4年生「筆算(2けたでわるわり算)」「計算のきまり(順序)」「角の大きさ」【「算数つまずき防止」ここがポイント!#5】
算数は一つつまずくと、その後の学習が進みにくくなる教科ですが、どのような授業づくりをすれば、つまずきを防止できるのでしょうか。今回は4年生「筆算(2けたでわるわり算)」「計算のきまり(順序)」「角の大きさ」の内容を、青森県鶴田町立鶴田小学校・葛西彩教諭に伺いました。
青森県鶴田町立鶴田小学校・葛西彩教諭
監修/弘前大学教授・中野博之
目次
数字を隠して商の見当のたて方を学習
まず、4年生の内容で子供たちがつまずきやすいのが、「筆算」の、2けたでわるわり算だと思います。1回で商がたてられて計算できればよいのですが、最初に見当をたてた商が大きかったときに小さくしていって調整をするのが難しいようです。そのように商の見当をつけることが難しい子供たちに対しては、私は、わられる数の一部を隠して少しずつ見せながら考えさせるようにしています。
具体例でお話をしていきましょう。本校で使っている教科書(啓林館)には、252÷36という問題があります。このときには、まず252の10の位と1の位を隠して、100の位の数だけにして、2÷36を見せるのです。そして、「2÷36はできるかな?」と問います。ただ子供たちのなかには、「2÷36はできる?」という言葉の意味理解が難しい子供もいますから、そういう場合は、「2のなかに36はあるの?」と分かりやすい言葉に置き換えて聞きます。そうやって、わり算ができるかどうかを判断させるのです。
すると、子供たちは「ありません」と言いますから、次に10の位も見せて25÷36にして、「25のなかに36はあるの?」と問います。すると「ありません」と言いますから、そこで1の位まで全部を見せて、「252のなかに36はあるの?」と問うと、「あります」と答えますから、そこに商をたてることを指導していきます。そのようにして、商をたてるための見当の付け方を指導していくのです。
ここで商の見当をたてることをクリアできれば、筆算のわり算は手順が決まっており、また桁は違いますが、3年生のときにも練習していますから、あまりつまずくことはないだろうと思います。ちなみに、この単元の最初には、70÷30とか、50÷20といった問題があります。このときに、こうした問題に多数取り組ませて、商をたてるための見当付けの基礎訓練をしておくことが大切だと思います。
計算の工夫は生活場面(お金)で考えさせる
4年生では、「計算のきまり(順序)」で、工夫して計算することを苦手とする子供も少なくないところだと思います。
例えば、82+43+57= という問題があります。これは、43+57=100 を先に計算すればよいので、あまり困る子供はいません。しかし、25×36=という問題は工夫ができない子供のいる問題です。これは、言うまでもなく25×4=100を使って、25×(4×9)=と考えて、計算すればすぐに900という答えが出せる問題です。けれども子供たちは、筆算に慣れてきているため、「筆算で普通に25×36を計算したほうが速い」と考えてしまって、工夫をする必要感を感じないことが多くあります。ただ、問題自体が「計算のきまりを使って計算しましょう」という問題であるため、やらざるを得なくてあれこれ方法を考えるという子供もいるのです。
この必要感を感じないということが問題なのです。ここで「ああ、『計算のきまり』を活用して工夫したほうが便利で簡単だな」と実感できないと、先に行って、工夫して短時間で計算しようという意識が根付かないのです。実際にこの単元の学習で例えば、102×35という問題が出てきたとしても、(100+2)×35と考えて、3500+70 という工夫がなかなか出てこないのです。やってみれば、「ああ速いな」と分かるのですが、どうしても必要感が出てこないようなのです。
そこで私は、生活場面に戻してお金で考えさせます。例えば、先の問題なら、100円玉1個と1円玉2個入った袋が35個あるというような生活場面に落とし込んでイメージさせていくのです。そうすると、生活場面ならば、袋の中の100円玉と1円玉2個を分けて、それぞれ100円が35個、1円が(2×35)個と計算するはずでしょう。そして、「100円なら100円、1000円なら1000円にまとめて計算するでしょ?」と話すのです。そのように生活場面に戻すことで、少しでも多くの子供が「計算のきまり」を使った工夫をイメージできるようにしたいと考えています。
そこで、少しイメージをできるようになったら、実際にストップウオッチを使って、筆算で計算した場合と、「計算のきまり」を使って工夫したほうとどちらが速いか計測してみることで、「ああ、こうしたほうが速いんだな」と実感をもてるようにしていくのです。
360度から小さな角をひく方法はワンホールのケーキをイメージ
それから、私の学校の教科書(啓林館)では、4年生の最初に「角の大きさ」が出てきます。ここではまず初歩的なことですが、分度器の使い方がポイントになります。単純に分度器の線を図の角に合わせることができなかったり、外側と内側と目盛りが付いているのですが、そのどちらを読めばよいか分からなくなったりする子供もいるのです。
分度器の目盛りは色分けされていますが、その色が子供の持つ分度器のメーカーによって異なる場合もあり、そのときには先のような場面での指導が混乱しやすくなります。そこで、可能ならば学級や学年で同じ分度器を揃えて用意し、それを使って練習するようにするのがよいかもしれません。そうすれば、指導がスムーズに進むでしょう。それが難しい場合には、学級全体で例えば、「内側は青、外側は黒」というように色分けの目印を付けて指導するとよいでしょう。
「角の大きさ」の学習では、子供たちは180度を超える角度の求め方を考えるとき、180度に何度かをプラスして求める方法は抵抗なく取り組めるのです。しかし、360度から小さな角度を引いて求める方法がなかなか思い浮かばない子供がいます。270度を超える角度を求めるときにも、180度に90度以上の角をたして求めている子供が多いのです。
そういった子供たちに、360度から小さな角をひく方法をイメージさせるためには、分かりやすい身近な生活場面を設定して考えさせるとよいと思います。例えば、ワンホールのケーキから1切れ分を取るとか、ピザから1切れ分を取るという場面です。そのような生活場面に置き換えて考えさせると、比較的スムーズにイメージできると思います。
そのほか分数のたし算については、指導が難しいという声もあるようですが、私のクラスではあまり困る子供はいません。やはり、前年度の分数の学習で意味理解がしっかりできていれば難しくはないのだと思います。
ちなみに私は、4年生の分数の計算の学習に入っていくときには、図を描いて、図と式と言葉の説明がつながって理解できるようにしています。ビーカーの図を描いて、同じ分母のものであれば、1つ分は同じだからたしたり、ひいたりできるんだということが押さえてあれば大丈夫だと思います。つまり、分数は1をいくつかに分けたもののいくつ分かということの理解が大切です。
それは、実は長さとか重さの学習ともつながるもので、単位が同じであればたしたりひいたりできるけれども、異なるものであれば、単位を揃えなければできないということがしっかり分かっていれば、それほど難しいものではないと思います。
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算数の学習では、どの単元においても難しさはあると思います。そのときには、いくつか実例も示しましたが、生活場面を使ってイメージしやすいものに置き換えていくとか、イメージするための方法を考えていくことが大切です。また、算数の学習は既習を基に学習が深まっていく場面が多いので、学習のノリしろを作るように、本時の学習に入る前に、1、2問でも前時の復習をしていくことが確かな学習の深まりにつながっていくのだと思います。
最後に、若い先生にはできるだけ多くの研究授業に取り組んで、どんどん授業を見てもらってほしいと思います。私自身も若手の頃に、先輩に授業を見ていただいてアドバイスしていただいたことが今、生きています。もちろんうまくいかないこともあるでしょうけれど、それが学びになり、教師としての成長につながるのだと思います。子供たちも、ときに失敗しながら対話し、学んでいくように、先生方も失敗を恐れずにどんどんチャレンジして学んでいってほしいものです。
5年生「比例」「割合」など【「算数つまずき防止」ここがポイント!#6】はこちらです。
取材/矢ノ浦勝之