小1算数「ひきざん」(1)指導アイデア
執筆/福岡県北九州市立高槻小学校教諭・石丸こずえ
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・笠井 健一、福岡教育大学教授・清水紀宏
目次
本時のねらいと評価規準準
(本時の位置 1/ 12)
本時のねらい
10のまとまりに着目し、具体物を用いて計算の仕方を考える活動を通して、減加法を理解することができる。
評価規準
繰り下がりのある減法の計算の仕方を、10 -(1位数)という既習の計算に帰着して考えることができる。(数学的な考え方)
問題場面
ドングリが 13こ あります。ドングリを □こ つかいます。なんこ のこりますか。

※問題文の減数の部分を□にし、既習の学習内容を確認します。
2個使うと、何個残りますか。式を立ててみましょう。
13 -2です。
なぜ、ひき算なのですか(演算決定の根拠を問う)。
「残り」を、求めるからです。
計算してみましょう。
11 個です。
3個使うと、何個残りますか。
13 -3で、答えは10 個です。
9個使うとき、式はどうなりますか。
13 -9です。
できそうですか?
難しいです。3から9は引けません。
これまで、何を使って計算の仕方を考えていましたか。
数図ブロックです。
では、数図ブロックを使って、9の引き方を考えていきましょう。
本時の学習のねらい
13 -9の こたえの みつけかたを、ブロックを つかって かんがえよう。
見通し
・数図ブロックを使う(方法の見通し)。
自力解決の様子
ドングリと同じ数だけ、数図ブロックを出しましょう。ここから9個取ります。できるだけ、さっと取れるとよいですね。どこから、どのように取ったらよいのかを、考えてみてください(少し考えさせる)。
それでは、先生が「せーの」と言ったら、9個取ってもらうよ。
「せーの!」
(9個取ったら手を離させ、操作の跡が見えるようにする)
みなさん、いろいろな取り方をしていますね。 どこから、どのように9個取ったのか、説明してもらいましょう。
A:つまずいている子
引く数を、間違える。
10のまとまりからの9個だけでなく、ばらの3個も引いてしまう。
B:素朴に解いている子
1つずつ、引く。
ばらから、引く(減減法)。

C:ねらい通りに解いている子
10のまとまりから、引く(減加法)。

自力解決と学び合いのポイント
本時では、減加法を確実に習得させるための指導を提案します。学習において大切なことは、「10のまとまり」から減数である9を引くよさに気付かせることです。
この時、「どこから」「どのように」の2つを問うことが、学び合いのポイントになります。「どこから」「どのように」引いたかを問うことで、「1ずつ」「ばらの3と10のまとまりから6を」「10のまとまりから9を」というように、「9を引く場所」と「9を引く手段」を意識させながら説明させましょう。
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
9を「どこから」「どのように」取ったのか、説明してください。
(1個ずつ引いた子供)
3のばらから、1、2、3、4、5、6、7、8、9、というように、1個ずつ数えて取りました。
(減減法の子供)
3のばらを取って、次に「10のまとまり」から6個取りました。
(減加法の子供)
「10 のまとまり」から、9個を取りました。
残りは、どれも4になっていますね。それでは、説明してくれた3つの取り方をもう一度試してみて、どれが一番簡単か考えてみましょう(各自にブロック操作をさせる)。
どれが、簡単でしたか。
10 のまとまりから、9個取る取り方です。
9個をまとめて取っているので、早いです。
「まとめて」取っているところが、他の取り方よりもよいところみたいですね。これからの学習では、「10のまとまり」から引いて、答えを見つけていきましょう。
「どこから」という視点については、減数を10のまとまりから取ったか、端数から取ったかの違いを意識付けるようにします。減加法が、10のまとまり「だけ」から取っていて、その操作が簡単であることを理解させましょう。「どのように」にという視点については、1個ずつ引く方法は面倒であることや、減減法では、3個取った後、あと何個取るかを考えないといけないことに、触れるとよいでしょう。
また、黒板の提示用の数図ブロックを使って操作しようとすると、提示用のブロックが大きいことや、マグネットの強度のために、9個を一度に動かすことは意外と難しいものです。「10のまとまり」から9を一度に取るよさに気付かせるために、書画カメラ等を活用して、数図ブロックの操作を見せてもよいでしょう。
ノート例
本時のまとめ
13 -9の けいさんでは、「10のまとまり」から 9をとれば、こたえを はやく みつけることができる。
評価問題
つぎの けいさんを ブロックで しましょう。
①16 -9
② 11 -8
期待する子供の姿
減加法の計算の仕方をブロックで操作することができ、差を正しく求めている。
子供の感想例
10 のまとまりからとれば、こたえは、かんたんにでました。
ほかにも、どんどんけいさんしてみたいです。
ワンポイントアドバイス
福岡教育大学教授 清水 紀宏
第1学年で学習する繰り下がりのある減法の学習では、子供たちは10のまとまりに着目し、ブロックなどの具体物を用いた活動を通して、それまでに学習した減法や加法に帰着することを考え、説明していくことになります。
この授業は、前時の操作による減加法の理解を基にしながら、それを言葉や式による表現へと洗練させていくという提案になっています。この授業でも、いわゆる「さくらんぼの図式」や減加法の言葉による表現への形式化を急がず、ブロックの操作との関連付けを丁寧に扱っています。
全体発表では、最初から完璧な表現を取り上げ「ない」ことがポイントです。計算の一部分(10-7)を先に発表させ、その前後を補っていくことで、計算の仕方の説明を徐々に洗練させているところが素晴らしいです。
なお、この実践では、減加法に焦点化した指導となっていますが、子供の実態や先生の指導観に応じて、減減法と併存しながら学習を進めていくことも考えられます。
イラスト/佐藤雅枝
『小一教育技術』2018年12月号より