よりよい人間関係づくりは、トラブル解決や集団活動を通して育む
子供たちが学校生活の中で、よりよい人間関係を育んでいくためのポイントを紹介します。
執筆/広島県公立小学校校長・寺戸典子
目次
人間関係が育ちにくいのは、なぜ?
学級担任ならば誰でも、自分のクラスは「仲のよいクラス」「トラブルの起きないクラス」「温かい雰囲気のクラス」であってほしいと願うことでしょう。
しかし、現代社会では、人間関係が希薄になっています。生活の場面において、人と人が顔を合わせてかかわることが少なくなっている今、子供たちの人間関係形成力は放っておいて育つものではなくなっています。
着目点① 日常の出来事がひとつのチャンス
些細な言い合いや揉めごとが起きたときはチャンスです。担任が「今、大事な人間関係を育てているんだ」と思い、落ち着いて対応します。
【指導のポイント】
「人は一人ひとり考えや思いが違っていて、どれもいいんだ」と伝える。
- お互いの言い分を相手に伝える。
- 同じ考えではないからこそ、行き違うことがあるのだと気づかせる。
- 妥協点を見つけたり、譲り合ったりできる点を見つけさせる。
【指導のポイント】
みんなで合意形成を行う学級会は、実際にその力を育てることができるよいチャンスです。
- 教師が見守る中、自分たちで解決したり合意形成したりする。
- その積み重ねが自治的な学級を育む。
着目点② 行事や集団活動の振り返りは、ぐっと人間関係が深まる最高のチャンス
さまざまな学校行事や集団活動の後に振り返りを行います。その時間が、人間関係を深める最高のチャンスだと捉えましょう。
【指導のポイント】
感動的な振り返りの場面を演出する。
- 大きな学校行事や集団活動の後に、振り返りの時間を設ける。
- 振り返りカードではなく、感動や達成感を共有でき、思い出を形として残せるものを用意する。
【指導のポイント】
教師の評価で価値づける。
- 個への評価を行う。例えば、「〇〇さんは、◇◇なところが素敵だ」「〇〇くんは、△△係としてみんなのことを考えて行動していた」など。
- 集団への評価を行う。例えば、「この感動は、誰ひとり欠けても味わえなかったね」など。
(例)学級活動(2)「思い出のメッセージアルバム」
【めあて】
「自然教室(集団宿泊的行事)で一緒に過ごした仲間へメッセージを送り、これからの生活について考えよう」
①一人ひとりにワークシート(A4)を配る。名前を書き、机の上に置く。
②同じ班のメンバーが、その児童に向けてメッセージを記入する。
③全員が書いたら席について、自分へのメッセージを読む。
④メッセージを読んでの感想や、これからどんな学級にしたいか、どんな自分でありたいかを記入する。
着目点③ 社会的スキルを身につける活動はタイムリーに取り入れる
人間関係づくりのために、「ソーシャルスキルトレーニング」や「アサーション」「アンガーマネジメント」など、社会的スキルを身につける活動を取り入れてみましょう。そのときは、児童の実態をよく見て、タイムリーに行うことが大切です。
【指導のポイント】
- ねらいを明確にする(どんな力をつけたいのか)。
- 一人ひとりが課題を見い出し、話合いを通して自分で意思決定できるようにする。
イラスト/北澤良枝
『教育技術 小五小六』2021年8/9月号より