子ども一人ひとりと関わる時間をもつには?|アヤ&メグの新任教師お悩み相談③

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板書や指導のコツを伝授!樋口綾香の「すてきやん通信」

大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

新任教師の悩みや疑問に二人の先輩が回答!

Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 新シリーズのテーマは、「子どもの力を引き出す担任の在り方」。初任の先生の悩みや疑問をもとに、先輩教員2人が考え方や手法を提案します。答えるのは、15年目の樋口綾香先生と、11年目の竹澤萌(たけざわめぐみ)先生。具体的な問題場面に対して、担任として意識したいポイントを提示し、二人の考えを共有します。

今回は、子どもたち一人ひとりとの時間がなかなか取れない先生へのアドバイスをお届けします。

きっと、正解は一つではありません。状況によって、考えや行動は柔軟に変化させなければならないでしょう。目の前の子どもたちの力を最大限生かすための方法を、いっしょに考えていきましょう。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

今回の相談「子どもたち一人ひとりと関わる時間をもつには?」

[第3回の相談]
子どもたちといっしょに遊んだり、何気ない話をする時間がなかなか取れません。休み時間は宿題の丸付けや授業の準備があり、放課後も残さずに帰すという決まりがあります。どうすれば子どもたち一人ひとりと関わる時間をもつことができますか?

確かに、休み時間はあっという間に過ぎてしまいますよね。信頼関係を築くうえでも一人ひとりと関わることは大切であり、特に休み時間は、子どもの素の姿を見られる貴重な時間でもあります。

また、休み時間に先生と話したいという子どももたくさんいます。いつも先生が忙しそうにしていると、話したくても話せない子が出てきてしまいますから、余裕をもって過ごしたいですね。

一人ひとりの子どもと関わる時間をもつには、どうしたらいいのでしょうか。

それぞれの休み時間の過ごし方

まずは、二人の休み時間の過ごし方を比べてみましょう。

竹澤先生の休み時間の過ごし方

  • 休み時間か昼休みのどちらかは「子どもたちと関わる時間にする」と決めておく。
  • 屋内、屋外の様子をどちらもバランスよく観察し、子どもたちの交友関係を把握する。
  • 図書室やトイレなどもさりげなく観察し、小さな違和感や変化に気づけるよう、アンテナを高くもつ。

竹澤先生の休み時間のこだわり

子どもたちと遊ぶことだけが「関わる」ではないと思っています。課題チェックや教室掲示をしながら子どもたちと話すことも、一つの関わりです。

クラス遊びが週に1回の場合は、担任の私は隔週で参加していました。休み時間は、小集団形成が行われ、その変化を見守ることができる絶好の機会です。担任が毎回そこに混ざっていては、子どもたち同士でつながり、トラブル解決をする機会を奪ってしまうと考えています。

ただ、友達の輪に入るのが苦手な子がいたり、決まったメンバーが教室で過ごしたりすることもあります。そんな時には、「一緒に○○しない?」と声をかけ、最初は担任も入って子ども同士をつなぎ、次回以降は、少し離れて様子を見守るなどしています。

また、学校には教師の目が行き届きにくい場所がいくつかあります。私はそこをさりげなく訪れることで、「見ているよ」というメッセージを送り、いじめやいたずらを未然に防げるよう行動しています。

樋口先生の休み時間の過ごし方

  • 宿題の丸付け(10分程度)をしながら子どもたちと談笑。
  • 教室全体を観察。(当番活動が機能しているか、教室が過ごしやすくなっているか等)
  • 教室や廊下にいる子どもたちに一声かける。(「楽しそうだね」「何してるの?」等)

樋口先生の休み時間のこだわり

若いときは外に出てドッジボールをしたり鬼ごっこをしたり、とにかく子どもたちと楽しい時間をいっしょに過ごしたいと思って行動していました。体力にも自信があって、よく遊ぶ先生だったと思います。今は年齢的にも厳しくなってきて、上の通りです。

しかし、外でいっしょに遊ぶ時間が減っても、学級を安定させたり、子どもと関わる時間をつくったりすることは可能です。

私は普段休み時間は教室にいることが多く、中にいる子どもたちとよく話をしています。だからこそ、外で遊ぶことが多い子どもたちには、休み時間以外のときに意識的に話しかけるようにしています。

一人ひとりと関わる時間をもつための工夫

二人の休み時間の過ごし方を比べてみて、どんなことを感じますか?

それでは、一人ひとりと関わる時間をもつための工夫を竹澤先生に聞いてみましょう。

竹澤先生の工夫

まずは、子どもたちと関わる休み時間が確保できない可能性をいくつか考えてみました。

  1. 連絡帳や宿題等の返却物が山積みになっている。
  2. 授業準備をする必要がある。
  3. 委員会やクラブの集まりがある。
  4. トラブル解決をする必要がある。

今回は1の「連絡帳や宿題等の返却物が山積みになっている」という問題を中心に解決案を提案し、時間確保を目指してみようと思います。

連絡帳や宿題は、提出されているものからどんどんチェックする

宿題は、その日のうちに返せることが望ましいです。私の場合、登校したらすぐに宿題を提出させ、連絡帳も記入が終わり次第、提出してもらっています。始業時間までに出されたノート類から順次チェックし、お直しの必要があれば可能な限りそれも済ませています。ここで休み時間に見るべき量を減らしていきます。

子どもたちと対話しながらチェックできるものは、休み時間にまわす

評価するプリントやノート、テストの丸付け等の子どもたちの目に触れる提出物は、一人の空間を確保して行うようにしています。一方で、例えば音読カードやプリントのハンコ押し等は、子どもと対話しながらでも、さくさくできます。「今、チェックできるもの」に優先順位をつけるといいですね。

●宿題の量や質、丸付け方法を見直す

そもそも、一度に出す宿題や自主学習等の課題は、その日のうちに返却できる量になっていますか。私は宿題の山を作らないよう、漢字練習帳、日記、探究学習等の課題は、同時に出さないようにバランスを考えて出すようにしていました。計算ドリルやプリントの答えは、実態に応じて工夫して配付し、自分で丸付けをし、お直しまでした状態で提出してもらっています。私は丸付けが合っているか見て、ハンコ等でチェックを済ませ、その場で返却していました。

●ちょっとした工夫の積み重ねで、時間短縮を目指す

「ノートはコメントを入れて評価を転記してから次の人へ」など、労力と時間のかかるやり方で疲弊してしまっていませんか。必ずしも「丁寧な先生=いい先生」であるとは限りません。きっとどの学校にもテストや宿題返却の早い先生がいて、その方たちは何かしらの時短術をもっているはずです。どのようにして子どもと関わる時間をつくっているのか、聞いてみるとよいでしょう。

ちょこっと時短術

最後に私のちょこっと時短術を紹介して終わります。

〈ノートチェック例〉

  1. 順番に〇をつけ、コメントを入れたら評価ごとにABCの3つの山をつくる。
  2. AとCのみ評価簿に転記&特記事項を記入する。次回の授業で取り上げたり、フォローしたりできるようにする。
  3. Bはチェックだけにし、提出忘れの子どもには、その場ですぐに声をかける。

〈テスト丸付け例〉

  1. 番号順に提出させる。
    ……提出方法もいろいろなので、早く正確な方法を身に付けましょう。
  2. 片面を全部一気に丸付けしない。答えを毎回見ずに暗記できる量に丸付け範囲を制限する(半分や問題番号ごとに区切る等)。
  3. 点数は全ての丸付けが終わった後に全員分記入して、名簿に転記する。

樋口先生の工夫

子どもたち一人ひとりと関わりをもつことができる時間は、休み時間や放課後だけではありません。「信頼関係を築く」「子どもたちのよいところに気づく」ということを目的にするなら、授業中に意識して声をかけてみるのはいかがでしょうか。私は、授業中にできるだけたくさんの子どもと個別に関わり、その子の良さを引き出したいと考えています。

授業中は、いつも一斉指導をしているわけではありません。みなさんも、グループ学習やペア学習、個別学習などさまざまな学習形態を取り入れていることでしょう。

どの学習形態のときも、子どもと関わる大切な時間ですが、とくに個別学習のときには一人ひとりに声かけをしながら机間指導をするようにしています。

●机間指導で意識したいこと

机間指導とは、発問や指示のあと、子どもたちがスムーズに活動できているかを観察し、個に応じて適切な指導をすることです。一斉指導では、教師は黒板を背にして立っていることが多く、子どもの小さなつぶやきや発見に気づかないことがあります。しかし、机間指導では、子どもの様子をより近くで観察できるからこそ、“その子のよいところ”に気づくことができます。

●子どもの姿とかける言葉

学習に向かう態度
「とてもきれいな字で書けていますね」「お話を聴く姿勢がすてきですね」

思考過程
「どこからそう考えたの?」「もう2つの方法で試したのですね」

思考の広がり・深まり
「さっきよりたくさんの考えを書くことができていますね」「友達の考えも取り入れているのがいいですね」

学びを俯瞰する
「理科の学習とつながりそうですね」「自分で気になることを調べたのですね」

私は、気づいたよいところを一人ひとりに伝えるとともに、それを学級の子どもたちと共有することで、「教師―子ども」の関係から「子ども―子ども」の関係をつなぐことを意識しています。このような関係性が強くなってくると、子どもの興味関心を知りながら話ができるため、短い時間でも充足感のある話ができるようになるでしょう。


子どもと関わる時間をもつための二人の考えや方法を聞いて、どんなことを感じたでしょうか。

子どもと関わる時間を生み出すには、毎日繰り返される提出物のチェックを速やかに終わらせる工夫をしたり、休み時間だけでなく授業中も、子どもたち一人ひとりを知りたいと思う気持ちをもって声かけをしたりすることが大切なのですね。

視野を広げるとともに、子どもたちへの細やかな気配り、目配りを心がけて一人ひとりと関わるようにしていきましょう。

樋口先生が登壇されるイベントの紹介です。
2022年10月29日(土)【対面】第20回記念大会 関西国語授業研究会in大教大附属池田小〜ごんぎつね〜
2022年11月19日(土) 令和4年度 池田市立神田小学校 公開授業研究会

樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、@ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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