小5 国語科「グラフや表を用いて書こう」全時間の板書&指導アイデア

特集
【文部科学省教科調査官監修】1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「グラフや表を用いて書こう」(光村図書)の全時間の板書、発問、予想される子供の発言、1人1台端末活用アイデア等を示した授業実践例を紹介します。

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立藤の木小学校・阿部真央

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、自分の目的に合った資料(グラフや表)を選び、その資料と文章を関連させて、これからの社会について自分の意見を述べる文章を書きます。
意見文により説得力をもたせるためには、自分の考えを裏付けたり証明したりするような資料を探すこと、資料を正しく読み取ること、読み取ったことと自分の考えの整合性を考えることが大切です。
自分の意見に合う資料を選んだり、友達と書き表し方について交流したりする活動を通して、文章の中で効果的に資料を使い、より説得力のある文章を書くことができるようにしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、「B 書くこと」の言語活動例「ア 事象を説明したり意見を述べたりするなど、考えたことや伝えたいことを書く活動」として、今生きている社会がくらしやすい方向に向かっているかについて、自分の考えの裏付けや証明となるグラフや表を用いて、自分の意見を述べる文章を書きます。

自分の意見に説得力をもたせるために、文章の中で資料を効果的に用いることが大切です。
資料から分かることを伝えるのではなく、自分の意見に説得力をもたせるため、自分の意見の裏付けや証明とするために資料を用います。
そのために、集めた資料の中から、自分の意見と資料の整合性を考え、より自分の意見が伝わるように書き表し方を工夫していきます。
自分の意見と資料の整合性をもたせるためには、資料から分かる情報について正しく整理し、関係付けることが大切です。情報と情報、情報と自分の意見との関係付けをしていく力が付くことが期待できます。

また、「社会のくらしやすさ」という大きなテーマについて意見を述べる文章を書くことで、資料と意見のつながりだけではなく、友達の社会についての見方や考え方、自分の意見との相違などを知り、自分の社会に対する見方を広げたり、友達への理解を深めたりすることにもつながります。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 見通しをもって学習し、目的に合わせて自分の学びを調整する

児童は、「固有種が教えてくれること(教科書 P.138〜145)」を読み、資料があるとより説得力が増すことや伝えたいことが伝わりやすくなることなどを学習しています。そこから、効果的に資料を使って文章を書くというゴールをもち、学習計画を立てていきます。

全体で学習計画をたて、学習をすすめていきますが、全員が同じように学習を進めていくことよりも、児童一人一人が何をしたらよいか見通しをもち、自分の学習を進めていくことが大切です。

本単元は、①自分の意見をもつ②資料収集という全体の学習計画にしましたが、資料収集の中で自分の意見がはっきりしてくる児童もいますし、友達と話していく中で自分の意見が変わっていく児童もいます。また、資料収集に時間をかけたい児童もいれば、そのあとの資料の整理・選択に時間をかけたい児童もいます。一人一人が、自分の今やること、次にやることを意識して学習を進めていけるようにしましょう。
単元の初めに学級全体でおおまかな学習計画を立てますが、学習を進める中で一人一人が学習を調整しながら自分の計画をもって学習していくことが大切です。

教師は、児童が学習の見通しをもてるように、資料を用いて意見を述べる文章を書くためにはどのような活動が必要か話し合いながら一緒に学習計画を立てていきます。そのときに、自分の時間をかけたいところに合わせた学習の進め方があることを確認したり、最後がそろうだけではなく、「この時間までにはここまでやっておこう」と中間地点を決めたりすることが大切です。
本単元では、自分の意見と資料の整合性について友達と話し合う時間をとります。そこまでには、自分の意見、使いたい資料、その資料から分かることをまとめておかなければなりません。児童が自分の学習を調整しながら進めていけるように、教師は、児童一人一人の進み具合をみて、使えそうな資料を提示したり、資料から分かることの整理の方法を指導したりするなど適切な支援をしていくことが大切です。

〈対話的な学び〉 資料と自分の意見との整合性を考える

自分の意見と資料の整合性について友達と話し合って考えていきます。
今回は、「資料からどんなことが分かるか」「資料が自分の意見の裏付け、証明となっているか」ということについて話し合っていきます。
友達と話すことで、自分が気付かなかったことに気が付いたり、もし資料の解釈に間違いがあったときには、そこにも気が付いたりすることができます。自分では「整合性をもたせることができた」と思っていても、他の人が読むとそうではないと感じることがあります。もし、自分の意見と資料の整合性が弱い場合は、他の集めた資料を友達と一緒に見返したり、友達が集めた資料から使えるものはないかなどを考えたりすることができます。意見を述べる文章を書き始める前に、自分の意見と資料の整合性を確認することで、より自信をもって書いていくことができます。

また、友達がどのような資料を選んだのか、資料をどのように整理したのか、どのように意見と資料を関係付けたのかなどを知ることで、自分の学習を振り返ったり友達の学び方を自分のこれからの学習に生かしたりすることにもつながっていきます。

〈深い学び〉 文章を読み合い、自分の考えが伝わる書き表し方の工夫について振り返る

意見を述べる文章を読み合い、自分の考えや裏付けとなる資料を比較し、相違点や共通点を考え、社会に対する見方を広げることができます。
「社会のくらしやすさ」という大きなテーマでそれぞれが意見を述べる文章を書いたからこそ、考えが同じでも資料が異なり、どのような資料を選んだのかなど興味をもって友達の文章を読んでいくことができます。

また、友達の文章を読む際に、考えと資料のつながりをみていくことで、友達の書き表し方の工夫、資料の種類による説明や、書き表し方の違いについても知ることができます。
どのような言葉を使うと資料と考えのつながりを説明できるのか、どのような言葉を使うとより説得力をもたせられたのかなど、自分の考えが伝わる書き表し方の工夫について振り返りましょう。
また、表かグラフか、折れ線グラフか棒グラフか、毎年の変化を表している資料か、過去と現在の二つを比べる資料かなど、選んだ資料の種類によって説明や書き表し方の違いがうまれます。
さらに、資料の中でもそれぞれが注目している部分によっても書き表し方が変わります。この学習で身に付いた言葉の力を自覚し、これからの学習や生活に生かしていくことが大切です。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)適切な資料を収集する

資料を収集する際の一つの手段として、端末を活用します。
資料を集める際には、本や資料集等も活用しますが、インターネットから資料を集める際に、端末が活躍します。
また、本などから集めた資料も端末の中に保存することで、様々な媒体から集めた資料を一つの端末で比べることができます。資料を集めるときに、「使えそうな資料を探そう」だけでは、適した資料を見つけられない児童もいます。教師は端末の中に、あらかじめ使えそうな資料を準備しておき、児童が必要に応じて使えるようにしておきます。
本単元で準備しておく資料は、社会生活に関わるもの、今と昔の比較ができるものを選ぶ必要があります。社会生活に関わる資料は、技術や医療が発達した、便利なものが増えた、食べ物が豊かにあるなど、児童が感じている「社会のくらしやすさ」とつなげたものを準備することが大切です。
また、端末を活用すれば、児童が集めた資料を共有することもできます。「こんな資料を探している」ということも共有できるようにしておけば、教師がよいものを助言したり、友達同士でおすすめの資料を伝え合ったりすることもできます。

(2)情報を整理し、自分の考えに合ったものを選択する

情報の整理・資料の選択の際にも、端末を活用することができます。
例えば情報の整理の際には、資料にラインを引いて、自分の考えとつながるところや資料から分かる大切なことを整理することができます。

また、端末上で以下のようなシートを用いて資料と自分の考えのつながりを整理することもできます。

<情報整理シート> 資料の情報を整理するためのシート

情報整理シート

上:選んだ資料
中:資料から分かること
下:資料から考えられること

資料と自分の考えとのつながりを、縦に見ていくことができます。中段の「資料から分かること」の部分が自分の考えの裏付けとなっているか、下段の「資料から考えられること」が自分の考えとつながるかどうかを整理していきます。

<構成シート> 資料と自分の考えとのつながりを詳しく考えるためのシート

構成シート

右から「はじめ」「中」「おわり」になっています。「中」の部分は、情報整理シートで使った付箋を複製して使うことができます。「資料から分かること」「資料から考えられること」と自分の考えとの整合性を確認することができます。

どちらも付箋の色は、

赤:自分の考え
青:その理由
緑:資料から分かること
黄:資料から考えられること

など、教科書のモデル文の分析のときと同じ色分けをし、学級で共通理解をしておくと、話合いのときに確かめやすくなったり、自分自身で足りない色に気が付いたりすることができます。

自分の考えを整理し、資料との整合性を友達と話し合いながら考えることを通して、自分の考えにぴったり合う資料を選択していきます。

(3)資料から分かることと自分の考えを分けて書く

教科書のモデル文を読み、文章の構成や、どのような言葉を用いるとよいのかについて分析していきます。教科書のモデル文に情報整理シートや構成シートの付箋と同じ色分けでラインを引いていきます。また、重要だと思う言葉は丸や四角で囲むなどして、児童が文章を書く際に活用できるようにします。

児童が自分で書いた文章も同じように色分けすることで、「自分の考えの部分が少ない」「資料から分かることの部分の一文が長くなりすぎている」「みんなで共有した使いたい言葉があまり使われていない」など自分の文章を振り返ることができます。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名: 資料の効果を考え、それをいかして自分の意見を伝える文章を書こう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 自分の考えを簡単に交流し、「社会のくらしやすさ」について意見をもつために、どのような視点があるか考える。
「固有種が教えてくれること」の学習を想起し、自分たちも資料を用いて自分の考えを伝える文章を書くという目的で学習計画を立てる〈主体的な学び〉

・第二次(2時3時、4時5時
② 教科書の資料やモデル文を分析する。
資料を収集する。〈 端末活用(1)
③ ④ ⑤〈主体的な学び〉
資料を収集する。〈 端末活用(1)
資料を整理する。〈 端末活用(2)
資料と自分の考えの整合性について友達と話し合う。〈対話的な学び〉
資料を用いて、意見を述べる文章を書く。〈 端末活用(3)

・第三次(6時
⑥ 友達と文章を読み合い、書き表し方の工夫について振り返る。〈深い学び〉

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

自分の意見がなければ、資料を探すこともできません。「これからの社会」だけではテーマが大きすぎるので、「よい方向へ向かっている」「よい方向へ向かっていない」という二つの立場を提示します。立場を提示しただけでは、自分の意見をまとめることが難しい児童がいる場合は、自分の立場が決まっている児童に、どうしてそう思うのか理由を聞き、視点を挙げていきましょう。

〇〇さんは、どうして「くらしやすい方向へ向かっている」と思ったのかな。

ぼくは、ゲームなど好きなことをする時間がたくさんあるから、くらしやすい方向へ向かっていると思ったよ。好きなことをしているときは楽しいと感じるからね。

わたしは、最近6時間授業が多くて下校の時間も多いし、習い事などもあって、遊ぶ時間が減ったと思う。だから、くらしやすい方向へ向かっているとは言えないかな。

二人は「好きなことをする時間」があるかどうかで、くらしやすさを考えているんだね。他の考えはあるかな。

私は、医療が発達して、いろいろな病気を治せるようになって長生きできるようになっているから、くらしやすい方向へ向かっていると考えたよ。

ぼくは、医療も発達しているけど、様々な技術も発達していて、便利なものが増えたと思うよ。車の自動運転技術とかもすごいなと思うし、いつも使っているタブレットやスマートフォンなども便利なものだと感じる。これからもどんどん便利なものは増えていくと思うから、暮らしやすい方向へ向かっていると思うな。

「医療」や「技術の発達」に目を向けたんだね。「くらしやすい方向へ向かっていない」と思う人はいるかな。

わたしは、暮らしやすい方向へ向かっていないと思う。なぜなら、人間が捨てたごみが原因で海が汚れたり、生き物が死んでしまったりしているから。そういう環境の問題が多くあるから、暮らしやすい方向へ向かっていないと思ったよ。

△△さんのように「環境」という視点から考えた人は他にいるかな。

このような話合いをしていく中で、意見がもてなかった児童も、「この視点で考えてみようかな」と自分の意見をもちやすくなります。
また、この時点では、児童の理由には、根拠がないものが多くあります。児童がこれまでに知っていることや見たり聞いたりしたこと、経験したことが理由となっています。教師は、それでは説得力がないことや自分たちが感じている「理由」は本当に事実なのかを確認するためにも資料が必要であることを確認しましょう。

さらに、自分だけが感じている「暮らしやすさ」なのか、社会全体の「暮らしやすさ」につながっている考えなのかを教師が整理することも大切です。

次に「固有種が教えてくれること」の学習から、意見を伝えるときにはそれを裏付けたり証明したりする資料があるとよいことを想起させます。今の話合いで述べていた理由は、ほとんどが自分の感覚やイメージであることを振り返ります。
「より説得力をもたせるために資料を使い、意見を伝える文章を書く」という学習の見通しをもち、そのゴールへ向かって、学習の計画を立てていきます。学習計画を立てる際に、児童が自分で学習を調整できる部分を確認しましょう。

ぼくは、「食品ロス」の資料を集めたいな。

もうどのような資料を集めるか決まっている人は、資料を集めるところはあまり時間をかけなくても大丈夫だね。

その分、資料からどんなことが分かるか、情報の整理のところにじっくり時間をかけたいな。

わたしはまだ自分の意見もしっかり決まっていないから……。

まだ、意見がしっかり決まっていないという人もいるね。たくさんの資料を見ていく中で自分の意見が決まっていくこともあるよ。

じゃあ、わたしは資料を集める時間を多くとりたいな。でも、そのあとの整理の時間が少なくなるのは心配。だから、資料を集めるときに、資料から分かることは何か考えながら集めるようにしよう。

一緒に学習計画を立てることで、児童が学習の見通しをもつことができます。学習の見通しをもつことで、ゴールまでの自分の学習の状況を理解することができ、自分が時間をかけたいところはどこか考えることができます。


【2時間目の板書例 】

(モニターには、教科書に載っているグラフや表、モデル文をその都度映す)

2時間目の板書例
端末活用の方法として

2時間目は、教科書に載っているグラフや表、モデル文を分析して、書く文章のイメージをもち、資料を集めていきます。

まずは、教科書に載っている四つの資料を比較し、資料の共通点や特徴を話し合います。
その中で、「社会はくらしやすい方向へ向かっているか」というテーマなので「社会」に関わる資料であることや、特徴や傾向の変化が見られる資料であることに気付いていきます。資料の特徴を見つけ、自分が集める際の参考にします。

また、モデル文も分析し、児童が文章を書く際のイメージがもてるようにします。
タブレット端末を用いて、自分の考えは赤色、その理由は青色、資料から分かることは緑色などと色分けしたラインを引いていき、構成を捉えていきます。

<構成 例>
はじめ:自分の意見 その理由
中  :資料の説明 資料から分かること 資料から考えられること
おわり:まとめ 参考にした資料の出典

大まかな構成、また、事実と考えを伝える際の文末表現の違い、資料と文のつながりなどを確認し、児童が文章を書く際のイメージをもてるようにします。

次に、資料を集めていきます。資料を探すときには、タブレット端末を活用することはもちろん、教科書や資料集、本や新聞などさまざまなものから集められるようにします。
教師は、日頃から使えそうな資料を見つけたら児童に提示できるように準備しておくことが大切です。教科書の資料を分析したことで、社会生活に関わった資料であること、今と昔の比較ができる資料であることが大切だと気付きます。「社会生活」と言われても何か分からない児童もいるので、ニュースや身の回りのこと、前時の児童の発言から視点をまとめます。

【視点 例】
環境(ごみ、SDGs) 技術の発達(電話) 医療 食べ物 生活時間 人口 国際理解 など

タブレット端末を使い、視点ごとに資料を保存しておける場所をつくります。
教師が準備した資料だけではなく、児童がインターネットや資料集から見つけた資料をそこに保存し、共有できるようにしておきます。資料を保存する前には、教師が確認します。4年生までの教科書や、環境のことなどで配付したお便りなどにも使える資料はあります。教師自身も一年間の学習の見通しをもって、資料を収集しましょう。


【3時間目の板書例 】

3時間目の板書例
端末活用の方法として

3時間目は、前時に続いて資料を集める児童、前時に集めた資料の情報を整理する児童、資料と自分の考えのつながりについて相談したい児童がいます。
3時間目のはじめに、情報の整理の方法を確認します。教科書の資料を例にして、自分の考えと資料がつながっているかを考えていきます。

児童一人一人が自分の学習の状況に合わせた活動をするので、「資料から分かることを整理したい」「資料は決めたから、自分の考えとのつながりを考えたい」など、自分の活動の見通しをもつことが大切です。そのために、教師は児童の学習の進捗状況や悩んでいることを把握しておき、適切な声かけや支援をする必要があります。

〇 なかなか資料が集められない児童

ー 全体へ

新しいものを探す前に、今ある資料を見てみよう。その資料を見つけてきた友達と話し合ってみると、資料からどんなことが分かるのか、どんなことを伝えようとしてその資料を探したのかなどを知ることができるね。

別に

「社会はくらしやすい方向へ向かっている」「向かっていない」の考えははっきりしているか、考えの理由はあるかなどを確認します。
理由がある場合には、クラスで共有している資料の中から理由と合うものを一緒に選びます。
理由がない場合には、他の児童の考えなどを紹介し、自分の考えに近いものはないか考えます。この時間には、全員が資料を決められるように、児童の考えに合ったおすすめの資料を選んでおきましょう。

〇 資料の情報を整理しようとしている児童

情報整理シートを使って、資料の情報を整理していきます。
 <例>

情報整理シート<例>

資料から分かることや考えられることを整理したけど、本当につながりがあるか不安だな。

「資料から分かること」は正確か、「資料から考えられること」は「資料から分かること」とつながっているかを友達に相談しよう。

〇 資料の情報を整理した後、自分の考えと資料のつながりを確かめようとしている児童や、構成を考えながら資料の情報を整理し、自分の考えとのつながりを確かめようとしている児童

構成シートを使って、資料と自分の考えのつながりを確かめていきます。
情報整理シートの後に構成シートを使う児童もいれば、最初から構成シートを使って、情報の整理をしながら自分の考えと資料のつながりを確かめる児童もいるかもしれません。
情報整理シートを一度作っている児童は、そのシートの付箋を構成シートの「中」の部分で使うことができます。タブレット端末を使用することで、簡単に付箋の複製や移動ができます。

 <構成シートの例>

構成シート<例>

【4時間目の板書例 】

4時間目の板書例
「対話的な学び」のために

4時間目は、主に選んだ資料と自分の考えが合っているか、友達と話し合います。
作成した情報整理シートや構成シートを使って、資料と自分の考えとがつながっているかを確かめます。まだシートが完成していない児童は教師が支援し、この時間のうちに友達と相談の時間が取れるようにします。
また、教師が支援するだけではなく、同じ資料を選んだ友達にどのようなことを書いているのか聞くこともできます。この時間だけではなく、3時間目あたりから、資料が自分の考えの裏付けとなっているか、友達と相談したいと思う児童がいると思います。教室の一角に相談コーナーを設けたり、タブレット端末を使用して児童間で相談できるようにしたり、いつでも友達に相談してよい環境を整えておくとよいでしょう。

また、この時間だけで教師が児童全員分の「資料と自分の考えとのつながり」を確認することはできません。完成の見通しをもっている児童には、前時までのシート等にコメントを書き、気になるところや良いところを伝えましょう。
「〇〇さんと同じ資料を選んでいるけれど、資料から分かることで違うところを取り上げているよ。話を聞いてみよう。」「□□さんと考えが似ているから話をしてみよう。」等のコメントをし、児童が進んで話し合えるようにします。
また、児童の作成したシートや選んだ資料を共有し、児童自らが話をしたい相手を選べるようにします。最初は「隣の席の友達と話そう」「友達4人以上と話そう」「一度に一緒に話すのは3人までにしよう」等のルールを設けると、たくさん話をし、資料と自分の考えのつながりを何度も見直すことができます。

友達との話合いを通して、再び情報整理シートや構成シートに戻る児童もいれば、次の文章を書くことに進んでいく児童もいます。一人一人が自分の学習を調整できるように準備をしておきましょう。

 <話合いの例>
〇 資料:「平日の生活時間(平均)」(教科書 P.150)

わたしは同じ資料を選んだ〇〇さんと話をしよう。わたしとは、資料の中で注目しているところがちがうよ。

わたしは、自由時間が合計56分減って、勉強の時間が69分増えていることに注目したよ。

確かに、この表からはそういうことが分かるね。数字も正しいよ。どうしてその数字に注目したの。

自由時間が大きく減って、勉強の時間が大きく増えていることから、自分の好きなことや楽しいことをする時間が減っていると考えたんだ。だから社会はくらしやすい方向へ向かっていないと考えたよ。

考えと資料がぴったり合っているね。わたしは、睡眠時間が11分減っているところにしか注目していなかったな。わたしは寝ることが大好きだから睡眠時間が減っているということは、社会はくらしやすい方向へ向かっていないなと考えたんだ。でも〇〇さんの話を聞いて、減った時間だけではなく、増えた時間も見て考えることが大切だと思ったよ。

 <話合い後のシート 例>
〇 資料:「電話の加入数の推移(固定電話、移動電話[携帯電話など]」(教科書 P.151)

話合い後のシート <情報整理シート  例>
話合い後のシート <構成シート  例>

「資料から分かること」が増えたよ。「一番少ないときといちばん多いときの加入数に着目しているなら、その差も出した方がより加入数が増えている感じがするよ。」と言われたんだ。確かに、差の数字を具体的に出すことで加入台数が増えたことがより分かりやすくなったよ。
また、「便利なものが増えたから」という理由だけでは、資料とあまりつながりが感じられないことに気が付いたよ。「便利なもの=携帯電話」だけではなく、「その携帯電話などを多くの人が持っている」ということをはじめに書くことにしたよ。


【5時間目の板書例 】

5時間目の板書例
端末活用の方法として

5時間目は、選んだ資料を使って自分の意見を伝える文章を書いていきます。2時間目で分析した教科書のモデル文から、おおまかな構成や文末表現、資料と文をつなげる言葉などをもう一度確認します。

文章はノート、行やマスのある用紙、タブレット端末など、児童の実態に合わせて準備をし、児童が選ぶことができるようにします。
ノートや用紙に書いた文章も、最後にはタブレット端末に取り込みます。モデル文の分析のときのように、自分の書いた文章に、自分の考えは赤色、その理由は青色、資料から分かることは緑色などと色分けしてラインを引いていきます。構成シートや情報活用シートとラインを引いた自分の文章とを見比べ、入れたい情報が全て入っているか確かめます。


【6時間目の板書例 】

6時間目の板書例
「深い学び」のために

6時間目は書いた文章を読み合います。
友達の文章を読むことで、友達の考えを知ったり、友達の文章と自分の文章を比較して自分の文章を振り返ったりすることができます。タブレット端末を活用して友達の文章を読み、コメントを送り合います。教師は感想の視点を提示するようにしましょう。

今回は、①内容について(友達の考えに関すること)②表現について(文章と資料のつながり)、③資料の効果について(考えと資料のつながり)の三点についてコメントするようにします。②と③の視点は、この後の振り返りにもつながります。

文章を読み合った後は、学習を振り返っていきます。
振り返りの視点は、①情報の整理について②文章と資料のつながりについての二点にしました。
教師は、指導事項を意識して振り返りの視点を提示しましょう。

 <振り返りの例>

〇 学び方や、情報と自分の考えのつながりの大切さを意識した振り返り例

情報整理シートを使って、資料から分かることと資料から考えられることのつながりを確認できたよ。友達と相談することで、資料から分かることが正しいか確かめることができたし、こんなことも分かるよと教えてもらえたよ。資料から考えられることは、自分の考えの理由と合っていることが大切だと思ったよ。

〇 資料(表、グラフ)の違いによる文章中の言葉や表現の違いを意識した振り返り例

わたしはグラフを使って文章を書いたけど、表を使っている友達の文章を読んで、表とグラフのどちらを使うかで注目させるときの言葉が違うことに気が付いたよ。わたしは、「折れ線グラフを見ると」と書いたけど、表を使っていた友達は「表の〇〇の欄を見ると」と書いていたよ。

〇 自分の考えと資料中の注目させたい部分とのつながりを表す言葉を意識した振り返り例

友達の文章を読んでみて、資料の中で注目させたいところについての表現がたくさんあるなと思ったよ。ぼくは「〇年を見ると」と書いたけど、「いちばん多い〇年を見ると」と書いている人もいたし、「〇〇と△△を比べると」と書いている人もいたよ。

〇 本単元の学習と、他教科の学習や今後の生活とのつながりを意識した振り返り例

この学習を生かして、他教科の学習で分かったことや調べたことを表やグラフを使ってまとめてみたいなと思ったよ。わたしは今回グラフを使ったから、次は表を使って文章を書いてみたい。表は二つのことを比べるときに分かりやすいことが分かったから、何かを比べるときに表を使って文章を書いてみたいな。

学習したことを振り返り、これからの学習や生活の中で生かせそうな場面を考えたり、振り返りで出てきた表現や言葉をまとめたものをタブレット端末に保存したりします。
タブレット端末に保存しておくと、これからの国語の学習や他教科での学習、生活の中で、児童が必要なときに見返して使うことができます。
この単元での学びだけではなく、国語の学習で身に付けた言葉の力をまとめて保存しておき、いつでも使えるようにしておきましょう。

イラスト/横井智美

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