい意思決定につながることが期待できます。
※児童の振り返りだけでなく、教師や家の人からのメッセージの欄を加え、努力や成果を認めることで、実践意欲が継続したり、自己効力感が高まったりします。
児童の家庭環境や取り巻く状況はいろいろなので、家の人から書いていただくことが難しい児童もいます。そうした場合は、「先生から」とし、児童がつらい気持ちになるようなことがないようにしましょう。
事後の指導
児童が意思決定したことを自主的、継続的に実践できるように、教師は児童の実践を励ましたり努力を価値付けたりしながら、1週間後や1か月後、学期末などに振り返りを行います。題材や意思決定した内容により、1週間後に一度振り返り、振り返りを生かして目標や実践方法を修正することも考えられます。実践の進捗状況を帰りの会などで学級全体で確認したり、学級活動コーナーや各自の掲示スペースに掲示したりします。目標に向かってがんばっている友達の様子を知ることで、実践意欲の維持・向上を図り、互いのよさやがんばりに気付く機会となるようにします。
学級活動(3)のポイント
学級活動(3)は、「なりたい自分」をイメージし、それに近付くためにこれからどんなことに取り組むのかを決め、実践へとつないでいく学習です。そのため、「なりたい自分」を具体的にイメージすることが重要となります。「なりたい自分」を具体的にイメージさせる手立てとして、「保護者や友達に期待されている姿」や「身近な他者の真似したいところ(参考にしたいところ)」を考えさせることが有効です。その際、6年生など上学年の児童を具体的にイメージできる近い未来の姿のモデルとすることや、実現可能な目標にすることも大事です。また、本時の学習活動を通して新たな学びや気付きがあること、これまでよりも理解が深まったことなど、児童自身の主体的な学びにつなげる視点も重要だと考えます。
本題材においては掃除に取り組む際の心理面や技能面だけではなく、「協力することのよさや大切さ」に気付いたり、「学級や学校のみんなが気持ちよく生活することができるようにするために」自分ができることを考えたりするなど、他者とのつながりを大切にしたいところです。高学年の実践では、学級での話合いや振り返りを生かして、「この実践が自分自身を成長させることにつながる」ということにも気付かせ、より主体的な活動になるように指導することが考えられます。
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106