「学び合える職員室」になっていますか?【赤坂真二「チーム学校」への挑戦 #32】


多様化、複雑化する学校の諸問題を解決するためには、教師一人の個別の対応ではなく、チームとしての対応が必須である。「チーム学校」を構築するために必要な学校管理職のリーダーシップとは何か? 赤坂真二先生が様々な視点から論じます。
第32回は、<「学び合える職員室」になっていますか?>です。
執筆/上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二
目次
慎重なベテラン
以前に「動かないベテラン」の話を2回にわたって書きました。新しい動きに後ろ向きな経験年数の多い教師のことです。ベテランの動きが悪いことは、確かに学校改善のブレーキになることは間違いありません。なぜならば、彼らは強い影響力を持つからです。「動かないベテラン」と書くと、さも彼らを「悪者」のように表現してしまっているわけですが、見方を変えれば、彼らは「慎重」だと言えるかもしれません。動かないベテランの中には、確かに非協力的な人もいることでしょう。しかし、中には新しい動きに対して、少し様子を見ていたり、納得するのに時間がかかっていたりする人もいるのだろうと思います。
教員向けのセミナーに出席すると気になる光景を目にすることがあります。講師である指導力のある教師に強く憧れることはいいのですが、その全てを鵜呑みにして、その教師のコピーになろうとする人がいます。カリスマの発信を妄信するわけです。完璧な指導法などあろうはずがありません。理性的な学びをする教師ならば、メリットとデメリットをわきまえながら情報を獲得しようとするはずです。それが、20代の若手の教師ならばまだしも、40代のいい年をした中堅も、そんな学び方をしていることがあります。彼らの教室はどんな姿なのでしょうか。教師が言ったことやったことは全て善で、そこにフィットできない子どもたちの居場所はあるのだろうかと勝手な心配をしてしまいます。そういう姿を見るにつけ、「動かないベテラン」ばかりが、問題があるとは思えないのです。
「慎重なベテラン」が動き出したらこんなに心強いことはありません。ベテランには長いキャリアがあるわけですから、教材に関する知識、指導法に関する技術をしっかりと持っている方が多いです。これを宝の持ち腐れにせずに活用できたら、学校としての教育力を更に活性化できるに違いありません。「慎重なベテラン」に動き出してもらうにはどうしたらいいでしょうか。
かつて私が小学校の教師だったころ、地元で開催していたセミナーに、追究の鬼を育てることで著名だった故有田和正先生をお招きしたことがあります。ベテランの問題を考える時にいつも、先生から教えていただいたお話を思い出します。