小1 国語科「いいてんき」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「いいてんき」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・小野田雄介
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、挿絵を見て気付いたことや想像したことを話したり聞いたりする活動を通して、友達の話に関心をもち、言葉を使ってやりとりする力を育てていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
言語活動を設定する上で、「いいてんき」という教材の特色と身に付けたい資質・能力の関係にふれておきます。
「いいてんき」では、自然あふれる、でも少し不思議な世界に出かける先生と子供たちの楽しそうな様子が、紙面いっぱいに生き生きと描かれています。見開きで9ページにわたる挿絵が、本教材の特色です。
児童はこの挿絵を見て、様々なことに気付いたり、想像を広げたりすることが予想されます。
そこで、学級全体でそうしたことを話したり聞いたりする言語活動を設定し、「1」に記した資質・能力を育てていきます。
「いいてんき」の教材としての特色は、言語活動の特徴ともつながっています。
この言語活動は、例えば「好きな食べ物を話す」といった言語活動とは違って、挿絵という、視覚的な話題を共にしています。「好きな食べ物を話す」という言語活動でも、「1」で示した資質・能力は育めなくはないですが、挿絵を共通話題にした方が、入学したばかりの1年生には取り組みやすいでしょう。
その理由は、挿絵が多様な解釈に開かれているからです。
「いいてんき」には、実に様々な絵が描かれていますが、そのどこに着目してもよいという学習環境は、児童の学びやすさにつながります。このことは、話題の広がりを生み出し、互いの話に関心をもつことにつながるでしょう。気付きや想像をうまく言語化できない児童に対しても、「この絵で好きなところはありますか」「この子は何と言っていると思いますか」など、絵を介して、話す支援を行うことができます。
また、学級全体で行うことも、この言語活動の特徴です。
グループなどで行うことも考えられますが、初めての国語科の授業ですから、教師は、全体が見える形で対話的に学べるよう支援していくことが大切です。
そうすることによって、気付いたことや想像することを話す楽しさ、友達の話を聞くことの楽しさを実感し、本単元で身に付けたい資質・能力が育っていくでしょう。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 話したいところに丸をつける
教科書(もしくは端末)の挿絵を見て、話したいところに丸をつけるようにします。
この活動を取り入れることで、児童は主体的に話すことを考えやすくなります。
もし、たくさんの丸をつける児童が多い場合は「丸は三つまで」などと制限をかけるとよいでしょう。逆に、丸をつけられない児童がいたら、話すことがうまく見つけられないサインと捉えて、教師が個別に支援を行っていきましょう。
この丸は、話すことを考える支援にもなりますが、聞くことの支援にもなります。
全体で話す場面でも、黒板に貼った挿絵の拡大コピーに丸をつけてから話すことで、聞く側は挿絵のどの部分から考えたことを話しているか、つかみやすくなります。
そしてそのことは、「ぼくと同じようなことを話しているな」「わたしとは全然違うことを考えているんだな」などの発見を生み、対話的な学びへと展開されていくでしょう。
〈対話的な学び〉 「近いところで話したい人はいますか」と促す
全体で話す場面では、教師が、対話的に学びが進むように促していきます。
具体的には「今、話したところと近いところで話したい人はいますか」などと声をかけていきます。
こうすることで、似たような話、もしくは同じ部分から違う話をする児童が出てくるようになります。そうした話に対して「〇〇さんの話は、△△さんの話とつながっていますね」「□□さんと◇◇さんは同じ絵から違うことを考えていたのですね」などと、教師が発言間のつながりを説明していくと、児童は友達の話に関心をもちやすくなるでしょう。
各ページの挿絵にはストーリー性があるので、発言をつなげていくことで、思わぬ物語を発見するかもしれません。対話的に学ぶことで生まれる楽しさを実感することは、友達の話への関心を高めることになるでしょう。
〈深い学び〉 言葉を使わないやりとりを通して、言葉の働きに気付く
本単元は国語科の授業開きとも言えるので、言葉を学びの対象とすることを印象付けられるとよいです。
そこで、あえて教師が言葉を使わずに挿絵から考えたことを児童に伝える場面をつくってみます。
言葉が使えないので、身振りや表情で伝えることにトライしてみましょう。児童はこうした活動を楽しむでしょうが、おそらくきちんとは伝わらないはずです。
その後に、今度は言葉で話してみましょう。さっきよりもずっと伝わることを互いに実感できると思います。感じたことを話す場を設けるとよいでしょう。
言葉には話したいことを伝える力がある、といった言葉の働きへの気付きが得られると、本単元の学びも深まります。国語科の学習において、このように言葉に対して自覚的になっていくことは大切なことです。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
入学したばかりの一年生で、1人1台端末を使った授業を行うことは、技能的に難しい面がありますので、無理に使用することはありません。授業の進め方やルールについて慣れてきてから端末を導入しても十分でしょう。
もし本単元で端末を活用するとしたら、話したいことを考える場面で、端末上の「いいてんき」の挿絵に丸をつける、あるいは全体で話す場面で、ホワイトボードアプリ(Google Jamboardなど)を使用して挿絵を共同閲覧し、どの部分の話をするか丸をつける、といった活用の方法が考えられます。
しかし、いずれも教科書に丸をつける、あるいは大型テレビなどに映した挿絵に丸をつける、といった方法でも実践可能です。実態に応じて検討してみてください。
※Google Jamboardは2024年12月31日にサービス終了します。
6. 単元の展開(2時間扱い)
単元名: きづいたこと、そうぞうしたことをはなそう
【主な学習活動】
(1時、2時)
① P.0-3の挿絵を見て、気付いたことや想像したことを話したり、聞いたりする。
② P.4-8の挿絵を見て、気付いたことや想像したことを話したり、聞いたりする。
板書例と全時間の指導アイデア
国語科の授業開きです。
まだひらがなは読めない児童もいると思いますが、「いいてんき」と板書してみます。
そして「いいてんき、と聞いてどんな感じがしますか。思い出すことはありませんか」と聞いてみましょう。「いい気持ちがする」「外に遊びにいきたい」など、言葉から想像を広げる活動を導入に取り入れることで、この後の活動につなげやすくなります。
次に、教科書を使って、P.0-3の挿絵を見たり、教師の声を聞いてそれを真似て声に出してみたりします。その後、「これから絵を見て、感じたことや考えたことをお話ししてみます。皆さんは、絵のどの部分についてお話ししたいですか。話したいところに丸をつけてみましょう」と伝えます。
丸をつけているか、一人一人確認していき、丸がつけられない児童がいたら、個別に支援します。
全体で話す場面では、話す前に、どの部分の話をするか、黒板に貼った挿絵のコピーに丸をつけてから話すようにします。話を聞くときは、話している人の方を見て、どんなことを話すのかよく聞くように伝えましょう。
下のような対話的な活動を通して、互いの話に関心をもてるようにしていきます。友達の話に関連付けて話したり、「なるほど」などの反応を示しながら聞く児童の行為を価値付けていくとよいでしょう。
木の家から、ねずみさんたちがお出かけしています。
よく気が付きましたね。このねずみさんたちのことで話したい人はいますか。
リュックを背負っていて、遠足みたいです。
いい天気だから、ねずみさんたちも出かけたいのだと思います。
私も遠足に行ったことがあります。
イラスト/横井智美