小1 国語科「おむすびころりん」板書例&全時間の指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「おむすびころりん」(光村図書)の各時の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:おむすびころりん(光村図書・こくご 一上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属大泉小学校・今村 行

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、夏休み前の最後の読むこと単元として扱われることが多いと考えられます。1年生の児童が1学期に学んできたことを生かして「楽しい」と実感しながら学べる場面を設定したいと考えます。その中で読む力を伸ばしながら、自分の考えを様々な形で表現していける力も伸ばしていくことを目指していきます。

本教材は、「むかし むかしの はなしだよ」という一文から始まる昔話です。「おむすびころりん」には様々なバージョンがありますが、室町時代の御伽草子が元であるとされており、口承文芸として後世に語り継がれてきたものです。教科書の本文も、口にして聞いてみることで、リズムのよさ、楽しさを感じられるものになっています。
本文の中で「おむすび ころりん すっとんとん。ころころ ころりん すっとんとん。」という部分は繰り返し出てくる「うた」として説明がありますが、その部分のみならず、全体を通して一文が短くリズムがよいので、歌のように感じられるのではないでしょうか。
また、1年生の教科書ではひらがなが「分かち書き」になっていますが、この教材においてはぜひ「分かち書き」に注目して、言葉(音)の数が揃えられていることに児童が気付けるようにしたいものです。そのような教材の特徴を活かしながら、児童それぞれが本文の音読の仕方を工夫したり、登場人物の様子や行動を具体的に想像し、動作化して表現したりする活動を通して、仲間との表現の違いに気付き、楽しく学ぶことができる単元となることを目指します。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、1でも述べたように、言語活動として音読を設定します。その際、二つのことを意識して指導できるとよいでしょう。

一つめは、どのように読めばいいか、ということです。本文は1で述べたように、全体を通して歌のようなリズムがあります。このような読み方が正しい、と教師の側から手本を示すのではなく、どのような読み方をしてみたいか、児童自身に考えさせるとよいでしょう。その中で、ぜひ全体で共有したい価値ある気付きは教師が取り上げるとよいと考えます。
例えば、初めの一文「むかし むかしの はなしだよ」を読んだ児童が、分かち書きを意識して、言葉を切りながらリズミカルに読んでいたら、「今の読み方はどうだった?」と周りの児童に投げかけて考える機会をもつとよいでしょう。
また、文末の「だよ」の読み方を工夫していたら、「どんなつもりで読んだの?」と問い返し、「だよ、って書いてあるから、聞いている人に教えてあげるような感じで読んだ。」などの言葉を引き出すと、「語り手」というものへの意識も醸成されていくと思われます。1年生の段階で「語り手」という用語を具体的に指導する必要はありませんが、児童の素朴な気付きは価値付けていきたいものです。

もう一つは、多様な表現を考える、ということです。
本文中、例えばおじいさんだけ見ても、様々な動作をしています。「まて まて まて」とおむすびを追いかけたり、おむすびが入ってしまった穴をのぞいたり、耳をあてたり、「おなかが すいてる ことなんか、わすれて」しまって踊り出したり、他にも面白い動作がたくさんあります。これらの文をただ口で音読するだけではもったいないのではないでしょうか。
全身を使って動作化をするなどして表現させることで、この教材の魅力を最大限に引き出すことができるでしょう。学習指導要領解説国語編のC読むこと(2)イの活動例の「読み聞かせを聞いたり物語を読んだりして、内容や感想などを伝え合ったり、演じたりする活動」を意識し、演じるという視点を児童に持たせてもいいかもしれません。

これら二つの視点で、読み方を工夫したり、動作化したり、自分なりの表現を工夫したりするなかで、自分とは違う表現をしている仲間を見る機会もぜひ設定したいと考えます。そのような活動を通して、多様な表現の面白さを実感することができるでしょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 児童が見通しをもって学べるように

主体的な学びを考えていく上で、児童が見通しを持てることがとても重要であると考えます。
この単元、この1時間で何をするのか分からないと、自分で工夫してみよう、という気持ちにもなれません。児童自身に活動の見通しを持たせるために、どのようなことができるでしょうか。

まず、導入の工夫が考えられます。本文は全部で45行あります。どの行も、10〜20字と短いのも特徴です。教師が範読してもいいのですが、児童が一人一文ずつ読んでいく、という形で本文と出会ってみてもいいのではないでしょうか。その中で、児童が自然とリズミカルに読んだり、体を揺らしながら読んだり、歌うように読んだりするかもしれません。そういう児童の素敵な姿を全体で共有し、音読を工夫していく、という活動を提案すれば、児童も「やってみたい」と感じ、見通しを持つことができるでしょう。

また、今回は数人のチームで音読をしていく形を取りますが、そのチームの中で自分が担うことを明確にすることも主体性を考える上では大切です。チームの中で、自分がどんな役割を持つのかが分からないと、見通しも持てず、他人任せになってしまいます。チームの中での役割は、児童同士で相談して決められるのが理想ですが、チームの活動に入る前に全体で見通しをもったり、実態に合わせて教師がアドバイスを送ったりしていくことが必要になるでしょう。

〈対話的な学び〉 自分たちの活動の進め方も話し合ってみる

主体的な学びで説明したように、本単元ではグループを組み、その中で役割をもって音読を工夫していく活動を設定します。グループの中で、どのように役割を決めるか、分担するかは、できれば児童同士で相談するのが理想です。一行ずつ読む、という分担にしてもいいし、何行かまとめて読む、という分担にしてもいいでしょう。

また、「ここの行はグループ全員で読むと面白そうじゃない?」とか、自分が読む番ではないときには動作をして「劇のようにしてみよう!」など、児童が活動を進める中で様々な工夫ができるといいと思います。そのように、グループの活動を教師が全てプロデュースするのではなく、児童たちで考えさせることで、様々な対話が生まれていくのではないでしょうか。

もちろん、全てを児童だけでは進められず、活動がうまく進まない状態になったり、些細なトラブルになってしまったりすることもあるかもしれません。ただ、そういう状態にならないように教師が全てを整える、という考え方ではなく、その状況を改善したり乗り越えたりするために教師が助言し、児童同士の言葉で解決していくことが、日常生活で生きて働く「対話的な学び」と言えるのではないでしょうか。

〈深い学び〉 既習の学びとの結び付き

深い学びを考える際に、学んだこと同士が結び付き合ったり、関連付いたりすること、ネットワーク化することが大切な視点の一つだと考えます。本単元では、特に既習の学びと結び付けて考えることで、深い学びを実現したいと考えています。

光村図書の教科書を使用している場合、この単元の前に「おおきなかぶ」を用いた単元を実施していると考えられます。「おおきなかぶ」も「おむすびころりん」も、音読に適した教材ですが、文章の書かれ方にはそれぞれ違った特徴があります。

例えば、「おおきなかぶ」では「うんとこしょ、どっこいしょ」というリズミカルな台詞が繰り返し出てきます。「おむすびころりん」では、「おむすび ころりん すっとんとん。ころころ ころりん すっとんとん」というリズミカルな台詞が繰り返し出てきます。リズミカルな台詞が繰り返し出てくる、という点では共通点がありますが、書かれ方としては「おおきなかぶ」がかぎかっこを用いて書かれているのに対して、「おむすびころりん」ではかぎかっこは用いられず、一行下げという形でその部分が強調されています。なぜそのような違いがあるのか、はっきりと根拠を伴って自分の考えを持つことは難しいかもしれませんが、「書かれ方が違うのはなぜだろう?」という疑問を持つこと自体は経験させてもよいのではないでしょうか。

また、「おむすびころりん」は文章全体を通して一行ずつリズムがあり、歌のようになっていることが、「おおきなかぶ」と比較してみることでよりはっきり理解されるでしょう。このような、既習の教材との比較という活動を通して、学習指導要領解説国語編の知識及び技能(2)情報の扱い方に関する事項のア「共通、相違、事柄の順序など情報と情報との関係について理解すること」を自然な形で学習活動に落とし込み、深い学びを実現できると考えます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

本単元においては、タブレット端末のカメラを用いて、音読の映像を記録し見返す活動をしたいと考えています。自分の音読しているところは、周りの人から見ることはできても、自分では見ることはできません。映像に残った自分の姿を見ることで、気付けることもたくさんあるでしょう。
特に、今回の単元では本文を元にして動作を考えるような工夫も考えられるので、自分の動作を映像で客観的に見直すことを通してよりよい表現にしたいという気持ちが湧いてくることが期待できます。

また、本単元で最終的に音読の発表をする場面を録画し、保護者と共有することで、1学期の児童の学びの集大成を見ていただくことも可能だと思います。コロナ禍の影響で授業参観などが難しいなか、児童の学びを保護者と共有するために、タブレット端末は有効に働くでしょう。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名: おはなしのせかいを、くふうしてあらわしてみよう

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
① 本文を音読する。感想を発表し合う。
②「おおきなかぶ」との比較を通して、本文の特徴に気付く。

・第二次(3時4時5時
③ 音読チームを作り、グループ内での役割を相談する。
④ チームで音読の工夫を考え練習する。
⑤ タブレットで自分たちの音読を撮影し、見直して練習する。

・第三次(6時
⑥ 音読(劇)発表会を開く。(タブレットで撮影する)

各時の板書例、教師の発問・児童の発言例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

まずは第1時、物語との出会いを楽しむことを大切にしたいものです。
物語との出会いは、教師の範読を聞かせる、自分で黙読する等、様々な形が考えられますが、今回は「児童が一行ずつ順番に読む」という形を取ってみたいと考えます。
本単元は、後半自分たちで音読の工夫を考える活動を設定しています。初めに教師が範読すると、それを手本にしようとする児童もいるでしょう。そうではなく、今回は自分たちで音読してみて、面白い読み方をする仲間のよさを感じ合う時間にできればいいと考えています。本文は全部で45行ありますので、最大35人学級でも一人一行は担当できます。また、一文は短いので、初読でもそこまで難しさを感じることもないでしょう。数回繰り返して読んでみる中で、仲間の工夫に気付けるようにしてもよいでしょう。

今日は「おむすびころりん」というお話を読みます。もう1学期の最後ですからね、一人一行ずつ、順番に読んでみましょう。

(音読)・・・

みんな上手だったですね! 上手だな、面白かったな、と思った人はいますか?

Aさんが1行目の「はなしだよ」のところを読んでいるのが上手だった。

そうそう! なんか話しかけてくれているみたいだった!

Aさん、もう一回読んでみてくれる?

Aさん:(音読)・・・

なるほど、確かにそうだね!

Bさんが「おどりだす」のところで手をヒラヒラさせているのが面白かった。

ほんとに踊っているみたいだったね!

どんな踊りだったんだろうね。

じゃあ一度先生がそこを読むから、みんな自分の想像する踊りを踊ってみようか。

※感想を聞きながら、児童が面白いと思った場面を音読したり動作化したりするなど活動を入れる。

みんなの読み方や、動作が面白いですね。今回はこの「おむすびころりん」でたくさん読み方や動作を工夫して、楽しく学習していきましょう。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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