英語を使わざるを得ない授業作り【ぬまっち流】

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

日本に住みながら小学生が外国人と英語でコミュニケーションをとることは、簡単なことではありません。そんな環境の中で、英語や海外文化への興味を引き出すためにはどのような外国語(英語)の授業を行えばよいのでしょうか。アメリカの教育現場も知る沼田晶弘先生(ぬまっち先生)に授業のコツを教えてもらいました。

授業風景イメージ
撮影/金川秀人

英語で伝えたいという気持ちを生み出す実践

僕はアメリカの大学院に留学した経験があります。英語はそもそも苦手でしたが、語学力を鍛えるには、伝えたいという気持ちを高めること、そして国際文化理解を深めることが大事だと痛感しました。今回は、英語で伝えたいという気持ちを育てる授業実践を紹介します。

教科横断型授業

日本の算数の教科書は優秀で、翻訳されて海外で実際に使われています。ある5年生の授業で、その英語版の教科書を全員に配り、英語で算数の授業をしたことがあります。「分数」など、難しい単語はあらかじめ翻訳して提示し、それ以外はできるだけ簡単な英単語を使って説明したり、説明させたりしたのです。

話す内容がわかると、英語も伝わりやすくなります。また、教師も子供もなんとかして英語で「授業」を進めたいという、勉強以外のところで共感し、お互いになんとか伝えよう、なんとか理解しようという意欲がMAXとなり、有意義な教科横断型授業となりました。

スカイプを使った生放送授業

いまは、インターネット回線を使えば、海外とのライブ授業が可能です。

以前、アメリカに住んでいる友人にスカイプでいきなり登場して、一方的に英語で話してもらったことがありました。何を言っているかよくわからないまま15分ほどすると、突然回線が切れてしまうという演出に、子供たちは、「謎のあの人は誰だ?」と気になってしかたない様子でした。その後も「何を言ってたんだろう」「知っている単語もあった気がする、もう一度聞きたい」そんな気持ちが高まっているなと感じました。そこで2週間後、また彼にスカイプで登場してもらったのです。

スカイプに現れた外人
イラスト/明野みる

この取り組みの一番の狙いは、「のりしろの時間」をつくること。つまり授業をあえて終わらせないのです。子供たちの中で授業はまだ終わっていないので、心の中に英語で伝えたいこと、聞いてみたいことがたくさん積み上がっていくのです。

「今日こんな人が突然出てきて、こんなことを言ってたんだけど、何言ってたのかな」と家族に話す子もいるでしょう。「あの人が言っていた単語を調べてきた」という子が現れるかもしれません。このこと自体が勉強だと思うのです。彼に興味を持ち、伝えたい、もっと知りたいと思えば、子供は自ら学びます。先生が主導してわざわざ「彼に来週は○○について聞いてみよう」と言わなくても、自分から聞くようになるのです。

英語で大事なのは、言ってみたいこと、聞いてみたいことを増やすことなのです。

「英語は、伝えたい、知りたいという気持ちを育ててから学ばせよう!」

取材・文/出浦文絵

沼田晶弘先生
沼田晶弘先生 撮影/下重修

沼田晶弘:1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学付属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。

『小五教育技術』2018年11月号より

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