版画で心の世界を表す、図画工作科の授業
これまで子供たちは、低学年や中学年で「版に表す」学びを経験してきました。それをさらに発展させた表現方法に取り組む図画工作の活動を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・岡田京子
執筆/北海道教育大学附属札幌小学校主幹教諭・中村珠世
目次
版画で「大切な心の世界」を表してみよう
「大切な心の世界」を表すという造形活動です。日常生活や思い出の場面などを思い浮かべたり振り返ったりしながら、大切にしたい「もの」や「こと」などに対して感じていることや気持ちなどを表していきます。
目標
版の表し方や構成の仕方による伝わり方の違いなどを考えながら表し方を考えたり、彫りや刷りの経験や技能を生かしながら表したいことに合わせた表し方を工夫する。
材料・用具
・版画版(シナ板)
・スチレンボード
・版画和紙
・版画インク(黒、赤、黄、青、緑)
活動の流れ
1. 大切にしたい思い出やものなどを、木版とスチレン版を組み合わせて表すことを提示します。思い出やもの(木版:黒)と、その時の心の感じ(スチレン版:カラー)を結び付けながら、自分にとっての「大切」を意味付けて表したいことを見付けましょう。
2. スチレン版とカラーインクを用いた表し方を試しながら、2種類の版による表し方を考えます。
3. 表したいことに合わせて版をつくったり、刷ったりしながら工夫して表します。
作品名「4年間は忘れられない。思い出のトランペット」
大切な思い出のトランペットを木版で刷った後、3種類のスチレン版をつくり、「そこに込めた思い」の部分を表します。
1つの版を少しずつ色を変えたり、位置を変えたりしながら繰り返し刷ることで、表したいことを効果的に表現していきます。
1年生から4年生まで使っていたトランペット。絶対に忘れないように、心のどこかに置いておけるように、トランペットを囲むような感じにしています。
作品名「ドイツでホームステイ」
赤い丸は楽しさ、うれしさを表しています。わざと違う色、違う形にしました。いろいろな楽しさ、うれしさがあったことを表しています。
作品名「うれしさとはく力のボール」
全体の構成と表したいことのつながりを意識しながら、版の置く位置をじっくりと考えました。フリーキック大会でゴールを決めた時のうれしさやボールの迫力を、色やボールに向けてスタンプを置いて表しています。
作品名「思い出を語る1匹の猫」
私の飼っている猫。体調が悪くなり、早く良くなってほしいという意味で、明るい色で囲みました。上の2匹の猫は少しずつ薄くして、思い出の中の猫を表しています。
指導のポイント
絵に表す題材では、表したいことをまず決めて表現に入る展開が一般的ですが、表し方を試行しながら考えることのできるような過程があると、表したいことやそのための表し方の工夫がいっそう明確になります。
広がる線の世界を楽しもう
~ぼく・私の「あそびば」~
針金やひごなどの線材をつなげたり組み合わせたりし、線・形の美しさやおもしろさ、構成による変化を感じたり考えたりしながら、自分の「あそびば」を工夫して表していくことがねらいです。
『教育技術 小五小六』2019年10月号より