読書指導のアイデア ⑦読み聞かせ

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本好きの子供を育てる読書指導のアイデア
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東京学芸大学附属小金井小学校司書

松岡みどり
読書指導のアイデア バナー

7回目のテーマは「読み聞かせ」です。新学期に入り、緊張感があるスタート時期に、読み聞かせを始めてはいかがでしょう。読み聞かせの時間は、リラックスできる時間となり、また、子供たち同士、子供たちと先生の距離を縮めるきっかけとなります。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。

監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり

読み聞かせ 準備~実践

1 本選び

教科での読み聞かせとは区別して、子供たちの楽しみのための読み聞かせということを意識して本を選びます。選ぶジャンルはあまり重いテーマのものよりも、明るいテーマ、楽しいテーマがよいでしょう。先生自身も読んで楽しくなるような本がおすすめです。読み聞かせの後、子供たちが「おもしろかった」という気持ちから、例えば、「今日も1日、がんばろう」とポジティブに1日を過ごせるようになるとよいですね。

1回に5分から10分程度で読み切れるものや区切りのあるものを選ぶようにします。読み聞かせが習慣付くと、子供たちから「先生、この本読んでほしい」とリクエストされることもあるので、それを取り上げてもよいでしょう。 

松岡司書のおすすめの本

『教室はまちがうところだ』

作/蒔田晋治 絵/長谷川知子 
子どもの未来社

教室で「間違えることを恐れることはない」と子供たちを励まし、間違える中で「本当のものを見付けていく」と語りかける人気の絵本。

松岡司書のおすすめの本『教室はまちがうところだ』

  

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『いいから いいから』

作/長谷川義史 
絵本館

突然やってきたカミナリの親子に「いいから いいから」ともてなすおじいちゃん。「いいから いいから」と心がほぐれる絵本。

松岡司書のおすすめの本『いいから いいから』

  

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『とん ことり』

作/筒井頼子 絵/林 明子 
福音館書店

山の見える町に引っ越してきたばかりのかなえ。不思議な郵便物をめぐって、新しい友達との出会いを描いた絵本。

松岡司書のおすすめの本『とん ことり』

  

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『はるとあき』

作/斉藤 倫、うきまる  絵/吉田尚令 
小学館

はるは、会ったことがないあきに手紙を書く。そこから始まる、はるとあきの往復書簡。忘れつつある大事なことを思い出させてくれる絵本。

松岡司書のおすすめの本『はるとあき』

  

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2 環境づくり

教室で読み聞かせをする場合、教室の中央にスペースを取って子供が床に座る、通常の授業のように子供がいすに座るなどが考えられます。また、モニターで本を見せることも可能です。そのときの状況に応じるようにしてください。

読み聞かせは1回きりではなく、定期的に実践することをおすすめします。学校生活にリズムが出てくるからです。毎週月曜日の朝の会や木曜日の帰りの会などに週1回というように、曜日や時間帯を決めておくと、子供たちが楽しみになり、心待ちにするようになります。

3 下読み

簡単な本でも、いきなり本番というのは避け、1回は声に出して下読みするようにします。読み聞かせは、基本的に子供に本を見せ、先生は横から文字を見ることになるので、先生からは文字が見えにくくなります。そのため、前もって中身を確認しておくようにします。

4 読み聞かせ

読み聞かせでは、先生は子供より少し高い位置で本を持つようにします。本の表紙をしっかり見せてから、1ページずつめくっていきます。本の下の中央部分を持って、めくる手で本を隠さないように下側からめくるようにします。

読むときには、ゆっくりと聞き取りやすい大きな声で読みます。声色を使う必要はありません。それより、話をきちんと伝えることが大切です。子供たちが本の世界に入りやすいように声でサポートするという気持ちで読み聞かせをするとよいでしょう。

読んだ後、「どうだった?」と子供たちに聞きたくなる気持ちを抑え、余韻を残すくらいの気持ちで終わるようにします。子供たちから感想などの発言があれば、聞き取るのもよいかもしれません。発言がなくても聞いた後の子供たちの心の中には、いろいろな思いが芽生えていると思います。

   



松岡みどり司書からのメッセージ
新学期は子供も先生も緊張感があるスタート時期になります。「読み聞かせ」は、リラックスできる時間、学級全員や先生と子供たちの距離を縮める時間になることでしょう。子供たちの聞く力を育むことも利点です。
私は読み聞かせの本の中に絵本を入れることをおすすめします。高学年だから難しい本、ということを考えなくてよいと思います。絵本は低学年のものと考えられがちですが、成長段階によって感じ方や考え方に変化があるので、中学年や高学年でも絵本を読むと多くの発見があります。学年が上がったから絵本は読まないというのはもったいない。どんな絵本を読んだらいいか迷ったら、ぜひ図書館で司書さんに相談してみてください。
読むときは、無理に声色を使わなくてよいのですが、先生のキャラクターを生かした読み方をしてもよいと思います。子供たちの様子を見ながら、楽しく、リラックスした状況を作り出すのが読み聞かせの時間だと思います。子供たちも先生も楽しみが増えるような読み聞かせになるとよいですね。

 

読書や本の情報が満載

ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

 

授業で使える312冊の絵本を紹介

豊かな心と思考力を育む
絵本で広がる小学校の授業づくり

著/齊藤和貴(京都女子大学教授)

司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。

B5判/112頁
ISBN9784098402212

〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)

京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。

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