体育の学習方法はどうやって学ばせるの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #6】

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使える知恵満載! ブラッシュアップ体育授業
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小学校教諭

平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

椅子に座って学習している教科との大きな違い。それは、体育館やグラウンド等、広い場所で子どもたちが動き回ること。指示が通りにくかったり、子どもの動きが見取りにくかったりして困ったことはありませんか? 広い空間で子どもたちが学習に集中して取り組むためには、学習規律が保たれていることが大切です。また、他教科に比べて、「できる・できない」が表出しやすい体育では、仲間への関わり方も教える必要があります。そこで、入学直後からこれらを学ぶことができ、「動ける体つくり」につながる、魅力たっぷりの折り返しの運動を紹介します。

執筆/千葉県公立小学校教諭・渡邊知子
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川 譲

1 折り返しの運動とは?

折り返しの運動は、班ごとに並び、7~10m程度先のラインまで、様々な運動をしながら行って、走って戻ってくる運動です。ラインやマーカー等、目印があれば、体育館でもグラウンドでも行うことができます。動きに慣れてきたら、競走やリレー形式にすることもできます。

2 折り返しの運動で、6年間役立つ「5つの学習方法」を学ぶ

1)順番を待つ

低学年の子どもは、じっとしているより体を動かしたいという欲求が強く、並んで順番を待つことが苦手な場合があります。運動欲求が強いことは教師としても嬉しいことですが、安全確保のためにも、並んで順番を待つことを指導することが大切です。

折り返しの運動はイラストのように、教師の合図で各班一人ずつ運動をします。ですから、他の3人がきちんと並んで順番を待つという、「運動をしていない時の態度」を学ぶことができます。

教師も、ほぼ等間隔に並んで運動をする子どもの動きを見取りやすいというメリットがあります。

(2)運動を見る

同じ班の仲間の動きを見てアドバイスすることは、体育において大切なことです。折り返しの運動は、往路でクマ歩き、うさぎとび、クモ歩き、アザラシ等を行い、走って戻ってきます。

例えば、クマ歩きでは、手のひらと指をしっかり床についているか、腰が肩より高い位置に上がっているかを、待っている仲間が見て、アドバイスをします。学習を始めた頃のクマ歩きは、動きがゆっくりなので、低学年の子どもでも、動きを見てアドバイスすることができます。

(3)応援する

応援の声や拍手は、運動をしている子どもの意欲につながります。勝ち負けがはっきりするリレーで自分の班を応援する姿は多く見られます。しかし、ここで大切にしたいのは、「苦手だけれど、最後までがんばっている仲間」への応援です。一人ずつ運動をしてもリレー形式にしても、動きがゆっくりで最後になってしまう子どもは、恥ずかしさもあり運動嫌いになりやすいものです。そこで、最後までがんばっている仲間を応援することで、「最後までがんばってよかった」と感じる雰囲気をつくることができます。コロナ対策で声を出すことが難しいときは、教師の太鼓に合わせて拍手をすることで、声の応援に代えることができます。

(4)数える

うさぎとびは、跳び箱運動につながる動きです。できるだけ遠くに体を投げ出し、足を手の位置まで引きつけることが大切です。動きに慣れてきたら、何回でゴールにたどりつけるかを班ごとに数えさせます。数えさせることで、仲間の動きを見ることにもつながり、お互いの声かけも活発になります。ケンケンの数を数えさせるのもよいでしょう。

(5)学習態度を身に付ける

限られた時間の中で、できるだけ効率よく学習を進めたり、肯定的な雰囲気をつくったりするためには、技能だけでなく態度を評価する声かけが大切です。そこで、以下のような行動が見られた時には、班や個人にポイント(点数)を与えることで、子どもが楽しみながら学習態度を身に付けることができます。

① 折り返しの運動の位置に素早く移動している。
② 目と耳、おへそを先生に向けて、話を聞いている。
③ 全員の運動が終わるまで、一生懸命応援している。
④ ていねいに最後まで運動をしている。

このような方法なら、運動が苦手な子どもも個人的にポイントをもらう機会があり、仲間から認められる経験を積み重ねることができます。さらに、学習規律が保たれ、教師は注意や叱責等に時間をとられず、授業を進めることができます。まさに、教師も子どももwin‐winですね!

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執筆
渡邊 知子
千葉県公立小学校 教諭
兵庫県神戸市生まれ。校内で使える6か年体育科プランを作成し、だれでも簡単・手軽で「動ける体つくり」ができる授業づくりに取り組んでいます。体育を専門としない先生方も対象とした自主研修を地域や校内で実践中。「『資質・能力』を育成する体育科授業モデル」(共著)(学事出版)


平川譲先生

監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


イラスト/佐藤道子

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