学年の仕事を分担して教師のイライラ解消!
1年間分の行事や校務分掌関係などの仕事を分担しておくことで、学年集団として見通しをもって安心することができます。そのためには、春休みに1年間の予定を確認しておくのがおすすめです。今回は、松下先生が6年生の学年主任をしたとき(教師3人)の分担表の例を紹介します。
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
春休みに1年間の予定を確認し、仕事を分担する
例えば、同じ学年団において、どの先生がどの教科の学習プリントを印刷するか決めておかないと、偏ってしまうことがあります。
最初の頃は「私がやっておきます」と気持ちよく言えても、それが続くと、「私ばっかり印刷して、他の人は何もしない」と思うようになってしまいます。大きな行事が近づいてきたときなどは、特に「あなたもやって!」と思いがちです。こういったことが積み重なると、学年の雰囲気が悪くなってしまいます。
私が学年主任をするときは、一番しんどい担当を先にとるようにしています。若手の先生に先に選んでもらうと、遠慮してしんどい仕事をとってしまわれるからです。
教師3人の分担表の例
6年生の学年主任をしたとき(教師3人)の分担表の例を紹介します。
1.各教科の授業の年間計画作成 ( )
2.学年だより
(4月 )→(5月 )→(6月 )→ …
3.印刷
① テスト〈算数・社会・家庭科・答えも〉( )
② 習字〈手本・練習〉、国語読解プリント、家庭科ワークシート( )
③ 算数、社会プリント( )
4.毎月の主な会議の出席
① 集団育成部会( )
② 研究推進部会( )
③ 特別支援教育部会( )
④ 在外部会( )
⑤ 生活指導部会( )
*学年で誰かが行かないといけない土日出勤は、部に関係なく、回数を調整します。ご安心ください。
5.研究授業( )
6.学年会計( )
7.特別支援・在外関係の土日の出勤
①【●●●(5月 在外)】( )
②【ピース●●●(5月 特支・在外)】( )
③【つながりまつり(6月 特支)】( )
④【サマースクール(夏休み 特支)】(全員)
⑤【デイキャンプ(夏休み 在外)】( )
⑥【ふれあいまつり(9月 特支)】( )
⑦【●●●会わいわい祭り(10月 特支)】( )
⑧【民族交流会(10月 在外)】( )
⑨【もちつき大会(1月 特支)】( )
*上記以外にあった場合は、回数が同じになるように調整します。
8.大きな取り組みについて、会社との連絡窓口(2学期に集中するので分担)
① 修学旅行関係の連絡・調整(A )下見は1学期から連絡が必要。
② 卒業文集関係の連絡・調整(B )
③ 卒業遠足の連絡・調整(C )←下見( 月 日)
★1学期★
1.参観・懇談【4月 日( )】
教科「 」(内容 )
① 懇談は、各クラスか学年(学年の場合、場所は「 」)
懇談内容(資料を用意する)
(1)学習用具のきまり( )
(2)家庭学習の啓発( )
(3)ケータイなどネットの危険、注意事項( )
(4)早寝早起き朝ご飯関係( )
(5)6年生の成長、発達段階について、親の心構え( )
(6)1年間の行事予定( )
(7)(1)~(6)の資料印刷( )
② 参観・懇談のお知らせ教室前掲示の紙を印刷・作成( )
2.学力調査【4月 日( )】
採点(担外の先生が空き時間や、家庭訪問期間中に少しやっておく)
3.遠足【京都か検討(遠くて活動時間が短い……) 5・6年で分担 月 日( )】
① 交通機関・施設への事前の連絡調整・申し込み( )
② 交通期間・施設への当日の連絡(出欠人数の変更など)
当日、電車関係で団体通用口を開けてもらうように切符を出す( )
③ 指導計画・報告書( )
④ 会計関係(各クラス分にバス代を分ける・バスの領収書手続き)( )
⑤ 当日、先頭で引率( )
⑥ しおり作成・印刷( )
4.社会見学【昨年度は 月 日( )】→平和学習の掲示資料作成
① 交通機関や施設の連絡調整と申し込み( )
② 会計全般(春の遠足の②④)( )
③ しおり作成と印刷/指導計画・報告書( )
5.土曜参観・学年集会【 月 日( )】
教科「 」内容( )
学年集会 PTAと連絡・打ち合わせ( )
参観・懇談のお知らせ教室前掲示の紙を印刷・作成( )
6.「体験学習」(昨年度は7月)
予約、連絡調整( )
7.期末個人懇談会
「修学旅行」関係で提出してもらうプリントの説明(できたらその場で書いてもらう。プリントを渡さない子どもが多く、集まりが悪いので)
8.夏・冬休みの宿題
① 国語作成( )
② 算数作成( )
③ ①②の印刷と、それ以外(学年だより・表紙・日記など)の作成・印刷( )
④ セッター( )
⑤ ホッチキスとじ( )
*運動会の学年購入予算書提出(団演指導者が5・6年分)
★夏休み★
2学期は行事が殺到するので、夏休みにできるだけのことをしておくと準備に抜け落ちが減るし、自分にも周りにも優しいです。しかも今年度は、学習発表会があるので、夏休みの準備が超重要です。
1.「8・6平和登校」子どもが学習したものを掲示する。
*提案*
折り鶴を全て6年の子どもだけでやらせるのは無理がある。昨年度は、放課後に子どもを残してやらせたがそれでもできなかったので、教師が糸を通した。さらに今年度は学習発表会があるので、時間を作るのが昨年度より難しい。
→ ① 折ったペア学年の教師が夏休みに糸を通す。
→ ② 8・6の日に子どもに折らせている時間に同時に通していく(裁縫の経験がある5・6年の数名を各教室に派遣する)。
2.修学旅行下見【7・8月 日( )】
① 旅行会社と下見日調整(A )← 保護者説明会の日程から逆算
② これまでの年の修学旅行関係の資料用意(A )
3.修学旅行準備
① 修学旅行当日までに何をするのか、これまでの取り組みを調べる、聞く(A )
② 当日の流れの詳細案を決める(A )
③ 修学旅行当日までの準備予定表・仕事分担表を作成(A )
④ 修学旅行までの子どもへの指導計画作成(A )
⑤ 修学旅行説明会のパソコン資料作成←これまでの年ものが残っていないか確認(A以外 )
⑥ 保護者説明会の説明分担決め(A )
⑦ しおり原本作成(A以外 )
⑧ しおり印刷・セッター・ホッチキス(A以外 )
⑨ 出発式(修学旅行前の月曜朝会)での児童挨拶文作成(A )
4.卒業文集準備(B )
① 原稿締切確認(昨年度は年内だった)
② 注意事項を聞く
③ 委員会・クラブ・クラス・班などの撮影日程を調整
④ 校長・教頭への原稿依頼
⑤ 教職員への原稿依頼、ひながた用意
⑥ 各クラス担任に2学期開始時から文集づくりができるように情報や資料を渡す。
⑦ 「6年間のあゆみ」や「6年間の担任」や「教職員名」などのページ作成
⑧ アルバムに載せる2学期以降の行事の写真を選らんでおく。林間など。
⑨ 運動会や修学旅行や学習発表会など2学期の行事の写真を選ぶ。(C )
5.卒業遠足準備(C )
① 下見の日決める←保護者説明会の日程から逆算
② 去年の資料を探す
③ チケット手配、年パス確認プリントの作成印刷(2学期末の個人懇談で配布)
④ 昼食バイキング手配(下見の日にする)
6.運動会の構想を練り、指導計画を立てる。打ち合わせを済ませておく
7.学習発表会の構想を練り、指導計画を立てる。台本を作る。購入予算書を提出する
(テーマは「修学旅行、平和学習」にこだわらなくてもいいか確認。子どもの表情を見るとテーマを変えてもいいような気がする。報告は別の機会もある)
8.「地球に優しいラーメン作り(12月)」(大阪ガス)申込み( )
★2学期★
1.修学旅行説明会【10月(初め) 日( )】
↑提案:運動会準備の参観後(10月 日 土曜に設定すると親は助かる)
① パソコン・プロジェクター用意(A以外 )
配布プリント作成(A )
配布プリント印刷(A以外 )
2.運動会【10月 日(日)】
① 練習全体計画( )
② 団演指導計画・指導( )
③ 個競計画・指導( )
④ 団競計画・指導( )
⑤ 保護者むけの案内プリント作成・印刷( )
⑥ アルバム用の写真を選ぶ(C )
3.アルバム写真撮影(委員会)【10月 日】
アルバム写真撮影(クラブ)【10月 日】
撮影順番予定プリント作成・カメラ屋さんと打ち合わせ(B )
4.修学旅行【10月 日( )・ 日( )】(別紙)
・アルバム用の写真を選ぶ(C: )
5.土曜参観(お店屋さん)【11月 日( )】
6.土曜参観(学習発表会)【11月 日( )】別紙
・アルバム用の写真を選ぶ(C )
↑ 提案:この時(「5」「6」)に、「卒業遠足保護者説明会」と「修学旅行の報告(動画)」をする。(忙しい親にとっては、12月の期末懇談の1か月後にまた学校に来なくて済むので助かる。昨年度は、説明会自体も15分程度で終わった。集まったのは15人ぐらい。そのためには、下見を早めに設定する。余裕のある夏休みでもいい)
7.卒業遠足保護者説明会用意
① 配布資料作成(C )
② 配布資料印刷(C )
③ プレゼン用の画像資料用意(C )
④ 会場設営、PC・プロジェクター準備(全員)
⑤ 説明分担決め(C )
⑥ 参加者確認名簿用意(C )
*2学期後半から3学期の分担表は省略。
この分担は、小さいお子さんがいるママさん先生やパパさん先生、そして親御さんの介護等がある先生に好評でした。保育園のお迎えがあるなどで定時に退勤しないといけない先生は、打ち合わせや確認の時間がなかなかとれません。1年分の分担をすることで、放課後の貴重な時間を有効活用できたようです。
私は学年主任をすることが多くなりました。もし、割り振った担当の仕事がされていなければ、学年主任の私がするようにしています。
誰だって忘れることがあります。私も抜け落ちることがよくあります。そんなとき、まわりの先生方が気づいてそっとフォローしてくれます。だからこそ、私は相手を責めないようにしています。学年主任が忙しいときこそ笑顔でフォローするのが、学年経営の一番の秘訣だと思います。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ