英語の学習意欲を高める方法【ぬまっち流】

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

アメリカの大学院への留学経験がある、沼田晶弘先生(ぬまっち先生)に英語(外国語)と海外文化への興味を引き出す授業についてを教えていただきました。今回は、海外文化への興味を駆り立てる、リアルで身近なネタを教材にする実践を紹介します。

パスポートと飛行機~留学のイメージ

海外と日本の文化の違いに気付き、興味を引き出す

英語の教科化に伴い、いかに時間をかけず、効果のある授業ができるのか考える、ぬまっち流英語の実践アイディア第二弾。

僕は自分のアメリカ留学時代の経験をふり返ってみても、英語を学ぶのであれば、まずその背景となる国際文化の理解がとても重要だと思っています。さまざまな国の文化の違いを知ったり、逆に海外の人から見ると、日本の文化はどのように映っているのかということに関心をもつことはとても大切です。

僕はよく自分のアメリカでの体験談を子供たちにします。単に言葉を覚えるだけでなく、教室の中を世界とつなげながら、英語を学ばせたいと思っているからです。実際に社会に起こっていることや、リアルな体験に基づいた話題に対する子供たちの食いつきのよさは半端ありません。一見雑談にも思えるようなネタでも、そこにリアリティや発見があれば有益な教材になるのです。

言葉の意味を知ることは文化を知ること

留学時代に、アメリカ人の友人が突然自分の体に、漢字の「危」という文字の入れ墨を入れてきたことがありました。彼女は漢字の意味も理解した上で、「私はデンジャラス(危険)な女だから」と彼女なりのユーモアで入れたのですが、僕にはガスタンクなど、危険物移動タンクについている「危」というマークにしか見えず、とてもおかしかったのです。彼女も、日本にはそうした標識があることを知っていれば、別な文字を選んだかもしれません。

しかし、考えてみれば、日本人も「Dog」などと書かれたTシャツを平気で着ていますよね。子供たちには、この友人の話をしながら、日本人にとって、英単語が書かれたTシャツは何でも格好よく見えるけれど、英語圏の人から見たらおかしなTシャツに思われることもあるかもね、といった話をします。

世界とつながりたいという意欲を育てる

食文化の違いのネタでは、外国人から見て、日本人がアジの活き作りを食べたり、シラスの踊り食いをしているのは相当驚きなんだよ、という話もします。日本人は魚を目の前でさばかれてもなんとも思いませんし、魚がピクピクしていると「新鮮!」と言います。しかし、もし豚を目の前でさばかれ、まだピクピク動いているうちにその肉を出されたら、食べられますか? 日本人はなぜか魚類は大丈夫なのです。

魚の生食にビックリする西洋人
イラスト/明野みる

しかし、欧米の人は、魚類も哺乳類と同じように考えるんだよ、といった話をすると、子供たちの好奇心に火が付きます。海外の文化や自国の文化に興味を持ち、その違いをもっと知りたいと思わせる。そうした興味喚起から、英語を学び、世界とつながりたいという意欲も育てられるのではないでしょうか。

「海外文化への興味を駆り立てるリアルで身近なネタを素材にしよう。」

取材・文/出浦文絵

沼田晶弘先生
沼田晶弘先生 撮影/下重修

沼田晶弘:1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学付属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。

『小五教育技術』2018年12月号より

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