小4 国語科「もしものときにそなえよう」板書例&全時間の指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「もしものときにそなえよう」(光村図書)の各時の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/神奈川県相模原市教育員会教職員人事課副主幹・荒木昭人

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、自分の考えを明確に伝えるために、それを支える「理由」や「事例」との関係を明確にして、書き表し方を工夫する力を育成します。

また、書いた文章を読み合い、文章に対する感想や意見を伝え合う活動を取り入れ、その中で書こうとしたことが明確に表現されているところを見つける力を育成します。文章を読み合う際には、書き終えた文章だけでなく、書く過程で作成した構成メモ等も活用し、目的が達成されたかどうかを確認するようにします。

2. 単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、一人一人が決めた災害に関するテーマについて調べ、調べたことを基に、その災害についての自分自身の考えを明確にし、文章で伝える言語活動を位置付けます。
書いた文章についてクラス全員分をまとめ、防災ブックとして学校図書館に置いて校内の児童に見てもらったり、データ化して学校ホームページで公開し、保護者を中心とした地域の人に見てもらったりするという「対象」を設定します。

自分の考えを文章で伝えるためには、自分の考えを明確にするのはもちろんのこと、それを支える理由や事例としての事実との関係を明らかにして書くことが必要になります。

また、目的や読み手を意識し、段落の相互関係に注意して文章の構成を考えることも大切です。
「はじめ」「中」「終わり」のような組み立てを意識したり、「はじめ」と「終わり」には自分の考えを書く「双括型」で書いたりする工夫等が考えられます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 ゴールの見通しをもち、文章を書く過程をスモールステップ化する。

本単元では、自然災害について調べたことを基に自分自身の考えを明確にして、「理由」や「例」とともに読み手に伝えるための文章を書くことが学習活動の中心となります。
自分が書いた文章が防災ブックの一部分になり、他の学年の児童や保護者が読む可能性があるということを意識できるように見通しをもたせることで、「この書き方で自分の考えが伝わるか」「自分の考えを伝えるためには、この理由や例が適しているのか」等について思考を巡らせることにもつながります。

また、書く活動をスモールステップ化し、自分が書いた文章を読んだり、修正したりする活動を繰り返すことで、文章を書くことが苦手な児童も文章を完成させるまでの過程で「文章が書けるようになってきた」という実感を味わえるようになります。それとともに、そのことが粘り強い取り組みにもつながることが考えられます。

〈対話的な学び〉 対話・協働を行う際に、視点や目的を明確化する。

文章を書くための情報を集める際に友達と協力したり、自分が書いた文章をよりよくするために友達と意見交換をしたりする等、単元を通して友達と協力して活動する場面を多く設定します。
自分で書いた文章を土台にしながらも、友達と協力することで新しい情報を獲得したり、内容についてアドバイスをもらい文章を改善したりする等、単元を通して「他者と協働することで自分の考えや文章の質が高まっていく」ことを実感できるような過程にしていくことが重要です。

そのためには、対話したり協働したりする際に、「どんなことに気を付ければよいか」「どんなことについて明らかにすればいいのか」等の視点や目的を明確にした上で活動を設定することが有効な手立てとなります。

〈深い学び〉 情報収集と考えを明確にして書く活動を繰り返す。

本単元では、「自然災害について自分の考えを書く」ことが中心になります。
自分の考えを書くためには、その根拠となる情報を見つけ、考えと情報を照らし合わせながら改善を繰り返していく過程が重要となります。
単元の中で、「情報を集め、それを比較したり分類したりすることを通して自分の考えを形成する」という段階や、「自分の考えを明確にするために情報を整理したり、再度収集したりする」段階があります。
また、「自分の考えを読み手にわかりやすく表現するために、どの情報を使ってどのように組み立てるか」という段階も必要となります。

つまり、「情報を集めて整理することで自分の考えを形成すること」と「自分の考えをより確かにするために情報を集めたり整理したりすること」を往還していく過程を単元の中で実現することが深い学びを実現するためのポイントとなります。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)自然災害について情報を集めたり、集めた情報を整理したりする場面での活用

【情報を集める場面での活用】
数多くの自然災害やそれに関わる情報を集めるためには、インターネットを活用した情報収集が有効です。サイトを検索するだけでなく、画像検索や動画検索等も有効に活用しながら、様々な種類の情報を集め、その中から自分にとって必要な情報を選んでいくことが重要です。

様々な検索方法で情報を集める方法が可能である一方で、自由に検索をすることで多量で多様な情報が集まり、その情報について理解したり整理したりすることが難しくなる場合があります。
その場合には、事前に教師が情報収集を行い、「おすすめのサイト」等の形で児童に提示した上で情報収集をすることも必要です。

【集めた情報を整理する場面での活用】
集めた情報を整理する際は、「オンラインホワイトボード」や「複数のサイトの情報をまとめる機能」等を活用することが考えられます。
例えば、「オンラインホワイトボード」を使って情報を整理する場合は、「インターネットで集めた情報(画像や動画のリンクを張り付ける等して)」と「図書資料等を活用して集めた情報(付箋機能等を活用して)」をまとめて、一つの画面で行うことが可能です。多様な形式で集められた情報を一覧化することで、考えを形成する際にも有効な手立てとなります。

(2)「下書き」→「読み返す」→「整える」場面での活用

文章を書く学習において、ワープロ機能等を積極的に活用しましょう。
特に、下書きを書いて読み直し、その文章を整える場面においては、1人1台端末の活用は大変有効です。

本単元において、例えば単元前半で「集めた情報」や「自分の考え」をワープロ機能等を活用してまとめておきます。学習を進めていくうちに、必要な情報が増えたり、精選されたりしていきます。
それに対応して、ワープロ機能等に記録されている「情報」や「自分の考え」も更新していくことで、「自分の考え」を新たに一から書き直すのではなく、記録してあったものに修正を加える形で、文章が洗練されていきます。
単元の前半の「自分の考え」もデータ上に残しておくことで、「更新前後の文章の比較」等が容易に行うことができ、文章がよりよくなっていく過程を実感することも可能です。

6. 単元の展開(11時間扱い)

配慮事項:単元開始前に、被災した経験のある児童や近親者が被災した児童がいないかを確認しておきましょう。それに応じて題材を変更する等の配慮が必要です。

【主な学習活動】※端末活用については、「5.1人1台端末…」の内容を関連付けています。
・第一次(1時
① 単元を通してどのような活動をするのかについて、見通しをもつ。

・第二次(2時3時4時5時6時7時8時9時
② 文章を書くにあたり、どんな「自然災害」を題材として扱うか決める。〈 端末活用(1)〉
③④ 自分が選んだ題材についてより詳しく情報を集める。〈 端末活用(1)〉
⑤ 集めた情報について、グループで協力して、比較したり整理したりする。〈 端末活用(1)〉
⑥ 集めた情報から特に気になる情報を選び、それに対して自分の考えをもつ。〈 端末活用(2)〉
⑦ 児童の困り感等を解消するために、教科書の二つの文章を比較しながら、文章の構造について見通しをもつ。
⑧ 読み手に伝えたい考えを明確にした上で、大まかな文章の構成を考える。〈 端末活用(2)〉
⑨ 前時の学習を踏まえ、構造を意識して文章を書く。

・第三次(10時11時
⑩ 同じ題材を選んだ友達と一緒に書いた文章を読み返す。
⑪ グループで文章を読み合い、視点に沿って友達に感想を伝える。

全時間の板書例、発問例・児童の発言例

【1時間目の板書例 】

■単元を通してどのような活動をするのかについて、見通しをもつ。

1時間目の板書例

〇 単元の導入では、児童が知っている自然災害について共有し、その災害がどのようなものか、どのような被害が出るのか等について想起させることから始めます。
その際は、写真や動画を活用しながら、具体的にイメージできるようにすることが重要です。
また、身近で起きる可能性のある自然災害や実際に経験したことがある自然災害についてはより詳細な情報を共有することで、書く活動に取り組むための意欲が高まります。

自然災害について共有した後、教師が書いた文章を提示します。
文章を提示することで、これから自分たちがどのような活動をするのかという見通しをもつことにつながります。最後まで書いた文章を提示するのではなく、途中まで書いた文章を提示し、「この続きはどんなことを書いたらいいと思いますか?」と問うことで、「今後どんな情報を集める必要があるか」や「文章全体はどんな構造にしたらよいか」等について、児童が主体的に考える展開も可能です。

授業のまとめとして、単元を通してどんな活動をするかを授業の終わりに提示し、見通しをもたせることが重要です。

< 教師の発問、児童の発言例 >

大雪の被害で困っている地域があるというニュースが流れていました。(実態や必要に応じて動画や画像を提示する)このような被害を自然災害ということがあります。みなさんは、どんな自然災害を知っていますか?

「大雪」と似ていますが、「大雨」も自然災害だと思います。

「地震」は自然災害だと思います。

夏に多い「台風」も自然災害です。

たくさんの「自然災害」がありますね。 そんな「自然災害」について、こんな文章を書いてみました。読んでみましょう。

C:(文章を読む)

この文章にはどんなことが書いてありますか?

自然災害の「大雨」について書いてある文章です。

「大雨」について先生の考えも書いてあります。

そうですね。これからみなさんと、「自然災害へのそなえについて考えたことを書き、読み合おう。」というめあてで学習をしていこうと思います。


【2時間目の板書例 】

■文章を書くにあたり、どんな「自然災害」を題材として扱うか決める。

2時間目の板書例

〇 第2時は、題材として扱う自然災害を決める時間です。
まず、第1時に出された自然災害を中心に、インターネットや図鑑等を活用して情報を集めます。集めた情報については、1人1台端末を活用して情報を共有することも考えられます。
情報を集めるサイトや図書資料等については、教師が精選したものをいくつか提示することで、情報を収集することが苦手な児童にとっても有効な手立てとなります。

集めた情報を共有した後は、題材として扱う自然災害を決定します。
決定する際は、「自分の考えがもてる」「その災害による被害が想像できる」等の条件を示すことで、第3時以降の活動につながる題材決定となります。

単元全体に関してもいえることですが、様々な「災害」を題材にするにあたり、被災した地域や被災者に対しての配慮が必要です。例えば、社会科や理科、道徳等の学習と関連させながら、他人事ではなく自分事として題材と向き合うことができるようにしましょう。

< 教師の発問、児童の発言例 >

今日は、文章に書く題材となる自然災害を決めます。題材を何にするか決めるためには、その題材について知っている必要がありますね。そのために、今からインターネットや図鑑等を使って、先日の授業で出てきた様々な自然災害についての情報を集めて、みんなで共有しましょう。調べる自然災害は、一つに決めなくても構いません。調べた災害については、1人1台端末を活用して情報を共有しましょう。

夏休みに、私のおじちゃんとおばあちゃんが住んでいるところの近くで「大雨」の被害があったので、そのことについて調べるよ。

日本では、「地震」や「津波」で多くの人がケガをしたり、亡くなったりしているので、ぼくはその二つについて調べるよ。

今日の授業の最後に、みんなで調べた情報を参考にして、文章に書く題材となる自然災害を決めます。決めるときは、黒板の条件をクリアできる自然災害を選べるようにしましょう。


【3・4時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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