小3算数「計算の順序」指導アイデア《乗法の結合法則を用いた計算の工夫》

執筆/神奈川県横浜市立大綱小学校教諭・小畠政博
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、島根県立大学教授・齊藤一弥

目次
単元の展開
第1時(本時)( )を使った乗法の式の表し方。「a×b×c=a×(b×c)」
本時のねらい
乗法の結合法則を用いて計算方法を工夫することを通して、よりよいものを求め続けようとしたり、多面的に考えようとしたりすることができる。
評価規準
計算に関して成り立つ性質を使うと計算が工夫できるというよさに気付き、計算するときに活用しようとしている。
本時の展開
1こ75円のおかしが、1はこに5こずつ入っています。
どのようなことが分かりますか。
お菓子1個で75円です。1箱に5個入っています。
代金も分かります。1個75円のお菓子が、5個あるので75×5です。
75×5=375円です。
何を求めたいのかが書かれていません。1箱の代金じゃないかもしれません。
2箱かもしれないし、3箱かもしれない。
では、2箱買うとしたら、代金はいくらになりますか。
1こ75円のおかしが、1はこに5こずつ入っています。2はこ買うと、代金はいくらになりますか。
※自力解決
375×2=750 750円です。
いきなり375が出てくると分かりにくいので、75×5=375にします。それから375×2=750にして、まず、1箱がいくらになるかを求めます。次に、その二つ分で代金を求めました。
一つの式にまとめると、(75×5)×2ということですね。
僕は違う求め方をしました。75×10=750円です。
10はどこの数ですか。
お菓子の数だと思います。だって、図を見ると5×2が見えます。
これを一つの式にまとめると、75×(5×2)になります。
どちらも代金は750円になります。
どちら同じ代金になるなら、75×(5×2)のほうが簡単です。
では、どちらのほうが簡単に求められるか考えましょう。
数量の関係に着目し、計算に関して成り立つ性質を活用して計算を工夫することを通して、多面的に考えることができる。
見通し
○を使った図を用いて、75、5、2が何を表しているのか考えて式を立てればいいよ。(方法の見通し)
最初に1箱がいくらになるかを求めてからでも、お菓子の数がいくつかを求めてからでも、どちらでも代金が出せるよ。(方法の見通し)
数の関係を見ると、きりのよい10になる「5×2」を先に計算したほうが、より簡単に代金を求めることができるよ。(結果の見通し)
自力解決の様子
A つまずいている子
問題場面を把握することができず、立式できないで困っている。
B 素朴に解いている子
○を使った図を活用し、1箱の代金を求めてから、その2箱分を考えている。
C ねらい通り解いている子
数の関係に着目し、効率よく計算する方法に気付いている。
学び合いの計画
三つの数の乗法の結果である代金を求めたところで、本時の学習がスタートします。図と関連させながら、「75×5=375」「375×2=750」の式が、どのようにお菓子2箱分の代金を求めているのか明確にしていきます。
75×5=375の式は、1箱がいくらになるかを求めた計算であったことを確認し、( )を使った一つの式に表現し直します。こうすることで、( )を使って一つのまとまりと見ていた学習経験を想起させます。
一方、お菓子の数に着目した子供は、75×10という式で代金を求めています。この10の意味を問うことで、一つのまとまりとして見ることができるのは、1箱だけではなく、お菓子の数でもあることに気付かせていきます。
一つの式で75×(5×2)ということも、子供が類推し立式していくのではないでしょうか。「どちらのほうが簡単に代金を求められるか」という問いは、5と2を掛け合わせたものが10であることを明確にし、どの数を結合させていけば効率よく計算できるのか、思考する態度の育成に寄与します。
また、( )を付けた式が何を示しているのか言語化させていくことで、式を読む力の育成になり、式が場面を表現する方法の一つでもあることを子供自ら学び取っていくことにつながります。
つまり、数の関係を見て、効率よく計算しようとする態度の育成とともに、思考の筋道を表現しているものであることに気付かせ、式のよさを捉えられるようにする経験を積んでいくことを大切にします。
そのために、問題場面をすべて教師から与えるのではなく、何を求めるのかについて子供とともに確かめていくことが必要となります。子供自身が問題場面を設定することにより、問いを子供とともにつくり上げていくことができます。そして、数量関係に着目し、多面的に考えようとする態度の育成にもつなげていきましょう。
ノート例
A つまずいている子
C ねらい通りに解いている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
C1
75×(5×2)のほうが簡単です。なぜなら、九九で求めることができるからです。75×10をすれば求められます。
C2
75×(5×2)のほうが簡単です。なぜなら、5×2=10になって、その後の75×10も簡単になるからです。暗算で求めることができます。
C3
今回の場合は、75×(5×2)のほうが簡単です。でも、2箱ではなく、3箱・4箱と増えていくことを考えるなら、(75×5)を先に計算しておけば簡単になります。数によると思います。
友達の意見を聞いて、どのようなことを考えましたか。伝え合いましょう。
C1さん、C2さんの意見を聞いて、75×(5×2)は、5×2が九九で求められ、きりのよい数になるので簡単だと思いました。
C2さんのように、5と2という数と数の関係を見て、10というきりのよい数にすると、75×10はとても簡単にできます。
75×5×2という一つの式で、数の関係をよく見て、どこから計算したら簡単になるか考えることが大切だとよく分かりました。
式ができたら( )をどこに付けるのか、それが何を求めているのか、図と関連付けて考えることが大切だと思います。(5×2)はお菓子の数を最初に求めています。
( )が何を求めているのか考えないと、混乱すると思います。(75×5)は、1箱分の代金を求めています。1箱分の代金を求めて計算することもあると思います。
それは、どういうことですか。代金を求めればよいということではないということですか。
はい。いきなり375と書かれても分かりにくかったように、(75×5)としたことで、それが一つのまとまりとして見ているということだから、説明するときにも役に立ちます。
C3さんのように、3箱・4箱と求めたい数が変わっていったときには、1箱分の代金(75×5)を求めておくことは大切だと思います。375が分かっていれば、あとは、それに3や4を掛けていくだけだからです。
やっぱり、何も考えずにただ計算するのではなく、簡単に求めるにはどうしたらよいかを、数の関係をよく見てよく考えることが大事だと思いました。
75×(5×2)にすることで、75×10というきりのよい数の計算になるので、簡単に計算することができました。数と数の関係をよく見て、計算することが大切だと思いました。
評価問題
( )を使う式をつくって、計算をしましょう。
①328×2×5
②90×3×3
③7×25×4
子供に期待する解答の具体例
①328×(2×5) ②90×(3×3) ③7×(25×4)
本時の評価基準を達成した子供の具体の姿
数と数の関係を見て、九九で求められるか考えたり、きりのよい数になるようにしたりして、効率よく計算しようとしている。
感想例
計算をして答えを出すだけでなく、もっと簡単に計算できないか、もう一度考えることが大切だと思いました。数と数の関係に着目することで、いろいろな考え方ができると気付きました。
1人1台端末活用ポイント
不完全な問題場面が提示されると、子供は自分たちで完成させようとします。本実践のように、子供は既有の学習経験を想起し、自ら問題をつくることになります。
代金が分かったうえで思考を深める「問い」は、もっと効率よく計算できないかということです。これは、「数と数をよく見るときりのよい数になるから、ここをひとまとめにしたい」と考える子供の育成を図ることにつながります。
また、問題場面を完成させたのが子供なら、3箱、4箱と子供がさらに場面を変化させることができます。どのように計算していけばよいか、数と数の関係をよく捉えて考えようとどんどん学び進んでいくでしょう。
1人1台端末の活用は、自他の考えの交流を簡潔に行うことができます。ノートに書いたことを写真に撮って交流することで、キーボードの入力が苦手であっても困難ではなくなります。
思考の視点を広げ深めたことを記録していく端末は、学びの履歴を残しておくうえでも有効なツールです。自らの学びの方向性を定め、友達と一緒に新たな視点をもって学びを推し進めていくので、1人1台の端末をこれからも積極的に授業に取り入れていきましょう。
イラスト/横井智美
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