小6国語 「町の未来をえがこう」で生まれた児童のアイデアを、地域連携で実現!──実践レポート from 仙台
目次
活動を終えての子供の声(2022年 3月)
展示期間を終えた後、市民センターに寄せられた地域住民の感想を子供たちに紹介する機会を設定しました。「アンブレラスカイに感動した」「とても明るい気持ちになりました」など、たくさんの声に子供たちは満足そうな表情をしていました。
以下は、今回の学習を終えての子供の感想です。
「私たちが一人一人がんばってつくったペットボトルアートやアンブレラスカイを見て、地域の人たちに元気を与えることができたり、見に来た人たちからたくさんの感想をもらったりして、本当にがんばってよかったと思いました。あとは、いろいろな人に活動を広めてもらったり、新聞やインターネットに載せてもらったりして、たくさんの人たちが『思いを形にプロジェクト』に関わっていることも分かりました。」
「教科書から始まった取組がこんなに大きな取組につながっていたことがすごいと思いました。一人一人が思いを込めたアンブレラスカイやペットボトルモビール、展示が年齢を問わずいろいろな人に伝わって笑顔が増えたならうれしいです。私たちの思いをカタチにできて、コロナに負けず地域に貢献できたことがうれしかったです。」
「市民センターの方と協力して作品をかざることができました。そこで気付かされたことは、自分一人の力でやるのではなく、地域の人たちが協力して町というものが明るくなっていくということです。この学びを生かして、もっとこの町を明るくしていきたいです。」
「この『思いをカタチにプロジェクト』に取り組んで、自分たちでも地域を変えられる。地域を変えるのは大人だけじゃないということが分かりました。今後もこのような活動を続けていきたいです。」
「最初は地域に貢献するなんて大きいことができるのかなと思っていました。しかし、やり始めたら、地域の課題と向き合って企画を考え、実際にリサイクルアート作りに取り組んだり、それを広めるためにポスターを作ったりと、小学生の私たちでもやれることがたくさんあって、今は達成感でいっぱいです。本当に楽しかったなと思います。」
(子供たちの感想のごく一部を抜粋)
多くの子供たちが自分たちの取組に手応えを感じ、地域に貢献することの意義や価値、楽しさを実感することができました。
地域連携のよさ
子供たちの学びを支える市民センターの強み
市民センターとの連携を進めるたびに、地域の情報が集まる市民センターの情報量の多さ、多様な人々とのパイプの太さ、地域への発信力の高さを実感しました。子供たちの意見を吸い上げて、地域の活性化のためにアイデアを形にしていく企画力と実行力。そして、子供のアイデアを実現させうる場所の提供や協力機関との連携。それらが授業づくりにプラスされることで、広がりのあるダイナミックな実践になっていきました。
市民センターとの共創のメリット ―地域の一員としての実感が芽生える―
この実践をやってよかったと感じることは、学校の中だけでは到達しえない学びをつくることができたことです。連携を行うことで、子供たちの視野を教科書や学校内だけでなく、自分たちの生活の場である地域へと広げることができました。
このように子供たちの目線を上げ、視野を広げることは、校内での活動だけではなかなか難しいものです。地域をよく知る市民センターが直接子供たちと関わることで、地域の現状を知り、自らが地域づくりに参画するという機会と実体験が生まれ、その経験が子供たちを成長させていきました。ここに今回の実践、連携の大きな価値を感じています。
苦労したポイントと今後の課題
学校教員の視点から
この実践で苦労したポイントは、いかに「子供主体の活動にしていくか」でした。「子供が住んでいる町の課題を知り→町づくりについて考え→自分たちにできる取組を考え→実行する」という課題解決型の学びのストーリーを描きました。
市民センターとの連携により、地域の情報を得たり活動の幅を広げたりすることがしやすくなった一方で、多様に広がる子供の考えを実際に実現させるためには、内容や時期、場所、協力機関など様々なことを考慮する必要があります。このときに「子供主体」が難しくなります。今回の実践では、最終的に教員と市民センターで実現可能な取組を決定し、子供たちに伝えるという形になりました。
この大人の打合せに子供たちが参加していたらどうなったでしょうか。自分たちが考えた取組と様々な条件の下で実現可能な取組とをすり合わせるところにこそ、子供に考えさせたいリアルな学びがあったようにも感じています。
今年度(2022年度)で、6学年の学習で市民センターと連携するのは3年目となります。過去2年間の取組を踏まえながら、どのような挑戦ができるのか、子供たちと一緒に新たな学びを創造していきたいと考えています。
市民センター職員の視点から ~地域と学校 連携のこれから~ (by 小野耕一)
学校が市民センター(公民館)を活用することは、「社会に開かれた教育課程」を実現する上で有効な手立てになると思います。
市民センターは公的社会教育施設であり、地域住民の交流の拠点として広く認知されています。そこには、地域の中で地域のことを深く学びたい人や地域貢献をしたい人が集まっています。また、多様な学習情報が集まる地域の拠点にもなっています。そして、市民センターには学びたい人々と力を合わせ、地域課題の解決に向けて努力を重ねる職員の方々がいます。市民センターは、人と情報が集まるプラットホームだと言えるのです。
学校が学校外に向けて何かを企画し、それらを実践するためには、非常に多くの乗り越えなければならないハードルがあります。
一つ目は会場の問題です。先の「リサイクルアート展」の例では、傘を魅力的に展示することができ、多くの人に見てもらえる場所が必要でした。宮城野区文化センターのホールは、つりあげて展示することに適した環境があり、それを実現するスタッフがいました。
二つ目は予算の問題です。学校の教育活動は、前年度に予算化していることが多く、年度途中に立ち上がった企画を支えるには十分ではない可能性があります。しかし、市民センターや行政の協力を得ることで、費用の面で活動を後押しすることができる場合があります。
三つ目は人材の問題です。地域学習までも教員が担うことになると、下調べに時間をとられてしまい、多忙化に拍車がかかってしまいます。その部分を地域人材が担うことができれば、詳しい人が指導を担当することができ、先生方の負担軽減にもつながります。
このような取組が、担当した職員が変わっても続けられる事業になること、継続して実施されることで地域の文化になることが大切だと思います。
※この実践の舞台裏を動画でも紹介しています。どうぞご覧下さい。(↓)
▶︎【動画】町の未来をえがこう 小学校と市民センターの連携・制作ストーリー