小6国語「たのしみは」板書の技術
今回の教材は、「たのしみは」です。「たのしみは」をテーマにした短歌を作り、最終的には学級で歌会を開くという学習活動です。短歌を作るにあたり、順次進めていくなかで、自分流のノートを作る力を育てるための板書、子供の考えがひらめきやすくなる板書など、板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立学校教諭・中立裕子(せせらぎの会)
単元名 言葉を選んで、短歌を作ろう
教材名 「たのしみは」(光村図書 6年)
目次
単元の計画(全3時間)
1 「たのしみは」をテーマにした短歌を作る学習の見通しをもち、短歌を作る。
2 作った短歌の表現を工夫し、短歌を完成させる。
3 短歌を短冊に清書し、学級で歌会を開いて感想を伝え合う。
板書の基本
〇子供がノートにまとめやすい板書
6年生になると、黒板に書かれてあることだけではなく、教師や友達が口頭で話したことや自分の気付きなども書き留めて、自分流のノートを作ることができます。また、そうできる力を育てるために、黒板に書く情報量は、子供が必ずノートに書く内容や授業の流れの柱となる事柄など必要最小限にします。
チョークの色使いについても、赤チョークや黄チョークを使いすぎないようにし、教師が白チョークで書いたとしても、子供が自分で大切だと思ったら、赤鉛筆や青鉛筆でノートに書けるようにします。
子供がノートに追加して書き込みやすいように、項目ごとに余白を作って板書するようにします。
〇子供の考えがひらめきやすい板書
黒板に書くタイミングを大切にし、教師や友達の発言からだけでなく、板書からも子供の考えがひらめきやすくなるようにします。
6年生になると、教師が板書している時間や子供がノートに書く時間が多くなります。時として板書やノートに書き写すことがマンネリ化してしまいがちです。そうならないように、黒板に書いてから説明するときと、説明や質問、話し合いなどを先にした後に黒板にまとめるときとを使い分けます。
板書を利用した授業の進め方(1/3時間目)
1 めあてを提示する
日付・教材名を板書した後、本時のめあてを板書します。本時の学習では、「たのしみ」をテーマにした短歌作りをすることを知らせます。
2 教科書の2首から共通点を見付ける
最初に、教科書の2首「たのしみは妻子むつまじくうちつどい頭ならべて物をくふ時」「たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時」(橘曙覧)をカードにしたものを提示します。その短歌を音読させ、昔の言葉遣いの感覚を味わわせます。それらの短歌の内容を確認し、その後、子供は改めて板書をノートに書き写します。
子供は、いずれも「たのしみは~時」の形になっていることにすぐに気付くと思います。さらに、教科書の現代語訳を頼りにしながら、どのようなことを「たのしみ」としているか考えさせ、特別なことではなく日常生活の中の「たのしみ」を詠んでいることに気付かせ、「共通点」としてまとめます。
さらに、『独楽吟』(橘曙覧)から、もう1首「たのしみはほしかりし物銭ぶくろうちかたぶけてかひえたるとき」を紹介し、先の短歌2首の共通事項が当てはまることを理解させます。そして、教師が詠んだ和歌「たのしみは夜明けとともに湯をわかし目覚めのコーヒー味わい飲む時」を紹介します。
3 歌人について知る
板書の最初の3首が江戸時代の歌人である橘曙覧の『独楽吟』で歌われていることや、橘曙覧の生い立ちや時代背景などを指導し、橘曙覧を通して、昔の人の物の見方や感じ方に思いを馳せます。
4 自分にとっての「たのしみ」である場面を、詳しく書き出す
「たのしみは」という教材名から、自分にとってたのしいことを想起します。いくつか学級全体で出し合った後、マインドマップにして黒板に書いて見せ、書き方を確認します。その後、自分にとっての「たのしみ」について、ノートにマインドマップを書いて掘り下げていきます。
5 短歌を作る
①短歌のきまりを確かめ合う。
短歌は「五七五七七」で作られていること、促音の「っ」や、のばす音、撥音の「ん」も1音と数えることを指導します。また、「字余り」や「字足らず」になってもよいことを伝えます。この後、自分の短歌を作ります。
②短歌を作る
短歌の書き出しは「たのしみは」にします。自分の発想やひらめきを大切にして短歌を作ります。次時に推敲をすることを予告しておきます。
6 次時の見通しをもつ
本時のめあてをもとに、板書を通して学習過程を振り返ります。何気ない日常生活の中から自分なりの「たのしみ」を見付け、それを短歌に表せたことに達成感を味わわせます。そして、次時は表現を工夫して推敲し、短歌を完成させることを確かめ合います。
板書を利用した授業の進め方(2/3時間目)
1 めあてを提示する
日付・教材名を板書した後、本時のめあてを板書します。本時の学習では、前時に作った短歌を推敲し、完成させることを確かめ合います。
2 推敲の方法を知る
①教科書の例から方法を知る。
(1)教科書p.62の例を板書し、音読させます。
(2)「夜空の中に」を「夜空を見上げ」に、また、「探し出す」を「見つけ合う」にすることで、弟と2人で楽しんでいる様子がより強く伝わってくることを共有します。
(3)推敲後の短歌を黒板に清書し、子供はここまでの板書をノートに書き写します。その後、音読します。
②教師の短歌から方法を知る。
(1)教師が作った短歌を板書し、音読させます。
(2)「夜明けとともに」と「目覚めのコーヒー」を入れ替えることができることに気付かせます。
(3)「湯をわかし」を「トボトボと」という音を表す言葉にすると、様子がよりはっきり伝わってくることに気付かせます。
(4)「トボトボと」にすると、「トボトボと飲む」となり、主語と述語の関係がおかしくなってしまうことに気付かせ、例えば「入れて待つ」と言い換える必要があることを示します。
(5)推敲後の短歌を黒板に清書し、子供はここまでの板書をノートに書き写します。その後、音読します。
3 短歌を書き直す
①学習の流れを知らせる。
この後の学習の流れについて先に知らせることを告げて、黒板に注目させます。推敲が終わった後、友達と交流し、友達にしてもらったアドバイスを参考にしてもう一度推敲し、短歌を完成させることを確かめ合います。
②短歌を書き直す学習活動を予告する。
2での学習を振り返りながら「表現の工夫」を黒板にまとめ、子供はノートに書き写します。推敲の際は「表現の工夫」を参考にするように指導します。
4 友達と交流する
友達と交流する際のポイントを確かめ合います。ポイントは次の2つです。1つめは「自分が感じた「たのしみ」が伝わるか。」、2つめは「工夫した表現が効果的か。」です。友達にアドバイスしてもらった内容を、ノートに書き留めておくように指示します。
5 短歌を完成させる
友達からのアドバイスや「表現の工夫」を参考にして、自分が作った短歌をもう一度推敲し直し、短歌を完成させます。完成した短歌は、本時ではノートに書き、次時の始めに短冊へ清書することを伝えます。
6 次時の見通しをもつ。
本時のめあてを振り返ります。表現の工夫をし、さらに友達と交流してアドバイスをもらったことで、「たのしみ」がよりよく伝わる短歌が完成したことを喜び合い、子供が自分の短歌に自信をもって次時の歌会に臨めるようにします。
構成/浅原孝子