心の病い 【わかる!教育ニュース#19】
先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第19回のテーマは「心の病い」です。
目次
精神疾患で休職した公立校の教員が過去最多に
「心の病い」による休職は、どの職場でも起きうる問題です。学校でも年々、深刻さが増しているようです。
2021年度に精神疾患で休職した公立校の教員が5897人に上り、過去最多になったことが、文部科学省の調査で分かりました。前年度より694人も増え、全在職者の0.64%を占めます(参照データ)。
学校種では、中学校の1415人(全体の0.61%)、高校742人(同0.42%)に対し、小学校は2937人(同0.71%)と、より厳しい状況です。
一方、個々の教員で見ると、年代では20代が1164人(全体の0.78%)、30代1617人(同0.77%)、40代1478人(同0.77%)、50代以上1638人(同0.53%)と、若い世代ほど割合が高い傾向があります。職種でも校長22人(全体の0.07%)、副校長等が99人(同0.27%)ですが、教諭等は5392人(同0.70%)。子供や保護者と接点の多い、現場の若い先生ほど、心がさいなまれるようです。
ただ休職しても、必ずしも復職するとは限りません。38.7%が休職し続け、退職も19.3%。復職できたのは41.9%にとどまりました。
「業務の質の困難化、教員間の業務量のばらつき、コロナ禍でのコミュニケーションの取りづらさ、保護者の過度な要望や苦情などが考えられる」。永岡桂子文科相は2022年12月27日の会見で背景をそう推しはかり、一人で悩みや負担を抱え込まないようにするメンタルヘルス対策を進める考えを示しました。
過労死ラインを越えて働く教員が中学校で6割、小学校で3割
教員のメンタルヘルス対策は、学校の働き方改革の流れのなかで重視されています。過労死ラインを越えて働く教員が中学校で6割、小学校で3割いたのを踏まえ、中央教育審議会で、長時間労働や学校の多忙化の改善を議論。学校が担っている業務を整理し、自治体や地域住民に振り分けたり、残業の上限を月45時間とする指針を示したりしてきました。
文科省は心身の負担軽減に向け、ストレスケアを通じた細やかなチェック、いじめや学校事故、学校への過剰な要求に対応する弁護士などの法務相談も促しています。しかし、改善に向かっているとは言えません。
事態の打開に向け、文科省は2023年度予算案に9000万円を計上し、新たな対策に乗りだそうとしています。モデルとなる学校や自治体を選定し、不調に陥る原因の分析、相談体制づくりや情報通信技術(ICT)の活用に取り組んで事例づくりを重ね、効果的な方策を探ります。
問題の根底には、「子供のためだから」という無言の圧力が陰に陽にかかり、無理な仕事や要求を抱え込むといった、学校ならではの要因も絡んでいるかもしれません。学校特有の状況にも有効な手だてを講じる必要があります。志をもって教員になったのに、教壇に立てなくなるほど心を病む人を、これ以上出してはなりません。
参照データ
▽文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20230116-mxt-syoto01-000026693_01.pdf
就学援助 【わかる!教育ニュース#20】はこちらです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子