4年生担任になったあなたへ1年間の見通し&10の戦略!
校長先生より4年生担任を命じられたあなたは、どんな担任になればよいでしょうか。
4年生は、学校のリーダーとしての高学年への橋渡し、自立して何でもやっていかなければならない学年です。学級では? 授業では? 指導にはどんなコツがあるのでしょうか。どんな心構えを身に付けさせることが必要でしょうか。
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
学習指導・生徒指導編
1 学習を俯瞰する
担任を拝命したら、4年生で指導する内容を見ていきましょう。4年生の特徴として真っ先に挙げられるのが、前学年までと比べて抽象的な内容の学習が多い、ということです。
また4年生では、一段と見通しをもって学習することに重点を置き、本時の前後の学習との関連を密接にとるようになっていきます。3年生までも学習の見通しをたてて取り組むことはありましたが、1時間の授業をしっかりやろう、という方に重きが置かれていました。
4月はじめは、まず教科書を配付したら、担任のリードでざっと各教科の内容を見通してみることです。
そして、各教科ではどんなことを学ぶのか、どんな視点で学ぶのかを学習に入る前に教科書全体を見通し、児童とともに学習計画を立てていきたいです。
もちろん、学習の途中で児童に新たな問いや課題意識が出てきたら、それらを取り入れていっても良いわけです。まずは、学習を俯瞰することが大切です。
2 積み上げ、振り返りを生かす
4年生の学習では、前時で学習したことを取り入れて学習問題に取り組み、学習課題を解決していく学習が必要です。つまり、積み上げていくことが大切です。
前時の授業の終わりに書いてもらった「振り返り」から、児童の課題意識や問いを最初に紹介することもいいですね。社会科や理科、総合的な学習の時間では特に有効です。
また算数を例にすると、画用紙などに前時で学習した1時間の流れや結論などをまとめておき、掲示資料にしてみましょう。その掲示をもとに、本時の学習課題に取り組ませるという流れも良いです。
この方法はちょっと手間がかかりますが、画用紙1枚くらいへのまとめは、さほど時間がかかりません。かかった手間以上に、効果抜群です。
ほかの教科でも児童のノートに記載された「振り返り」だけではなかなかはっきりしないことも、授業者がシートにまとめておくことで、より便利に使えるようになります。
また、この振り返りをタブレットで記入させておく習慣をつけさせて、都度都度ロイロノートやGoogle Classroomなどでクラス全員が共有するのも良いでしょう。友だちがどんなことを考えているかを知ることで、一層学びに深みが出てきます。
3 品のある? 公的な会話の仕方を身に付けさせる
低学年のうちは、単語トークで、「せんせい、トイレ」「給食、おかわり」「はい、これ」などという語が飛び交っています。
3年生くらいでだいぶ、公的な場所での公的な言葉づかいが身に付いてきていますが、4年生ではそれを完成形にしたいです。
モデルの会話を示して、時にはやり直させ、できたら「すてきな言葉だね」とほめる。それくらい手間をかけて身につけさせたいです。
「せんせい、トイレに行ってきます」『はい、どうぞ』
「スープのおかわりをください」『はい、どうぞ』「ありがとうございます」
「うちからのお手紙です。お願いします」『分かりました。受け取りました』
こういった指導を繰り返し、小さなコミュニティとしての学級集団の質を高めていきたいですね。
4 伝える力を伸ばす
4年生では、学んだことや練習したことの発表が、全体からだいぶ個に移行してきます。
個人による発表の機会が増えるということです。
コロナ感染がだいぶおさまってきて、思い切った対話のある学習が組めるようになってきました。このチャンスを生かしていきたいです。
外国語活動(英語)では、スモールトーク、チャンツなどがたくさん出てきます。これらを適宜配置し、対話する機会、友だちと接する機会を多くしてみましょう。
また、学習しまとめたことを話す機会、発表の機会を多く設けて相手に伝えていく力をもたせたいです。
表現には制限を設けず、のびのびとやらせて良いと思います。例えば学校には、学習した漢字だけしか使っていけないという謎のルール(?)がありますが、国語の単元で出てきた漢字だけにとどまらないで、どんどん使わせてほしいです。
特に発表の掲示資料で習ってない漢字まで使うようになると、それにつられて多くの友だちが読めるようになります。
こうして伝える力を伸ばすことで、次年度の児童会活動やクラブ活動では、いっそう活躍するようになっていきます。
5 暗記ものの楽しさを味わわせる
人間はあらゆる年代で、違った才能が開花し、種類の違うものを覚えることができるそうです。
4年生は、何かと何かをくっつける総合的な暗記よりも、単発的な暗記力がぐんと伸びる年代で、学習内容と組み合わせれば、どんどん暗記ができるようになります。
社会科で言えば、自分の居住する県の市町村、そして日本全国の県名や県庁所在地などの暗記がその筆頭ではないでしょうか。
社会科イコール暗記ではないですが、覚えておけば、のちのちのさまざまな調べ学習での広がりのヒントになり、何かと何かをくっつけて新しい展開が望めます。
学級づくりや国語での取り組みとして、「○月の暗唱詩」なども素敵ですね。
小さい学校であれば、校長せんせいや教頭せんせいに暗唱を聞いていただきサインをもらう、という取り組みも可能ですね。他のせんせいに関心を持ってもらい、ほめてもらうことは意義深いです。
それが叶わない場合は、担任のスキマ時間を使って聞いてあげるようにしてほしいです。
このほか、地図記号、星座、昆虫、植物、英単語など、児童の実情に応じて計画していくと楽しいです。
させられる強制的暗記ではなく、自分でどんどん進んで暗記していけるようなしかけをつくってみたいですね。さまざまなジャンルに興味を持つようになります。
メンタル編
6 ほかの人、友のためという意識をもたせる
他の人のため、いわゆる「利他主義」を鍛えていきたいです。
そのためには、望ましくない行動を指摘することより、望ましい行動を称賛していく方向で考えていきたいです。
他の人、友達のためになるような行動をしたとき、例えばこんな方法で称賛してみましょう。
① デジタルカメラで良い行動を記録し、その内容(例「○○さんは、友だちにゆずってくれていました」)を壁新聞のようにまとめて掲示する。
② 担任が見たすばらしい行動をI(アイ)メッセージとして掲示物にまとめ、教室の入り口に貼っておく。翌朝登校した児童が、自分のことが書いてあると嬉しくなり、活動の意欲がわいてくる。
③ 帰りの会などで、「ほめほめコーナー」を設定し、友だちの良いところを発表させる。
ほかにも、道徳の時間と連携したり、学校行事の場を使ったりして「利他主義」を鍛えていきたいです。
7 ルールを工夫させる
3年生くらいまでは、一人一人の競争での勝った負けたや、それにまつわるトラブルなどが多かったと思われます。
トラブルを解決しながら、人間関係を学んでいったわけですが、4年生の発達段階になると、勝つだけではつまらない、ほかの人が楽しんでいるか、友だちを巻き込んでの楽しさを味わいたいという気持ちが出てきます。
そこで考えさせたいのは、能力の高い子にハンディキャップを与えたり、ルールを改善したりしながら、「どのようにすれば、グループや学級で、一人ひとりが平等に楽しめるか?」ということです。
体育の時間、スポーツ大会の時間、学級イベント、学校行事への取組などで、
「みんながやってよかったと思うにはどうしたらいいの?」
「自分だけが楽しむのではなく、みんなで楽しむにはどうしたらいいの?」
「足の早い人が得するだけだと、ハラハラしないよね。ルールを変えたいんだけど、どうしようか?」
といった考えさせる問いも必要です。
きっと良いプランを考え出してくれるはずです。
8 遵法精神を育てる
3、4年生は、「ギャングエイジ」と呼ばれ、小グループ化し、だいぶやんちゃな行動が目立つ時期です。時には反抗的にもなります。
でも、4年生ではだいぶおさまり、このままではいけないという意識が芽生えてきます。
そこで、世の中のルールやどのような行動が大切か考えさせていきたいです。
「なぜ、このルールがあると思う?」
「きまりを破るとどんなことになるの?」
「こういう行動をすると相手はどういう気持ちになるか話してみて」
と問いかける場を増やしていきたいです。
きまりやルールの趣旨を説明し、それを理屈で分からせる良い機会です。
すぐには改善しないかもしれませんが、手間暇をかけて「遵法精神」を鍛えていきたいです。
社会科では、自分の身近な地域社会から、市町村や県の公共制度を学んでいきます。こういった機会をとおして、いかに世の中のルールを守り、生活していくことが大切かを実感としてとらえられるようにしていきたいです。
9 異性を大切にする気持ちを養う
4年生は、総合的な学習の時間に、「福祉学習」をすることが多いです。障がいのある方を知り、生活を知り、福祉の心を養っていくことが大きな目的です。
こういった学習を通して、相手への思いやりが育っていきます。
そこで、男女差がかなり現れてくる4年生では、日常的に異性を大切にするという気持ちも育てていきたいです。
着替え時の配慮、スポーツ時の配慮、体育の授業時の配慮、リクリエーション時の配慮などが必要です。
また、文部科学省で発行している教職員向けのガイドなどを参考に、「『性同一性障害』等の児童に対するきめ細やかな対応」についても4年生あたりからサポートを厚くしていかなくてはなりません。
10 発達障がいのある児童へ対応する
4年生担任が意識しなければならない大きな仕事の一つに、発達障がいのある児童の保護者への働きかけの最終重点対応学年だということを意識することがあります。
LD、ADHD、ASDなどの特徴がある児童、さらにはHSCなどの感受性の強い児童への対応などを確実に行う必要があります。
支援が不十分なままだと、高学年での対応することはなかなか難しいと言われています。
そのため4年生では、特に該当児童の保護者さんと何度も面談を繰り返しながら、児童の困り感や学級での様子、家庭での過ごし方などの情報を共有し、何が必要かを探る努力をしていかなければならないです。
その際には、学年主任や特別支援コーディネーター、または管理職の同席を求めていきたいです。
必要に応じて、医療や関係機関との連携が必要になってきますが、適切な情報を保護者さんに伝え、できるだけ同じ歩調で児童に対していかなければなりません。
成人になって、精神的にも経済的にも自立した状態になることが目標です。
まず、その1点を目標に見据えて、今後10年間でどんな支援ができるか、本人がどんな努力が必要かなどについて、できたら保護者、本人、学校が同じ歩調で真剣に考えていく学年だと言えます。
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以上、4年生担任を拝命したときの、10の戦略を考えてみました。
全部でなくても、ぜひできるところから始めてみてください。5年生へうまくつなぐために…。
【参考図書】
『学級経営70のポイント―小学校学級担任必携〈中学年〉』(東洋館出版社)
『小四教育技術』(小学館)
イラスト/したらみ
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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。