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【教科調査官に聞く】家庭科の新学習指導要領-改訂ポイントと授業改善の視点

2019/7/28

学習指導要領の改訂にあたり、資質・能力のポイントや授業改善の視点などをテーマに、文部科学省・筒井恭子前教科調査官と神奈川県横浜市立上飯田小学校・横山美明校長に対談していただきました。

筒井恭子(つついきょうこ)[右]:石川県公立中学校、高等学校、石川県教育委員会小松教育事務所指導主事、石川県公立小学校教頭を経て、2009年~19年3月、文部科学省教科調査官(中学校技術・家庭科も担当)。

横山美明(よこやまよしあき)[左]:小学校家庭科教育の研究に取り組むとともに、情報・視聴覚教育やICT 活用の推進にも努めている。現在は、横浜市小学校家庭科研究会会長並びに同市小学校情報・視聴覚研究会副会長を務めている。小学校学習指導要領(家庭編)の改善に係る検討に必要な専門的作業協力者。

「生活の営みに係る見方・考え方を働かせ」とは

第8節 家庭

 第1 目標

生活の営みに係る見方・考え方を働かせ,衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して,生活をよりよくしようと工夫する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

⑴ 家族や家庭,衣食住,消費や環境などについて,日常生活に必要な基礎的な理解を図るとともに,それらに係る技能を身に付けるようにする。

⑵ 日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し,様々な解決方法を考え,実践を評価・改善し,考えたことを表現するなど,課題を解決する力を養う。

⑶ 家庭生活を大切にする心情を育み,家族や地域の人々との関わりを考え,家族の一員として,生活をよりよくしようと工夫する実践的な態度を養う。

小学校学習指導要領(平成29年告示)より

横山 目標に示された、「生活の営みに係る見方・考え方を働かせ」とは、どのようなことでしょうか。

筒井 家庭科が学習対象としている家族や家庭、衣食住、消費や環境などに係る生活事象を協力・協働、健康・快適・安全、生活文化の継承・創造、持続可能な社会の構築等の視点で捉え、生涯にわたって、自立し共に生きる生活を創造できるよう、よりよい生活を営むために工夫することを示したものです。この「生活の営みに係る見方・考え方」に示される視点は、小・中・高等学校の家庭科で扱うすべての内容に共通する視点であり、相互に関わり合うものです。

小学校では、「生活の営みに係る見方・考え方」のうち、協力・協働については、家族や地域の人々との協力、生活文化の継承・創造については、生活文化の大切さに気付くことを視点として扱うことが考えられます。

横山 「生活の営みに係る見方・考え方」は、各内容とどのように関連させるとよいのか教えてください。

筒井 「生活の営みに係る見方・考え方」については、「A家族・家庭生活」の(1)のアのガイダンスのところで扱います。各内容の導入的な学習の中で、ガイダンスで触れた見方・考え方を思い起こさせ、視点を意識させることが大切です。

今回の改訂では、例えば、「食事の役割」、「衣服の主な働き」、「住居の主な働き」、「消費者の役割」など、「役割」や「働き」が、各内容の導入的な学習になっています。それらと関連させながら、例えば、「食事の役割」であれば健康、「衣服の主な働き」であれば快適などの視点を意識させ、学習を展開することにしています。

横山 各学校では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に取り組んでいますが、家庭科では、どのようにすればよいでしょうか。

筒井 授業改善は、資質・能力を育むためのものですから、まずは、各題材でどのような資質・能力を育むのかを明確にすることが大切です。

三つの視点は、子供の学びの過程において相互に関連し合い、一体として実現されるものですが、授業改善の視点としては、それぞれ固有の視点になります。

横山 「主体的な学び」の視点については、どのようなことが大切ですか。

筒井 題材を通して、見通しをもち、日常生活の課題の発見や解決に取り組んだり、基礎的・基本的な知識及び技能の習得に粘り強く取り組んだり、実践を振り返って新たな課題を見付けたりすることがポイントになります。題材を通して、見通しをもたせる場面では、何のために学習するのか、その目的を明確にして子供が学ぶ意義を自覚し、主体的に学習に取り組めるようにすることが大切です。そのためには、生活の営みへの興味・関心を喚起し、生活の中から問題を見いだして課題を設定し、その解決に取り組むことができるようにします。

横山 次に、「対話的な学び」の視点についてはどうでしょうか。

筒井 子供同士で協働したり、意見を共有して、互いの考えを深めたり、家族や身近な人々との会話を通して、考えを明確にしたりするなど、自らの考えを広げ、深めることがポイントになります。「対話的な学び」は、題材のあらゆる場面で設定することが考えられます。

横山 「深い学び」の視点については、どうでしょうか。

筒井 子供が日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し、その解決に向けて様々な方法を考え、計画を立てて実践し、その結果を評価・改善し、さらに家庭や地域で実践するといった一連の学習活動の中で、「生活の営みに係る見方・考え方」を働かせながら課題の解決に向けて、自分なりに考え、表現して資質・能力を身に付けていくことがポイントになります。

例えば、栄養のバランスのよい食事をとることに関する題材では、課題を設定したり、一食分の献立を振り返ったりする際に、生活の営みに係る見方・考え方に示された健康などの視点から考えます。一方、献立の立て方の理解については、教師が教える場面です。学びの深まりを作り出すには、子供が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立てるかが重要です。

新設の「家族・家庭生活についての課題と実践」とは

〔第5学年及び第6学年〕

1 内 容  

 A 家族・家庭生活

(中略)

⑷ 家族・家庭生活についての課題と実践

ア 日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し,よりよい生活を考 え,計画を立てて実践できること。

小学校学習指導要領(平成29年告示)

横山 内容Aに、「家族・家庭生活についての課題と実践」が新設された意図は何ですか。 

筒井 学習した知識及び技能などを実生活で活用するための内容の充実として、内容Aに(4)「家族・家庭生活についての課題と実践」を新設しています。「B衣食住の生活」や「C消費生活・環境」の内容と関連を図って、二学年間で一つ又は二つの課題を設定し、実践的な活動を家庭や地域などで行うこととしています。

A.「家庭生活と仕事」または.「家族や地域の人々との関わり」の学習を基礎として、日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し、習得した知識及び技能などを活用して課題を解決する力と生活をよりよくしようと工夫する実践的な態度を育てることをねらいとしています。

横山 その指導のポイントについて、教えてください。

筒井 指導の際には、日常生活を見直して課題を設定し、計画、実践、評価・改善という一連の学習活動を重視し、問題解決的な学習を進めるようにします。その際、個人またはグループで課題解決に取り組むことが考えられます。計画をグループで話し合ったり、発表会を設けたり、活動を工夫して効果的に実践できるようにします。特に課題については、A(2)または(3)の指導事項ア及びイで身に付けた知識や生活経験などを基に生活を見つめることを通して問題を見いだし、子供の興味・関心に応じてBやCで学習した内容と関連させて設定することがポイントです。

これまでの学習の中で、疑問に思ったことやさらに探究したいこと、自分にできることなどを考え、自分の生活の課題として設定できるようにすることが大切です。課題の解決に向けて、計画を立てて、家族や地域の人々と関わりながら実践できるようにすること、その際に、自分だけではなくて家族や地域の人々にとってよりよい生活とはどのようなものなのかを考えることが重要です。

横山 2019年度は移行期間の最終年度になりますが、どのようなことに取り組んでいけばよいでしょうか。

筒井 上の表に示した実践課題に取り組んでほしいと思います。

横山 ガイダンスでは生活の営みに係る見方・考え方に触れていかなくてはなりませんし、新設されたA(4)も家庭・地域と連携を図りながら教材開発を進めていかなくてはなりませんね。

筒井 そうですね。ぜひ、新しい内容の教材開発に取り組み、魅力あふれる授業が全国に展開されることを期待しています。

『教育技術 小五小六』2019年7/8月号より

*この対談は、教育技術MOOK『何が変わるの? 教科等の要点が簡潔にわかる! 新学習指導要領 ここがポイント』からの転載です。

『何が変わるの?教科等の要点が簡潔にわかる!新学習指導要領ここがポイント』

『何が変わるの?教科等の要点が簡潔にわかる!新学習指導要領ここがポイント』
編/小学館「教育技術」
定価 本体1400円+税 発行 小学館
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