ICTを使った読書指導のアイデア

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各学校に1人1台端末が行きわたり、学習のしかたや使い方の研究が様々に行われています。そのような中、東京学芸大学附属小金井小学校では、読書とICTをつないだ活動を行っています。同小学校の小池翔太教諭と西岡里奈司書教諭にICTを使った読書指導の実践アイデアをうかがいました。

監修/東京学芸大学附属小金井小学校教諭・小池翔太
   東京学芸大学附属小金井小学校司書教諭・西岡里奈

小池先生おすすめの本掲示物写真

小6国語「私と本」の導入でICTを活用

同小学校小池教諭は、国語「私と本」(光村図書)の単元導入の際に、ICT端末を活用して子供たちの本に対する意欲を高めていきました。

それは、Microsoft Teamsを使って、子供たちがそれぞれ自分の印象深かった本、おすすめの本を紹介するという活動です。子供たちはICT端末で自由に発信し、そこへのコメントも自由に行います。本を通して学級の友達と自由に話し合い、子供たちに読書への気持ちを想起し、単元につなげるようにしました。

子供たちがICT端末で自由にやり取り

子供たちは、国語の導入でICT端末を使って、自由にやり取りしました。小池先生が「印象深い本とテーマ」で投稿を募集すると、子供たちは次々に投稿しました。

ICTの先生の画面
小池先生が子供たちに送った投稿のテーマ
子供が投稿した画面1
投稿は子供たちの個性が表れる。長い文章を書く子供も見られる
子供が投稿したICT画面2
表紙を紹介した投稿
子供が投稿したICT画面3
子供たちがいろいろなコメントを寄せている



小池翔太教諭の指導のポイントと留意点
ICT端末(Microsoft Teams)でコミュニケーションする利点は、学級のだれもが同時発信および同時発言権をもつということです。例えば、積極的な子供だけが意見を言いがちになる、席の近い子たちだけの話し合いになるなどの課題を取り除き、発言の少ない子にも発言の機会がある、学級の様々な子と話すことができるようになります。
その場で話すこともできますが、「いいね」を押し合ってもよいし、コメントを書き込んでもよいので、子供の特性に合わせ、自分でコメントのしかたを選ぶことができるのです。このとき、教師はできるだけ、コメントに入ることを控え、見守るだけにしています。そうすることで、子供たちはより自分たちの世界に入ることができるからです。
今回の「本を紹介しよう」では、発信主導と考え、ICT端末を使って、思い付くままにどんどん発信することに重点を置きました。それは、子供たち全員がコミュニケーションツールとして使いこなせることをめざしているからです。今後、子供たちが社会に出たときにも、役立つようなスキルになるはずです。

「先生たちのおすすめの本」の紹介掲示物をプレゼンテーションツールでつくる

図書委員の子供たちは、読書月間の時に、先生たちのおすすめの本の紹介をプレゼンテーションツールでつくり、図書室に掲示しました。それを指導したのが、同小学校・西岡司書教諭です。

子供たちは先生たちにおすすめの本を取材して回り、文章や構成を考えて、プレゼンテーションツールを使って、掲示物をつくりました。

子供たちにプレゼンテーションツールの使い方を指導しているわけではないのですが、パソコンの中にあるプレゼンテーションツールの様々な機能を触りながら機能を見つけた子が、別の子供たちに教えるという具合にスキルが広まっていきます。

Microsoft Teamsは、共有したファイルで共同編集ができる特徴があります。例えば、作業中の紹介記事をアップしておけば、続きを別の子が作業するということができるので、苦手な子も友達がフォローしてくれ、記事が完成するのです。

子供たちがつくった「先生たちのおすすめの本」の紹介掲示物

子供たちがつくった掲示物を紹介しましょう。

掲示物全体写真
校長先生おすすめ本掲示物写真

西岡先生の写真

西岡里奈司書教諭のコメント
私は司書教諭の立場として、本の充実を考えるとともに、担任の先生方が子供の読書活動で使えるような本の橋渡しをしていくのが自分の役割だと思います。
子供たちが自分の好きな本に夢中になるだけではなく、物語や知識の本など、これからの自分に向けて、本の幅を広げてほしいと願っています。そのため、ブックトークやビブリオバトルなども積極的に取り入れています。本を間にして、人との関わりを大切にする気持ちを育んでいきたいと思います。

本の種をまく

学び方やコミュニケーションのしかたが多様化しているように、本の読み方もまた多様化しています。読書は紙の本だけでなく、電子書籍もあるため、紙の本でも電子書籍でも、子供の好きな形で本を読むのが読書に親しむ一歩ではないかと小池教諭は語ります。

同校では電子書籍サービスを導入していて、子供たちは、それぞれのICT端末で利用できるようになっています。1冊の本に人気が集中した時、電子書籍であれば同時にみんなが読めるという大きなメリットがあります。

学級文庫の写真

小池教諭は、学級文庫も充実させています。小池教諭が読んでおもしろいと思った本を学級文庫に加えると、その本を読んだ子が「数学の本、おもしろかったです」と伝えにきました。このように、「子供たちが本に興味をもつようにするには、本につながる様々な種をまいていくことが大切だと思います」と小池教諭は語ります。

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

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