<第1回>まずは家畜を飼おう! パンク町田が語る! みんなのいきものがかり
どの学校にも飼育委員会や飼育係があるのは、なぜでしょうか。学習指導要領の生活科や道徳科の規定を待つまでもなく、生き物に親しむ学習活動が生命を尊重する心情を養うことにつながるからでしょう。ありとあらゆる動物を扱ったことがある動物研究家のパンク町田さんが、身近な動物の愉快な話や飼育のこつを伝授します。
まずは家畜を飼おう!
家畜なら心の交流が生まれる
もし学校で動物を飼うとしたら、どんな動物がいいでしょうか? 私は人間に身近な動物、つまり家畜を飼うのが断然いいと思います。
なぜでしょうか。それは、人間と家畜は長く付き合ってきた歴史があるので、一緒に暮らせるようになるからです。子供たちと家畜がひとつの大きな家族のような関係を築くことができます。家畜と家族になるということは、子供たちと家畜の間に生まれた心の交流を楽しめるということです。
動物との交流を楽しめる状況になったことを前提にしてさらにいえば、社会が信頼関係を基本にして成り立っていることを学べることにもなります。
カエルとの信頼関係は期待できない
家畜とほかの動物の違いを信頼関係の観点から見てみましょう。例えばトカゲやカエルのような小さな動物とはほとんど信頼関係は生まれません。せいぜい飼育する人間に触られてもOKというくらい。
逆にいえば、人間がそれに触ることを許されれば、相当に関係性ができたことになります。もともとトカゲやカエルがほかの動物と触れ合うときは食うか食われるときだけなのです。こうした小さな動物にとって人間は、餌と水をくれたらいいという存在に過ぎません。
それでは、小さな動物とはぜんぜん信頼関係ができないかというと、そうでもない。
例えばコイとはある程度の信頼関係ができます。コイは飼い主が手を叩いて呼べばやってくるでしょう。コイは撫でられると喜びます。
ハムスターは、トカゲやカエルとコイとの中間に位置します。どういうことかというと、ハムスターが飼い主を信頼すれば、餌を食べている最中に触られても平気で食べ続けるとか、手のひらの上で餌を食べるようになります。
コイの話が出たついでにいうと、これは小動物ではないのですが、例えば大型熱帯魚のアストロノータスやフロントーサは飼い主の顔を覚えています。つまり、飼い主と見知らぬ人では態度が違うという利口さがあります。飼い主にはとてもなつき、飼い主が現れる場所を覚えています。
命の大切さを教えてくれる
家畜を飼育するといいのは、そこまでやるかどうかはさておき、食べられるということです。食べることは命をもらうことです。それを子供が知ることは人間の成長にとって意味のあることだと思います。
動物を解体するには免許が必要ですが、家庭で食べるのならば、自分たちで解体しても構いません。もし動物を解体するのであれば、猟友会や地域のと畜場に相談するといいでしょう。
これは小学校ではなく、日本の県立高校や私立高校になりますが、飼育した家畜を解体して食べる授業をしているところがあるようです。
もし飼うならヤギやヒツジが一番!
さて、それでは、どんな家畜を飼ったらいいと思いますか? 記者のタカセさん?
──えっ、いきなり問題ですか。ニワトリとか。
子供が「ミニ動物園」や「ふれあい広場」などでよく触れ合っている動物ですよ。答えはヤギやヒツジです。
──そういえば、新潟県や長野県の小学校で総合的な学習の時間にヤギを飼う事例がありました。
飼育のしやすさからいっても、ヤギやヒツジは家畜の中でもっとも飼育が簡単です。家畜の代表的な動物としてヤギやヒツジから話を始めていきましょう。
プロフィール
1968 年8月10日、東京生まれ。ULTIMATE ANIMAL CITY 代表。NPO法人生物行動進化研究センター理事長、アジア動物医療研究センター(日本ペット診療所)センター長を兼務。昆虫から爬虫類、鳥類、猛獣といったありとあらゆる生物を扱える動物の専門家であり、ハヤブサや鷹を飛ばすトライアルで3年連続優勝するなど鷹匠としても有名。独特の容姿と愉快なキャラクターが受け、テレビ出演や講演など多方面で活躍。主な作品に、『さわるな危険! 毒のある生きもの超百科』(監修、ポプラ社)、『子供に言えない動物のヤバい話』(角川新書)など。
文/高瀬康志