小2生活「大きくなあれ! わたしの野さい2」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修による、小2生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「大きくなあれ! わたしの野さい!2」の単元を扱います。
執筆/ 大阪府公立小学校主務教諭・後 勝矢
大阪府公立小学校主務教諭・松井香奈
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
大阪府公立小学校校長・前谷さき子
目次
年間指導計画
4月 | 春だ 今日から 2年生 |
5月 | 大きくなあれ! わたしの 野さい |
6月 | どきどき わくわく まちたんけん |
7月 | 生きものと なかよし |
8月 | 大きくなあれ! わたしの 野さい2 |
9月 | うごく うごく わたしの おもちゃ |
10月 | 冬野さいを そだてよう |
11月 | もっと なかよし まちたんけん |
12月 | つながる 広がる わたしの 生活 |
1月 | みんなで つかう まちの しせつ |
2月 | 大きく なった わたしたち |
3月 | ありがとうを とどけよう |
単元目標
サツマイモを継続的に育てたり、収穫したサツマイモやつるなどを利用したりする活動を通して、成長の様子に関心をもって健やかに成長できるよう働きかけることができ、サツマイモが成長していることに気付くとともに、サツマイモなどの野菜に親しみをもち、大切にしようとする。
(1学期に行った単元「大きくなあれ! わたしの野さい」の写真を提示して)1学期に野菜を育ててみてどうだったかな?
お世話するのが楽しかった!
トマトの実ができたときは嬉しかったよ
自分が育てた野菜はいつもより美味しかったよ
サツマイモはまだ学習園に植えているよね。今、どうなっているんだろう?
学習の流れ(全11時間)
【小単元1】わたしたちの サツマイモが 元気に して いるかを 見に 行こう![1時]
これまでの野菜の栽培活動を想起させることにより、学習園(学校園)で育てているサツマイモへの興味・関心を引き出すようにします。サツマイモを観察して気付いたことを観察シートに記入し、交流するようにします。
※観察シートは、「大きくなあれ! わたしの 野さい」(5月単元として紹介)で活用したものと同じものを使います。
サツマイモを観察して、気付いたことは何ですか?
葉っぱがたくさん増えていました
虫に食べられている葉もありました
黄色くなっている葉もあって、大丈夫か心配になりました
◎サツマイモ栽培への関心を高める環境を整備する
「サツマイモ」に関する子供用絵本はたくさんあります。学校図書館や公立図書館から借りてきて、教室に置いておき、子供が自由に見ることができる環境をつくっておくと、サツマイモの栽培への興味・関心をさらに高めることができたり、収穫したつるで遊びたいという発想を引き出したりすることができます。また、サツマイモの栽培方法が載っている本もあれば、今後の活動に繋がっていきます。
評価規準
主体的に学習に取り組む態度:サツマイモのよりよい成長を願って、繰り返し関わろうとしている。[発言・ワークシート]
【小単元2】わたしたちの サツマイモに できる ことを 考えよう[2~4時]
サツマイモを観察して気付いたこと(黄色くなっている葉がある・虫に食べられている葉がある・雑草がいっぱいあるなど)について、対策方法を調べます。
図書館から借りてきた本やインターネットを使って自分で調べるだけでなく、サツマイモの栽培について詳しい人(管理作業員・家の人など)へ調査をするようにします。
そして、その結果をクラスで出し合い、今後の計画を立てます。
管理作業員「雑草はなるべく取り除いてあげてね」
子供「早速、雑草を取らなくちゃ」
管理作業員「葉の裏にも虫がいるよ。でも、アリはサツマイモの味方だよ」
子供「葉の裏に付いた味方でない虫を取ろう」
管理作業員「つる返しをしてあげると、サツマイモに栄養がたくさんいくよ」
◎子供の周りの人的資源を有効活用する
サツマイモの栽培の様子やそれに伴う子供の学びの様子を学級通信や学校ホームページに載せるなどして、保護者に開かれた学級・学年づくりを行います。そうすることで、家庭でサツマイモの話題が広がり、栽培への意欲が高まるとともに、栽培に関して子供が今直面している問題についての解決方法や、収穫したサツマイモやつるの活用方法を教えてくれたりするなど、サツマイモの栽培活動に主体的に協力してくれます。
また、サツマイモを栽培・収穫する中での問題解決に向けて、自分の力で解決しようとすると同時に、例えば、栽培に詳しい管理作業員や調理に詳しい栄養教諭などの他者の力を借りるなどして、協働的に問題解決をするよさについて気付かせるようにしましょう。
評価規準
知識・技能:サツマイモに適した栽培方法があることに気付いている。[行動観察・ワークシート]
思考・判断・表現:サツマイモの栽培についての調査から、自分たちにできることに着目したり選んだりして、計画を立てている。 [発言・ワークシート]
【小単元3】しゅうかくは まだかな? わたしたちの サツマイモ[5~7時]
サツマイモが元気に大きくなるために、自分たちが立てた計画(肥料をあげたり、雑草を抜いたり、虫を取り除いたりする)を実行していきます。サツマイモの収穫が近くなったら試し掘りをし、収穫の時期を見計らいます。大切に育てたサツマイモが収穫できたら、それをどのようにしたいか話し合います。
◎じっくり話し合い、みんなの納得解を見付ける
サツマイモの栽培は自分一人で世話をした訳ではありません。みんなで大事に世話をして大きく育ったサツマイモだからこそ、どうしていきたいかをじっくり話し合いましょう。みんなでサツマイモパーティーを開くこともよいですし、お世話になった人にお裾分けするのもよいでしょう。学級のみんなが納得のいく答えを見付けましょう。
◎つるを使った遊びを余すところなく楽しもう
サツマイモだけでなく、大きく長く育ったつるの活用にも目を向けさせたいところです。先述した絵本の中にはつるを使って遊んでいる話もたくさんあります。
また、つるを使ったリースづくりや糸電話など、子供が経験していなかったり話題にならなかったりしたことをこちらから提示してもよいでしょう。「つるも食べたい」と言うかもしれません。その時は栄養教諭と協力・連携してサツマイモパーティーの計画をすることも考えられます。
評価規準
主体的に学習に取り組む態度:サツマイモやつるに親しみや愛着をもって、収穫しようとしている。[発言・ワークシート]
【小単元4】レッツ サツマイモ パーティー![8~10時]
収穫したサツマイモを使った調理活動や、サツマイモのつるを使った遊びや制作活動を行います。
調理活動をする際は、栄養教諭だけでなく事前に保護者にもお知らせしておき、協力してくれる方を募るのもよいでしょう。
自分たちで育てたサツマイモは今まで食べたものよりおいしいよ
〈調理例〉
・ホットプレートで焼く
・蒸し器で蒸す
・茹でて裏ごしし、ラップで包んで茶巾しぼりにする
つるを使った遊びをする際は、既習のおもちゃづくりの時のように遊びのルールをつくるなどして、友達と一緒に遊ぶことができるようにします。
つるをつなげるとなわとびになったよ。もっとつなげると大なわになるかな
◎活動ごとに感想を残しておこう
楽しい活動と確かな学びの両方を実現するためにも、活動で子供が感じたことをしっかりと残しておきましょう。「気付いたこと」「できるようになったこと」「友達から学んだこと」「これからしたいこと」などの視点を示すと、子供が振り返りを書きやすくなります。
評価規準
知識・技能:サツマイモへの親しみが増し、上手に育てることができるようになったことに気付いている。[発言・観察シート]
【小単元5】サツマイモづくりを ふりかえろう[11時]
サツマイモを栽培したり、遊んだり、食べたりしたこれまでの活動を振り返り、気付いたことやこれからしたいことなどを交流します。
これまでのサツマイモづくりを振り返って、気付いたことは何ですか?
サツマイモが土の中であんなに大きくなるなんてびっくりしました
また、すぐに野菜を育てたいです。でも、冬に育つ野菜ってあるのかな
◎栽培活動のポートフォリオを活用しよう
サツマイモの成長の記録を振り返るためだけでなく、サツマイモの成長を願い、育ててきた自分自身を想起することができます。これまでの活動の様子が分かる写真や動画を用意しましょう。
評価規準
主体的に学習に取り組む態度:サツマイモを育てることの楽しさや喜びを実感し、これからも野菜などの植物や生命あるものに関わろうとしている。[発言・ワークシート]
1人1台端末を活用した指導アイデア
「わたしたちの サツマイモを 見に行こう!」(1時)では、ICT端末を活用して、サツマイモの様子を写真で記録します。同じ画角で撮影をすることで、振り返りの際に日々の成長により気付きやすくなります。また、その日に気付いた変化や気になっている箇所なども記録することで、この後の活動での報告や発表にも使用することができます。
「わたしたちの サツマイモに できる ことを しらべよう(2~4時)では、ICT端末を利用してサツマイモの栽培について調べます。自分で検索するのが難しい子供には、予め教師の方でサイトを指定してあげるとよいでしょう。農林水産省の「サツマイモ:そだててみよう」のサイトには学校での育て方や注意事項が載っており、日本いも類研究会のサイトには子供向けの資料が載っているので、おすすめです。
「サツマイモづくりを ふりかえろう」(11時)では、これまでにICT端末で子供が記録した写真や動画だけでなく、指導者の方でも記録したものを子供用の端末に入れておき、子供一人一人が思い出のアルバムをめくるようにデジタルポートフォリオに触れることで、これまでの活動を想起しやすくなります。
評価のポイント
サツマイモを想い、育てた時間が「わたしたちのサツマイモ」となる
2学期になり、初めはサツマイモを植えていたこと自体を忘れている子が多いことが予想されますが、子供がサツマイモのよりよい成長を願い、そのために手を尽くしていくと、子供にとって特別なサツマイモに変わっていきます。どんどん愛着が湧いていく様子やみんなで力を合わせて協働的に活動していく姿を見取っていくことが大切です。
イラスト/高橋正輝