『脱ひもぷら』&『アライン線』ですっきり安全【どの子も安心して学べる1年生の教室環境 #4】

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鈴木優太「どの子も安心して学べる1年生の教室環境」
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宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
どの子も安心して学べる1年生の教室環境

学校にわくわくしながらも同時に不安を抱える1年生が、安心して学べる「教室環境づくり」について提案する連載(月1回公開)です。『教室ギア55』(東洋館出版社)や『日常アレンジ大全』(明治図書) などの著書をもつ、教室環境づくりのプロフェッショナル〈鈴木優太先生〉が、さまざまなアイデアを紹介していきます。今回は、見た目が美しく安全な学習環境の整え方をレクチャーします。

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書)など、著書多数。

『脱ひもぷら』で見た目美しく、安全も確保

同じ物を同じように並べ置くことが多い学校では、『脱ひもぷら』(ひもをぷらぷらさせない)と『アライン線』の2つを心がけることで、美しく安全な学習環境が整います。

ロッカーからひもがぷらぷらと飛び出している状態、見た目が美しくありません。そのひもに足や物などを引っかけて、思わぬ事故が起きることもあります。

例えば、絵の具セットを学校で保管する際は、ひも(ストラップ)を取り外しましょう。取り外したひもは、絵の具セットの中にしまいます。

ストラップを外して、ロッカーにしまわれた絵具セット。
赤丸部分にストラップがないことに注目。ストラップは絵具セットの中にしまっています。

写真のように、1か所に絵の具セットを集めて保管する場合は、特にひもの有り無しの差が見た目の美しさにおいて顕著です。

保管しておく時間が長く、毎日使う物ではない絵の具セットのような物こそ、こうしたひと手間を惜しまないことが、学習環境を整える点から重要です。

探検バッグや水筒も、「ひもぷら」になりがちなアイテムです。

「脱ひもぷら作戦」を子供たちが話し合って実践します。クラス会議の議題にして、子供たちが話し合って決めたアイデアが何よりも効果抜群です。

『アライン線』に沿って整列すると印象が格段にUP

例えば、靴の「かかと」と「靴箱の手前のへり」をそろえると、靴箱全体が整って見えます。

靴箱の奥の壁まで靴を押し込んだ状態と見比べると一目瞭然です。現場でビフォー・アフターを体感することに加え、写真も撮影して見比べてみると、子供たちは実感できるようになります。

実は、「靴箱の手前のへり」にそろえることは、デザインの原則に則っているのです。見えない「線」を感じることができると、私たちはすっきり整った印象を持ちます。

この見えない「線」を『アライン線』(別名:整列線)と言います。

靴箱のへり(アライン線)と靴のかかとが揃うと『アライン線』を感じ,私たちは本能的にすっきりとした印象を持ちます。
靴箱のへり(アライン線)と靴のかかとが揃うと『アライン線』を感じ、私たちは本能的にすっきりとした印象をもちます。

教室でもこの『アライン線』を意識してみましょう。

例えば、「ランドセル」と「ロッカーの手前のへり」をそろえるとロッカー全体が整って見えます。しかし、前述した「ひもぷら」状態になってしまうと、『アライン線』が感じられなくなってしまいます。

ランドセルや防犯ブザーなどのひも(ストラップ)が、ぷらぷらとロッカーから飛び出さないようにします。奥の壁まで押し込まないこともコツです。

『アライン線』を意識してロッカーを整頓する子供たち。防犯ブザーなども「ひもぷら」にならないようにすることがポイント。

ロッカーの大きさや奥行は学校によって実に様々なため、『アライン線』が感じられる物の置き方を子供たちと一緒に模索しましょう。

「どうなると心地良い?」を考え続けていく

多くの学校では、児童用靴箱はかかとが手前になるように靴を入れます。

しかし、来客用靴箱を見てみると、スリッパはつまさきが手前なのです。これは、スリッパや和の履き物(雪駄、草履、下駄)は、掴める部分がつまさき側にしかないためです。靴箱にしまいやすく取り出しやすいつまさきが手前となるのが、日本で古くから親しまれてきたマナーなのです。

一方、洋靴は、しまいやすく取り出しやすいかかとが手前になります。狭い靴箱では靴を回転させることも煩わしく、機能性を優先し、かかとが手前になったのでしょう。

しかし、中敷きが見えたり、かかとの減りが目に入ったりするため、洋靴であっても、つまさきを手前に入れることがたしなみとなる場合もあります。

つまり、マナーはTPOによって変わるのです。マナーやルールは、同じ空間を共有する者同士が「心地良く過ごすため」のものです。

「どうなると心地良い?」と子供たちに問い、「心地良さ」を一緒に考えていくことが肝要です。

望ましい価値を与えるばかりでなく、「どうして?」を大切に、子供たちと一緒に学習環境づくりを考え続けていきましょう。

参照/鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書)

イラスト/高橋正輝

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