読書指導のアイデア ②ビブリオバトル

連載
本好きの子供を育てる読書指導のアイデア
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東京学芸大学附属小金井小学校司書

松岡みどり
読書指導のアイデア バナー

読書離れが進みつつある現在だからこそ、子供たちが本を好きになるきっかけが必要となります。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。2回目のテーマは「ビブリオバトル」。読書の秋に「ビブリオバトル大会」を楽しんでみませんか。子供たちが本の魅力に目をキラキラ輝かせることでしょう。

監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり

ビブリオバトルで本に興味をもたせよう

ビブリオバトルとは

ビブリオバトルとは、本を紹介し合うコミュニケーションゲームです。参加者が、自分が面白いと思った本を持って集まり、1人5分間で本を紹介します。その発表についてそれぞれ2~3分間のディスカッションを行い、最後に一番読みたくなった本を投票で決めます。票を一番多く集めた本をチャンプ本と呼びます。

コミュニケーション力を伸ばす、本に興味をもたせるなどのねらいがあります。

ビブリオバトル公式ルール
1 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
2 順番に1人5分間で本を紹介する。
3 それぞれの発表の後に、参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分間行う。
4 全ての発表が終了した後に、「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員が1人1票で行い、最多票を集めた本をチャンプ本とする。

出典:ビブリオバトル普及委員会
詳しく知りたいときは
知的書評合戦ビブリオバトル公式サイト(https://www.bibliobattle.jp/home

ビブリオバトル 準備~実践

1 本を選ぶ

自分の好きな本を1冊選ぶところからはじまります。ビブリオバトルをする場合、「好きな本を持ち寄って紹介しようね」と最初に子供たちに伝えるとよいでしょう。「自分の好きな本」というところがポイントです。小説やノンフィクション、虫、夢など、テーマを決めてもよいのですが、ノンジャンルで様々な本を選べるようにすると、選ぶ幅が広がるのでおすすめです。本を選ぶのが苦手な子には、「身体を動かすのが好き」「乗り物が好き」など、その子の好きなものや興味のあるもののジャンルから選ぶようにアドバイスすると、本を選びやすくなります。また、選ぶ本は、子供たちがすぐに借りることができる学校の図書館から探すようにすると便利です。

2 全体の構成を考える

好きな本が決まったら、次は全体の構成、シナリオを考えます。ビブリオバトルの本の紹介は5分きっかり(短くする場合は3分)と決まっていますので、短くても長くてもいけません。

漠然とイメージしておくのではなく、話すポイントを下書きしておくとよいでしょう。下書きの内容は大きく分けて、「本の情報」と「おすすめのポイント」です。

次のビブリオバトル構成シートを活用すると構成しやすいでしょう。

クリックで拡大、ダウンロードできます。

3 実践する

発表者が本を紹介する実践時には、タイマーなど時間を計れるもの、チャンプ本を決める投票用紙を用意します。

学級みんなでビブリオバトル大会をする場合、まずは、3~6人の小グループで本の紹介を3分間の短縮版で行い、次に、小グループでのチャンプ本を集めてクラスで決戦を行うという方法が、全員が複数回参加でき、ゲーム性もあっておすすめです。時間が足りないようなら2回に分けることも可能です。

発表者は、準備の段階で下書きした構成シートは見ないようにします。自分の紹介する本を持ち、生の言葉で話します。そのライブ感がビブリオバトルの醍醐味と言えるでしょう。

紹介した後は、みんなでディスカッションの時間(1~3分)を取ります。このとき、非難すること、からかうようなこと、自分の意見ばかりを言うのはNGです。発表者の本について質問し、コミュニケーションを楽しむようにします。

4 チャンプ本を決定する

発表者全員の本の紹介が終わったら、読みたくなった本の題名を投票用紙に書き、投票します。簡単に決めたい場合は、挙手や指差しでもよいでしょう。学級の状況に合わせて工夫してください。

投票する際、紹介した「人」ではなく、読みたくなった「本」で選ぶように子供たちに伝えておきます。投票用紙には、題名だけでなく、ひと言感想を加えてもよいでしょう。心が温かくなります。

決戦も同じように進めます。

5 チャンプ本を紹介する

ビブリオバトルが終わったら、学級にチャンプ本を紹介するコーナーを作り、情報発信をしてはいかがでしょう。本を手に取れると、子供たちが本に興味をもつようになります。

 



松岡みどり司書からのメッセージ
ビブリオバトルは、バトルという言葉が付いているので、勝ち負けを競うイメージをされるかもしれませんが、本を紹介し合うことでライブ感を楽しむコミュニケーションゲームです。
ビブリオバトルの面白さは、いろいろな個性をもった子供たちのコミュニケーションにあります。自分が面白いと思う本を紹介するため、その子の性格や意外な一面を知ることもできます。
また、自分一人で探していたのではなかなか出合うことのできない、本との出合いも楽しみの一つです。
子供たちがビブリオバトルをする前に、担任や司書が集まって、ビブリオバトルのデモンストレーションをすると、子供たちが「ビブリオバトルってこんなことをするのだ」とよくわかります。
私がビブリオバトルをしたときには、ビブリオバトル後、チャンプ本だけでなく、紹介された本にも貸し出しの予約が入るなど、子供たちが本を読む大きなきっかけとなりました。

 

立命館小学校「ビブリオバトル ルーブリック」
立命館小学校では、読解力を向上させるためにビブリオバトルを盛んに行っています。
同校では、「ビブリオバトル ルーブリック」を作成しています。このルーブリックは、司書教諭と子供たちとが目指す姿を共有して、見直しながら作っています。B、Cは司書教諭が設定したもので、それ以上の評価にするためにはどうすればよいか、子供たちといっしょに話し合い、Aを決定します。
ルーブリックを使うことで、話す聞くの目標が明確になります。自分たちで話し合った目標だからこそ子供たちはAになるようにがんばります。


クリックで拡大、ダウンロードできます。

 

先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/

ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」には、読書や本の様々な情報が満載。ぜひ活用してください。

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

 

授業で使える312冊の絵本を紹介

豊かな心と思考力を育む
絵本で広がる小学校の授業づくり

著/齊藤和貴(京都女子大学教授)

司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。

B5判/112頁
ISBN9784098402212

〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)

京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。

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